電気設備の技術基準の解釈の解説
第172条(特殊な配線等の施設)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.237–239
第1項
〔解 説〕 第1項は、ショウウィンドー及びショウケース内の配線の施設について規定している。電線にコードを使用して造営材に接触して施設する配線工事は、安全度が劣るので、一般の配線には認められない。しかし、ショウウィンドー、ショウケース内の配線は、美観上等からやむを得ない場合もあり、比較的安全度の高い箇所に限れば支障もないので、本項でこれを示している。
第一号及び第二号は、この特殊配線工事によることができる範囲を規定したものである。ここで「外部から見えやすい箇所」とは、外部から見て遮へい物が全くなく見通せる箇所又は透明なガラス等を通して見える箇所をいう。したがって、ショウウィンドー、ショウケース等の下部にある戸棚内等の配線工事は、外部から見えやすい箇所ではないため、金属管工事、金属線ぴ工事等によることとなる。
第三号は、使用電線について規定している。
第四号は、電線の取付け方法として、これを取り付ける造営材は、比較的絶縁性のある乾燥した木材、コンクリート、石材等とし、かつ、その場合は、ステープル等を使用して電線の被覆を損傷しないように施工し、ステープル自体も脱落しないようにすべきことが定められている。
また、電線には、可とう性のあるコードやキャブタイヤケーブルを使用するので、取付け点間の距離は、がいし引き工事の場合の1/2、すなわち1m以下とし、第五号では、第170条と同様、配線には電球、電灯器具の重量を支持させないようにすべき旨を定めている。
電球線の場合は、いったんがいし等にこれを引き留め又はシーリング等を利用して電球線を引き出すこととし、電灯器具等は他の支持方法で固定し、又はつり下げ、配線からリード線だけを配線するようにすべきである。なお、電線の接続については、第12条のコード及びキャブタイヤケーブルの接続に関する規定が適用される。
第六号は、この配線は、上述のとおり他の配線工事方法に比べ安全度が劣るので、「ショウウィンドー又はショウケース内の配線」又はこれに接続する「移動電線」を、一般の配線工事方法により施設した部分から完全に切り離すことができるようにするため、差込み接続器等を使用すべき旨が定められている。一般に、ショウウィンドー又はショウケースのコード配線の電源側には、差込みプラグ等を設け、これをコンセントに差し込んで電源と接続するが、この場合差込みプラグを取り付けるコード部分が、ここでいう「移動電線」である。
第2項
第2項では、劇場、映画館等に施設する電気設備について規定している。劇場、映画館、公会堂等では公衆が集合し、また、舞台その他特殊な設備を有するので事故が発生しやすく、事故発生時に公衆が混乱し災害が拡大するおそれがある。このような場所の屋内工事は、一般の屋内の施設基準だけでは不十分であるので、特にこの項を設けて注意すべき点を規定しており、本項に規定のない配線工事その他の事項は、全て一般規定の適用を受ける。
第一号イでは、ロからホに規定する施設は興行場に特有のものであるため、保安の観点から、その電路の使用電圧を300V以下に制限している。
ロは、配線の工事方法の種類によってとるべき処置が異なるが、ケーブル工事であればケーブルを金属管に収めるなどの方法を講じることを規定している。ハからホは、使用場所と電線の種類を規定している。
第二号では、H13解釈で興行場に施設する使用電圧が300Vを超える低圧配線は、日本電気技術規格委員会規格 JESC E6003(2016)により施設することができることを示している。このJESC規格では、近年、興行場の大型化に伴う幕、舞台装置及び照明設備の増加による吊物機構の増大、また、床置きの舞台装置の巨大化による床機構の重量増大が著しいことから、舞台機構設備(幕、床等の昇降・移動を目的として、劇場、ホール等に固定設備として施設されるものをいう。)の電動装置における電動機の大容量化が求められてきたことにより、主に400V級の電動機を施設できるよう施設条件を整理したものである。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。
なお、近年の大型化された興行場における電気設備の施設に関する民間規格として、日本電気技術規格委員会規格
JESC E0002(1999)「劇場等演出空間電気設備指針」((社)電気設備学会指針 IEIE-G-0001(1999))がまとめられているので参照されたい。
第三号は、フライダクトの構造及び施設方法について規定している。フライダクトとは、舞台用の照明設備に電気を供給するためのダクトをいい、舞台照明効果の向上を図ってダクトの内部にコンセント類を多数並列に取り付けたものである。なお、フライダクトは、一般的には照明器具の取付け用のパイプなどと組み合わせて、ワイヤー等によって舞台上部からつり下げて使用されることが多い。フライダクトのダクトは、厚さ0.8mm以上の鉄板又はこれと同等以上の強さを有する材料で堅ろうに制作されたものを用いることとしている。これはH13解釈で、日本電気技術規格委員会規格JESC E3001(2000)のダクト材料の規格を引用することにより、鉄板以外の金属製材料をダクト材料として使用できることとしたものである。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。
第四号は、舞台、ならく、オーケストラボックス及び映写室は事故が起こりやすい場所であり、事故の波及を小範囲に止めるため、これらの場所への配線は、それぞれ別の回路とし、又は第149条の規定に基づき舞台、ならく、オーケストラボックス及び映写室への配線の全部又は一部を一括し、これを他の屋内配線と別回路として、専用の開閉器(保守点検用にも必要となる。)及び過電流遮断器を施設すべきことを定めた。
第五号は、短時間のうちに照明設備の取付け、取り外しが行われるなどの危険があるため、万一の場合を考慮して舞台用のコンセントボックス、フライダクト及びボーダーライトの金属製外箱には、D種接地工事を施すことを規定している。
第3項
第3項では、エレベータ用ケーブルは数多くの線心を必要とすること、また、昇降路内という限定された場所内に施設されるため、昇降路内から機械室の制御盤等に至る電線として、エレベータ用ケーブルが使用できることとした。これは、エレベータ用ケーブルが昇降路から出ると使用できない従来方式では、制御盤等に至る電線に多心型ケーブルを使用した場合、その接続点において、その接続が十分でないとエレベータ等の制御が不安定となることから、信頼性を向上させるためである。
第4項
第4項では、作業船等で使用されるケーブルについて規定している。一般の船舶(船舶安全法が適用されるもの)に設置される電気設備は、電気事業法第2条第1項第十八号(電気事業法施行令第1条)によって「電気工作物」の定義から除外されているので、この解釈は適用されないが、推進器を有しないしゅんせつ船その他の作業船等の電気設備には、この解釈が適用される。
一般の鉄鋼船の配線には、造船の工程途中の溶接火花におかされにくく、また配線工事を容易にするような、特殊ながい装を有する船用ケーブルが使用されている。推進器を持たない作業船等においても、大型になれば、この船用ケーブルが使用される場合が多い。この船用ケーブルは国際規格との関係から、一般に陸上で使用しているケーブルの規格と一致していない。日本産業規格においても「船用電線」として、他のケーブルとは別に規格を定めている。したがって、作業船等の配線に限って、この種のケーブルの使用を認めている。
なお、日本産業規格JIS C 3410(2010)「船用電線」には、公称電圧が0.6kVのものと公称電圧0.2kVのものとが規定されているが、公称電圧が0.2kVのものは、外装が鉛被又はアルミ被のものを除き、電気用品安全法の適用範囲のものであるため、本条では公称電圧0.6kVのものに限定している。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。