電気設備の技術基準の解釈の解説

第173条(低圧接触電線の施設)

経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.239–242

〔解 説〕 走行クレーン、モノレールホイスト、オートクリーナー等の移動(自動又は他動)して使用する電気機械器具に電気を供給するためには、移動電線を使用する場合と接触電線による場合とがある。移動電線を使用する場合は、その電気機械器具の移動するコースが確定していない場合、移動する範囲が狭い場合、使用電圧が高く裸電線の使用が危険な場合等であって、接触電線を使用する場合は、移動する範囲が広く、かつ、移動するコースが確定している場合が一般的である。接触電線は、その性質上、裸電線を使用する必要があるため、感電の危険、アーク発生による断線、火災等の危険もあるので、その施設には十分な注意が必要である。このような理由から接触電線については一般の屋内配線とは分離し、独立して規定している。
接触電線には、走行クレーンやモノレールホイストのようにその機台自体に接触電線を施設し、その機械の中で更に移動する電気機械器具もある。このような接触電線については、「機械器具に施設する接触電線」として、一般の造営材に固定して施設する接触電線と区別している。機械器具に施設する接触電線については、機械器具の機能上特殊な設計を必要とする場合があり、かつ、一般の接触電線と異なり、専門的な配慮がなされる点を考慮し、規制を一律に設けるということはしていない。すなわち、機械器具に施設される接触電線については、本条のうち第1項から第4項まで及び第6項の適用はない。
なお、本条でいう接触電線には、電車線はもちろん遊戯用小型電車用の接触電線も含まれていない。

第1項

第1項において、一般の低圧接触電線の工事方法は、がいし引き工事、バスダクト工事又は絶縁トロリー工事とすることとし、また、裸電線であるので、常時点検を必要とするため、点検できない隠ぺい場所での施設を禁止している。第三号については、屋外でガントリークレーン等を施設する場合、接触電線を空中に施設せず、レールに沿って配線ピットを設け、この中に接触電線を施設し、上部を覆って人が触れないようにする場合がある。

第2項

第2項では、一般の低圧接触電線を、展開した場所において、がいし引き工事により施設する場合の工事方法を規定している。第一号では、裸電線を使用するため、電線は地表面又は床面からの高さを3.5m以上とし、人が通る場所から手を伸ばしても電線に触れるおそれがないように施設することが規定されている。ただし、電線の最大使用電圧が60V以下であり、かつ、乾燥した場所に施設する場合であって、簡易接触防護措置を施す場合は、危険度が非常に小さいので、高さ制限を解除している。
第二号は、クレーン等の点検、修理のために電線と建造物の内側又はクレーンガーターに設けられた歩道、階段、はしご、点検台等との離隔距離について規定している。なお、「これらに類するもの」とは、クレーン等の点検、修理のための歩道ではないが、これらを行うため又は塗装作業などの作業を行うために立ち入る部分をいう。また、裸電線の直下等に機械器具が据え付けられたとき、その上又は周辺等に設けられた機械器具の点検台等も含まれる。
第三号は、接触電線が容易に断線するおそれがないように、引張強さ11.2kN以上のもの又は直径6mm以上の硬銅線(→解説)を使用することとしている。断面積28mm2は直径6mmの丸棒に相当するものであり、接触電線としてI形鋼その他の形鋼が使われるので、特に断面積で表したものである。なお、使用電圧が300V以下の場合は危険度も低く、かつ、過去の実績に照らして、引張強さ3.44kN以上のもの又は直径3.2mmの硬銅線相当まで使用できることとしている。
第四号は、電線の施設方法を規定している。接触電線の保持方法としては、両端で緊張し、途中は単にがいしで支えているだけで、集電の際には、がいしから浮くようにしたものと、適当な間隔をおいてがいしに取り付けるものとがある。前者の場合、不用意な施工をすれば、電線ががいしから外れて落下するので、両端を緊張させ、万一外れても、電線の弛みが小さくなるようにする必要がある。ロは、このように、途中は単に電線をがいしの上にのせているだけの場合を指している。
第五号は、電線の支持点間隔、第六号は電線相互間の離隔距離について規定している。ここで、支持点間隔という場合の支持点は、前述のようにがいしの上に電線をのせているだけの、いわば保持ともいうべきものも含んでいる。電線相互間の離隔距離については、173-1表のとおり定められている。支持点間の距離が6mのときの水平配列の電線相互間14cmを基本とし、その他の配列(垂直又は斜め)の電線相互間は20cmとしている。表の「その他の場合」については、電線に線状のものを使用するときは、電線の支持点間隔を最大12mまでとしている。
173-1表の備考は、短絡のおそれがないものについて例外としており、表の「その他の部分」は、モノレールホイストのように、電線相互間を小さくとっているものについて支持点間の距離を小さくし、振動による短絡を防止している。
また、「使用電圧が150V以下のものを乾燥した場所に施設する場合」は、テレビその他電気機械器具の製造工程中の試験で、この種の接触電線が施設されており、支障なく使用されている実例が多いので規定したものである。
このように段階的な数値をとっているのは、支持点間の距離と電線相互の離隔距離とを調整して網羅的に規定することは困難で、わかりにくくなるからである。したがって、何らかの理由で、この電線相互間の離隔距離や支持点間隔をとれない場合は、例えば水平配列の電線相互の離隔距離を10cm程度にする必要があるときは、支持点間隔を4m以下にするということも考えられる。
第六号は、接触電線及び集電装置の充電部分と造営材との離隔距離について定めている。
第七号では、がいしについて規定している。がいしは起重機等の起動、移動、停止等により発生する振動、衝撃に対して十分耐える機械的強度を有するものであることとしている。この規定で絶縁性、難燃性及び耐水性のあるものを条件として要求しているが、磁器製、ガラス製又は耐アーク性の合成樹脂製(→解説)のものが適している。
また、施設に当たっては接触電線の配線方法と使用条件とを考慮し、振動及び衝撃に対して十分に注意する必要がある。

第3項

第3項は、一般の低圧接触電線を点検できる隠ぺい場所においてがいし引き工事により施設する場合の工事方法を規定している。
第一号及び第六号については、展開した場所における場合と同様であるが、隠ぺい場所という特殊性から、電線がぶらぶらするような施設方法は禁止する必要があり、電線には、I形鋼その他これに類するたわみ難いものを使用し、かつ、支持点間の距離も2.5m(導体断面積が1cm2未満のときは1.5m、屈曲半径が1m以下のときは1m)以下とし、支持点ごとに堅ろうに固定することを要求している。更に電線相互間の距離も展開した場所における場合の2倍とし、造営材との離隔距離も4.5cm以上としている。
なお、点検できる隠ぺい場所に接触電線を施設する例としては、ピット内等に施設する場合が考えられる。
また、屋側又は屋外に施設する場合は、屋内の点検できる隠ぺい場所と同様に施設することとなるが、屋側や屋外であるため、また、ダクトは地面より下に施設する場合があるため、雨水などの水が入りやすいので、特に点検でき、かつ、水が溜まらないものであることが必要である。

第4項

第4項は、一般の低圧接触電線をバスダクト工事により施設する場合の工事方法について規定している。バスダクトのうちトロリーバスダクトと称するものがこれに該当する。これはがいし引き工事によるものと異なり、裸電線が露出せず、金属製又は合成樹脂製(最大幅が300mm以下のものに限る。)のダクトの中に収められていて人が直接触れるおそれもなく、安全度の高い工事方法である。
工事方法は、一般の屋内配線の場合(→)と同様であるが、トロリーバスダクトの特殊性としては、当然集電装置が通過する開口部があるから、じんあい等が入ることにより、接触不良又は絶縁低下を生じさせないように、この開口部を下方に向けて施設する必要がある。
第二号は、平成26年以前はトロリーバスダクトの詳細の仕様を条文で規定していたが、トロリーバスダクトの詳細仕様等がJIS C 8373(2007)「トロリーバスダクト」として整備されたことから、平成24年度電気施設関連規格等調査役務請負報告書を踏まえ、当該JISに適合することを要件とした。(H26改正)
第七号は、屋側又は屋外にバスダクト工事により施設する場合は、バスダクト内に雨水が入らないように防水構造(屋外用)のものを使用する必要があることを規定している。

第5項

第5項は、自動物品搬送装置の施設方法について規定している。なお、この装置は、施設形態から走行路として使用するトロリーバスダクトを上向きに施設するのが通例である。このため、人が充電部分に触れることが避けられない場合が多いので、使用電圧を直流の30V(人が充電部分に触れるおそれがないように施設する場合は、60V)以下に限定した。
また、トロリーバスダクトを上向きに施設することが一般的であることから、ダクトの内部にじんあいが堆積することを防止する装置を講じる必要があることを定めている。
第二号は、自動物品搬送装置の走行路として使用するトロリーバスダクトの工事は現場の作業では接続が主体であり、本体は工場で製作されユニットとして販売されるので、ケーブル等と同様、その構造の規格を定めている。
第三号は、トロリーバスダクトを上向きに施設することが一般的であるところから、水分が浸入し、溜まるおそれがあるので、乾燥した場所に限り施設できることとしている。
第五号は、安全性を高めるため、電源側とトロリーバスダクトの間に絶縁変圧器を設けることを規定している。
イ(ロ)では、絶縁変圧器の1次巻線との間に金属製の混触防止板(→解説)を設け、この板にA種接地工事を施すことを規定している。これは絶縁変圧器の1次側の電圧が2次側に侵入することを防止するとともに、事故の範囲を限定するためである。
ロは、絶縁変圧器の2次側の電路は接地しないことを規定している。これは、非接地回路であれば、その回路の任意の1点に地絡事故が発生しても、帰路がないので地絡電流は流れず感電事故防止に効果があるためである。

第6項

第6項は、一般の低圧接触電線を絶縁トロリー工事により施設する場合の工事方法を規定している。第一号は、絶縁トロリー線は人が容易に触れるおそれがないように施設すべきことを規定している。
第二号は、絶縁トロリー線及びその附属品(フィードイン、ジョインタ、エンド、ハンガ及び耐張引留装置をいう。)並びにコレクタ(集電装置)の仕様について規定している。平成26年以前は絶縁トロリー線の詳細の仕様を条文で規定していたが、絶縁トロリー線の詳細仕様等がJIS C 3771(2007)「絶縁トロリーシステム」として整備されたことから、平成24年度電気施設関連規格等調査役務請負報告書を踏まえ、当該JISに適合することを要件とした。(H26改正) 第三号は、絶縁トロリー線には、コレクタが通過する開口部があることから、じんあい等が堆積して接触不良が発生するのを防止するため、この開口部を横又は下方に向けて施設することを規定している。
第四号は、絶縁トロリー線の終端部にはエンドを用いて充電部分を露出させないように施設することを規定している。
第五号は、絶縁トロリー線の支持方法、第六号は、絶縁トロリー線の支持点間隔について規定しており、耐張式の絶縁トロリー線を施設する場合は、両端を耐張引留装置により堅ろうに引き留め、その支持点間隔を6m以下とすることとし、その他の絶縁トロリー線を施設する場合は、第六号に規定する支持点間隔ごとに各支持点をハンガを用いて堅ろうに固定することとしている。第七号は、絶縁トロリー線及び集電装置と造営材との離隔距離について定めている。
第八号は、湿気の多い場所又は水気のある場所に施設する絶縁トロリー線を取り付けるハンガ及び耐張引留装置には屋外形のものを使用することを規定している。
第九号は、屋側又は屋外に絶縁トロリーを施設する場合は、内部に雨水が入らないように防水構造(屋外用)のものを使用することを規定している。

第7項

第7項は、機械器具に施設する接触電線についての規定で、本条の解説の初めに説明した理由から詳細な規定を設けず、原則的事項のみを規定している。これらの事項については前述のとおりである。第三号のただし書に規定されている事項は、紡績工場等で施設例があるもので、機台と電気的につながって走行レールを接触電線の一として使用する場合の工事方法である。このような場合、接地工事が不完全であれば機台は対地電圧をもつことになり、人が触れれば電撃を受けるので、その施工方法については第一号から第三号の規定により施設する場合に限り認めている。その理由は、次のとおりである。なお、屋側又は屋外は、屋内の場合に比べて湿気も多く感電の機会も多いので、走行レールを接触電線として使用しないこととしている。
(a)使用電圧を300V以下とし、かつ、木製の床その他これに類する絶縁性のあるもの(→解説)の上から取り扱うようにすれば、万一接地工事が不完全であっても致命的な事故とならない。
(b)絶縁変圧器の1次側の電圧を対地電圧300V以下とすることにより、2次側を非接地とすれば、万一接地工事が不完全であっても人体に流れる電流が小さく危険が少ない。
(c)接地抵抗値が3Ω以下であれば通常時において機台に対地電位を生じず、また、万一他の電線の1線が地絡しても機台の電位の上昇は少なく危険もない。
なお、(c) における電線とは、接触電線として使用する走行レールを指す。また、低圧接触電線の電路の絶縁抵抗値は、の規定による必要があるが、第三号ただし書の規定により施設するものは、大地から絶縁されていないので、第二号において除外されている。

第8項

第8項は、接触電線と他の電線、弱電流電線等又は管若しくはこれらに類するものとの離隔距離を規定している。一般には、これらのものが接近する機会は少なく、また、できるだけ接近させないことが望ましいが、やむを得ず接近する場合は30cm以上の離隔距離を保持することとしている。ただし、絶縁トロリー工事の場合は、充電部分が絶縁物で覆われていることから10cm以上離隔して施設すればよいこととしている。また、トロリーバスダクト工事の場合は、ダクトにより隔離されており、かつ、ダクトには接地工事が施してあるから保安上心配ないので、直接接触しないように施設すればよいこととしている。

第9項

第9項は、接触電線に電気を供給する配線には、保守、点検上必要であるので、専用の開閉器及び過電流遮断器を施設することとしている。開閉器は接触電線に近いところで操作しやすい箇所に施設し又は接触電線に近い箇所から遠隔操作できるように施設することを規定している。また、接触電線が充電されているにもかかわらず停電していると誤認して事故を起こす例も少なくないので、一般的に接触電線の近くで見えやすい位置に電圧の有無を示す表示灯が設けられている。

第10項

第10項は、爆燃性粉じんの存在する場所、可燃性粉じんの存在する場所には施設しないこととしている。ただし、第三号に規定する場所では粉じん爆発の危険が少なく、粉じんが集積することを防止する措置を講ずれば危険はないので、その施設を認めている。なお、粉じん(糸くずを含む。)が可燃性のものであるときは、アークを発生して粉じんに点火することのないよう接触電線と集電装置が使用状態で離れ難いように施設する必要がある。

第11項

第11項は、接触電線は火花を発することが多いので、可燃性ガス等の存在する場所等の危険場所(→から)に施設しないこととしている。粉じんの多い場所でも比較的危険でない場所については、前項でこれを施設してよいこととしている。

公式資料該当頁: p.239–242

令和7年11月20日改正

出典: 「電気設備の技術基準の解釈の解説」(経済産業省)を加工して作成

※ 本ページは公式資料そのものではありません。