電気設備の技術基準の解釈の解説
第176条(可燃性ガス等の存在する場所の施設)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.251–255
第1項
〔解 説〕 本条は、可燃性のガス又は引火性物質の蒸気が充満し、点火源があれば爆発するおそれがある危険場所に施設する場合の規定である。
「可燃性ガス」とは、常温において気体となっており、空気とある割合の混合状態であるときに点火源があれば爆発を起こすものであり、「引火性物質」とは、火のつきやすい可燃性の物質で、その蒸気と空気とがある割合の混合状態にあるときに点火源があれば爆発を起こすものである。本条でいう引火性物質は、原則として引火点が40℃以下のものを指すが、引火点が40℃を超えるものであっても、その物質の温度が、その場所に存在する状態において引火点以上となっている場合には、その物質も引火性物質に含められる(→解説176.1表、解説176.2表)。
〔解説176.1表〕
〔解説176.2表〕
本条に規定される場所は、次のいずれかの場合において、ガス等が空気中において爆発するおそれがある濃度に達する可能性のある場所である。
(a)正常な運転状態(安全弁の作動等通常の使用状態で頻繁に起こる異常を含む。)
(b)修理又は点検等の保守作業を行う場合
(c)通常起こりやすい誤操作の場合
したがって、例えば配管の破裂や容器の破損の場合等については考慮する必要がない。なお、有効な換気装置があり、それが運転されている状態では、危険な濃度に達するおそれがない場所も、本条に規定する場所から除外される。しかし、常に、多量のガス等が漏出しており、換気装置が停止したとき、いつでも直ちに危険となるような場合は、有効な換気装置とは認められない。
また、上記 (a) 又は (b) の場合は別として、(c) の場合は、誤操作防止対策を講ずることを前提とすれば、適当な防止策がない場合についてだけ考慮すればよい。なお、バルブを締め忘れるというようなことは、ここでいう誤操作とは考えない。
本条に規定するような危険場所には、元来点火源となるものは施設しないことが望ましいのであって、電気設備も、真にやむを得ない場合に限りこれを施設するというのが一般的である。
本条に規定する危険場所になりやすい場所とは、次のとおりである。
危険な場所に該当する可能性の大きい場所の例
(1)プロパン等の可燃性の液化ガスを他の容器へ移注する作業又は小分けする作業等を行う箇所の周辺
(2)アセチレン発生器室の内部
(3)圧力容器内に残留している可燃性ガスの放出試験を行う箇所
(4)エタノール、メタノール、エーテル等の引火性の液体の蒸留かんの排気口及び受器の開口部附近並びにこれらの液体の移注を行う箇所
(5)塗料工場におけるシンナーの取扱い箇所、ラッカー、ワニス等の塗料を調合し、混合する箇所
(6)ヘキサン、ベンゼン等の引火性の液体を用いる抽出作業を行う箇所のうち、抽出かん、蒸留かん、溶剤タンク、溶剤の移送ポンプの周辺
(7) 引火性の液体を溶剤とする塗料の吹付け、塗装作業場のブースの内部、排気ダクトの内部、吹付塗装作業を行う箇所の周辺又は当該塗料の浸漬塗装作業場の浸漬槽の周辺
(8)引火性の液体を用いるドライクリーニング工場の洗浄槽、遠心分離機(ふりきり)の附近
(9)引火性の液体を密閉していない容器に入れて機械、器具、材料等の洗浄等の作業を行う場所
(10)ゴム糊の製造工程におけるゴム糊の混合槽の附近又はゴム糊を用いて接着する作業を行う場所若しくはゴム糊を用いて接着したものを乾燥する場所
(11)引火性の液体を含む薬剤の塗布作業を行う場所及び乾燥させる箇所
(12)焼酎、ウイスキー等の酒類製造工場におけるエチルアルコールの水割り作業を行う箇所
(13)可燃性のガス又は引火性の液体を充満した容器(完全に密封したもののみを除く。)を貯蔵する場所
(14)危険物(引火性液体)貯蔵庫の内部
(15)引火性の液体が残っている容器、配管、装置等の内部において掃除、点検等の作業を行う場合における当該容器等の内部
(16)タンクローリのタンク、石油タンク、ガスタンク、船そう等の内部等、自然通風又は自然換気が不十分な場所において、引火性の液体を用いて塗装、掃除等の作業を行う場合の当該箇所
(17)引火性の液体を用いる抽出かん、引火性の液体の蒸留かん等の装置の取扱いにおいて、抽出に用いた当該液体を十分に除去せずに容器のふたを誤って開放し、又はバルブの操作手順を誤る等の誤操作により、一時に多量の引火性の液体が噴出し、又は漏出するおそれがある場所
なお、本条が適用される可燃性のガス等の存在する火薬類製造所の危険工室については、解説176.3表を参照されたい。
〔解説176.3表〕
本条に規定されている低圧又は高圧の工事方法の基本的な考え方は、前条の場合と同様である。なお、ガス蒸気危険場所における電気工事については独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所(旧:産業安全研究所)
から工場電気設備防爆指針として詳細な基準が示されているので、参考とされたい。
第1項第一号イは、配線工事について規定している。配線工事は、前条第一号の爆燃性粉じんのある危険場所におけるものと同様に金属管工事又はケーブル工事によることとしている。個々の工事方法に関する規制も防じんの点を除いては同一である。ガス等が金属管又はその付属品中に侵入しても熱の放散を妨げるおそれがないのは当然のことであり、これらの内部では火花又はアークを発することもないので、単に外傷防護のみを考慮して規定している。
(イ)は、金属管工事による場合について規定している。金属管工事による場合は、一般規定によるほか、薄鋼電線管と同等以上の強度を有するものを使用し、接続は5山以上ねじ合わせすることとされている。5山以上ねじ合わせるのは接続を機械的に堅ろうに行うためである。附属品等には、防爆型のものを使わなくてはならないということはない。
また、電動機に接続する短小な部分には、耐圧防爆型フレキシブルフィッチング又は安全増防爆型フレキシブルフィッチングを使用することとしている(→第159条第4項第二号及び第三号、第175条第1項第一号解説)。
(ロ)は、ケーブル工事による場合について規定している。ケーブル工事による場合は、一般規定によるほか、ケーブルを管若しくはとい等の防護装置に収め又は鋼帯がい装等のがい装を有するケーブル若しくはMIケーブルを使って損傷を防止することとなる。電気機械器具の引込口での損傷防止については、粉じん危険場所と同様である(→第175条第1項第一号イ)。
ハの移動電線は、できるだけこのような危険場所では使用しないことが望ましいが、やむを得ず使用する場合は、爆燃性粉じんのある危険場所における場合と同様、機械的強度の強い3種以上のキャブタイヤケーブルであって、かつ、途中に接続点のないものを使用することが必要である。そのほか、引込口から粉じんが内部に入り難いように、かつ、引込口で損傷を受けるおそれがないように施設する必要がある(→第175条第1項第二号ロ、同条第1項第一号ロ解説)。
ニでは、電気機械器具の構造は、「電気機械器具防爆構造規格」(昭和44年労働省告示第16号)の規定に従い、使用場所に応じて適当な構造のものを使用する必要があることを規定している。
H20解釈以前は、各種防爆構造の使用区分及び規格が本条に規定されていたが、労働安全衛生規則により、「電気機械器具防爆構造規格」に適合するものでなければ使用してはならないこととされていること、及び同規格において危険箇所の区分と使用可能な防爆構造についてIECの考え方を一部取り入れたことにより、本条の規定における各種防爆構造の使用区分が同規格と整合しなくなったことから、同規格に適合することを規定する形に改めた。危険箇所の区分の考え方は、日本産業規格 JIS C 60079-10「爆発性雰囲気で使用する電気機械器具-第10部:危険区域の分類」に示されている。
ホでは、電気機械器具と配線又は移動電線との接続部分は、震動により緩むおそれがないように施設することを規定している。また、危険場所内に設ける電気機械器具は、爆燃性粉じん等のある場所と同様、一般規定によるほか、白熱電灯や放電灯用電灯器具の取付け及び電動機は過電流を生じた場合にもガス等に着火するおそれがないように施設すること等の規制がある。
第二号は、第一号に規定する施設方法によらず、IEC規格の規定による施設方法であっても、省令の規定趣旨を満足するものであることを示している。本号で引用している、日本産業規格 JIS C 60079-14(2008)「爆発性雰囲気で使用する電気機械器具-第14部:危険区域内の電気設備(鉱山以外)」は、IEC 60079-14(2002)と同等の内容のJISである。
「電気機械器具防爆構造規格」における、危険箇所の区分及びその区分に応じた電気機械器具の防爆構造の選定の考え方は、IEC規格と基本的に同等である。しかし、各防爆構造の規格は、「電気機械器具防爆構造規格」第二章の規定とIEC規格では異なる部分があり、IEC規格に適合する電気機器を使用する場合は、IEC規格に規定される施設方法により施設する必要がある。また、本号の規定により、IEC規格の方法で施設する場合においても、使用する電気機械器具は、労働安全衛生法第44条の2に基づく検定を受けたものでなければならないことに変わりはない。
第2項
第2項は、特別高圧の電動機、発電機及びこれらに電気を供給する設備を可燃性ガス等の存在する場所に施設する場合の施設方法について規定している。
本項では、原則として危険物等の存在する場所には特別高圧の電気設備を施設しないこととしているが、第一号又は第二号の規定による場合は例外としている。
第一号イでは、電動機、発電機及びこれらに電気を供給するための電気設備の使用電圧について規定しており、第169条第3項から第5項の規定を踏まえ、その電圧を35,000V以下とした。ロでは使用する電線をケーブルとするとともに、ケーブルを鉄製又は鉄筋コンクリート製の管、ダクトその他の堅ろうな防護装置に収めて施設して、ケーブルの損傷を防止することとしている。また、当該設備が特別高圧であり、人が触れるおそれがある場所に施設されることから、管その他のケーブルを収める防護装置の金属製部分、金属製の電線接続箱及びケーブルの被覆に使用する金属体には、A種接地工事を施すこととしている。