電気設備の技術基準の解釈の解説

第171条(移動電線の施設)

経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.236–237

〔解 説〕 本条は、移動電線(→第六号)及び移動電線に接続する電気機械器具(配線器具を除く。)に関する規定である。
なお、前条で規定している電球線及び電気機械器具内に施設してある電線は移動電線から除かれる。また、小勢力回路及び使用電圧が60V以下の出退表示灯回路の移動電線は、危険度が低いので、及びの規定によることとし本条の適用から除外している。

第1項

第1項は、低圧の移動電線の施設について規定している。移動電線も電球線の場合と同様、原則として外装又は絶縁体の材料がビニル又は耐燃性ポリオレフィンであるもの以外のコード又はキャブタイヤケーブルを使用すべきであるが、電気を熱として利用しない家庭用及び業務用の電気機械器具及び電気を熱として利用するもののうち比較的温度の低い(移動電線を接続する部分の温度が80℃以下であって、移動電線が接触するおそれのある部分の温度が100℃以下のもの)保温用電熱器、電気温水器等については外装又は絶縁体の材料がビニル及び耐燃性ポリオレフィンであるものを使用することを認めている。また、屋側又は屋外に施設される低圧の移動電線については、雨露にさらされる可能性の多い場所であるから、屋内における移動電線の施設と同様な施設方法のほか、使用電線等に条件を加えている。移動電線を湿気の多い場所等に施設する場合に電線の種類に制限を受けること及び雨露にさらされないように施設される移動電線に防湿コードを使用してもよいことは、電球線の場合と同様である。なお、300V以下の低圧の移動電線は、電球線の場合と異なり外傷を受けやすいので1種キャブタイヤケーブルは使用できず、また、当然絶縁電線も使用できない。
移動電線の太さについても電球線と同様の趣旨で断面積0.75mm2以上のものを使用すべきであるが、第三号では電気ひげそり又は電気バリカン等は頻繁に動かしながら使用するものであるから、これらに附属する移動電線には、一般のコードでは可とう性が十分でなく、素線が切断する場合が多いので、特に可とう性を主目的として作られた金糸コード(→解説)を使用することが認められている。
金糸コードは導体の断面積が小さく、許容電流も0.5A程度であるので、これに接続される家庭用電気機械器具は容量が50VA程度以下のものとなる。また、金糸コードは、分岐回路に施設されるヒューズでは確実に保護できるとは限らないので、事故発生率を少なくするため長さを制限し、使用場所も乾燥した場所に限っているが、その取扱いには十分注意が必要である。
なお、エレベータ用ケーブル、溶接用ケーブル及び電気用品安全法の適用を受ける直列式の装飾用電灯器具(クリスマスツリー用等)は特殊なものであるから、この規定から除かれている。
第四号は、移動電線と屋内配線との接続方法について規定している。本来、移動電線は一定の場所に固定しない電気使用機械器具と屋内配線との接続に使用されるので、電気使用機械器具の使用中には、部分的には常に移動し、張力等の外部からの力が加えられている。したがって、屋内配線との接続点には衝撃が加わることがあり、また、現場の作業では電気機械器具の取扱いが乱暴なので誤って極端な張力を与えた場合でもその接続点に損傷を生じることがなく、その他移動機器による事故の発生を防止し、かつ、事故発生時にはただちに屋内電路から接続を断つためにも、差込み接続器等を使用することを原則とした。
ただし書は、主として工場における生産機械に付属する電動機に使用される移動電線の施設であって、移動電線に接続する電気使用機械器具を使用する場所は一定の場所に限定されているが、使用中、その場所内でその機器が移動し、移動電線と屋内配線との接続点に張力等の外力が加わるおそれがないような工事方法である。このような場合は、移動電線をちょう架用線でちょう架し、移動電線の長さに十分余裕を持たせて、電気使用機械器具の移動によって、移動電線と屋内配線の接続箇所、移動電線自体その他ちょう架装置を損傷することのないように保安上十分に注意して施設することが必要である。
第五号では、移動電線を屋側配線又は屋外配線に接続する場合に、移動電線を開閉器の端子等にねじり止めし又はねじに引っ掛けて使用すると、電気機械器具の移動の際に移動電線に張力が加わって、ねじから外れやすく、例えば、線心の1つが外れ、他線が接続されたままの状態になり、しばしば事故が起こっているので、差込み接続器を使用して接続することとしている。
第六号は、移動電線と電気機械器具との接続方法を規定したものである。この接続点は最も損傷しやすく、感電、短絡事故のおそれの高いところである。そこで、移動電線と電気機械器具との接続は人が容易に触れないように施設した端子金物にキャブタイヤケーブルをねじり止めし又は差込み接続器その他これに類するもので行うこととしている。ビニルテープ類で被覆して、コードを直接接続する方法は保安の観点からは好ましくない。

第2項

第2項は、移動電線の線心のうちの1つをその移動電線に接続する機器の外箱の接地線に利用する場合(→及び)の移動電線と屋内配線、電気機械器具等との接続方法を定めたもので、差込み接続器又はこれに類する器具の使用を原則とし、かつ、誤接続のおそれがないような構造のものであることを要求している。

第3項

第3項は、屋内、屋側又は屋外に施設される高圧の移動電線について規定している。
第一号では、電線は、高圧用の3種クロロプレンキャブタイヤケーブル又は3種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブル(→)を使用することを規定している。高圧用のキャブタイヤケーブルには、2種クロロプレンキャブタイヤケーブル、2種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブル、3種クロロプレンキャブタイヤケーブル及び3種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブルがあるが、2種クロロプレンキャブタイヤケーブルと2種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブルとは、主としてしゅんせつ船等の水上電線路(→)に使用されるもので、ここではその使用は認めないこととしている。
第二号では、高圧の電気を必要とする移動機械は大型の機械であり、また、移動電線も低圧のものと異なって相当の重量であることから、機械の移動中に接続点において異常な荷重が加わり、接続点が外れて感電、短絡事故が生じるおそれがある。したがって、これを防止するため、ボルト締めその他これと同等以上の効果のある接続方法とすることを定めている。
第三号では、移動電線の事故時に他の回路と独立して開路できるように専用の開閉器及び過電流遮断器を設けるほか、地絡を生じたときに電路を遮断する装置を設けることを定めている。高圧用の3種クロロプレンキャブタイヤケーブル又は3種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブルは、多心キャブタイヤケーブルであっても各線心に金属製の遮へい層を有しているので、キャブタイヤケーブルが損傷を受けたときは相間短絡事故になる前に1線と金属製の遮へい層との間に短絡が生じるため、この金属製の遮へい層はキャブタイヤケーブルの電源側の1端で接地工事を施し、接地リレーの動作を確実にしておく必要がある。なお、かっこ内で「誘導電動機の2次側電路」を除いているのは、電動機が移動し、始動器が固定している場合で、その相互間を移動電線で接続するとき、その回路に過電流遮断器等を設置することは不都合であり、また、電動機の始動時以外は電圧がほとんど誘起されていないからである。

第4項

第4項は、の規定により施設する場合を除き、特別高圧の移動電線の施設を禁止している。これは、電気使用場所では電気知識に乏しい一般の人が電気設備に接する機会が多く危険であるので、電気使用機械器具に直接電気を供給する特別高圧を禁止する趣旨である。

公式資料該当頁: p.236–237

令和7年11月20日改正

出典: 「電気設備の技術基準の解釈の解説」(経済産業省)を加工して作成

※ 本ページは公式資料そのものではありません。