電気設備の技術基準の解釈の解説
第95条(特別高圧保安工事)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.139–144
〔解 説〕 本条は、特別高圧架空電線が、建造物、道路、横断歩道橋、鉄道、軌道、索道、架空弱電流電線等、低圧架空電線、高圧架空電線、低圧電車線、高圧電車線、他の特別高圧架空電線、その他の工作物と接近又は交差する場合に、一般の工事方法に比べてより強化しなければならない事項のうち、共通的なものをまとめて保安工事として示し、条文の簡素化を図っているもので、その趣旨は低圧保安工事、高圧保安工事と全く同じである(→第70条解説)。
低高圧架空電線が他の工作物と接近又は交差する場合は、電圧による区分や接近状態による区分によって規定内容にあまり大きな差異はないが、特別高圧架空電線路では、従来から危険段階として、電圧に関しては35kV、170kV及び600kV、接近に関しては水平距離で3mを境として分けており、保安工事を危険段階に応じて第1種から第3種に分類して規定している。解説95.1表は、特別高圧架空電線が建造物などと接近、交差する場合の施設方法を表にまとめたものである。表からも明らかであるように、第1種特別高圧保安工事は、使用電圧が35kVを超え170kV未満の特別高圧架空電線が建造物などと第2次接近状態(→第49条第十号、第71条解説)に施設される場合及び35kVを超える特別高圧架空電線が建造物以外の他の工作物と第2次接近状態に施設される部分が長い場合の特別高圧架空電線に要求される工事方法である。第2種特別高圧保安工事は、35kV以下の特別高圧架空電線が建造物と第2次接近状態に施設される場合、特別高圧架空電線が架空弱電流電線等、低高圧架空電線、道路などと第2次接近状態に施設される部分が長い場合、及びこれらの上で交差する場合の特別高圧架空電線に要求される工事方法である。
〔解説95.1表〕
(備考)本表のほか、第96条による支線の義務がある。
凡例:①、②、③は、それぞれ第1種、第2種、第3種の特別高圧保安工事
◎は、離隔距離の規定があることを示す。
⬜︎は、水平離隔距離の規定があることを示す。
/は、規制がないことを示す。
※は、緩和規定があることを示す。
第1項
第1項は、第1種特別高圧保安工事の内容を示しており、この場合は特に厳重な施設方法としている。
第一号は、ケーブル以外の電線の引張強さを使用電圧で区分して示している。電線の引張強さを強くすることは、着氷雪による荷重等の不測の気象条件等に対して、電線を切断させないための有効な手段である。
なお、電線の引張強さの規定は電線の切断防止を目的としたものであり、第1種特別高圧保安工事が適用されるような箇所においては、送電線の設計に当たって、第85条(第66条を準用)に示される電線の引張強さに対する安全率を増すことが望ましい。
第二号は、接続点における断線の例は少なくないので、接続は比較的確実な圧縮接続によることとしている。しかし、圧縮接続であっても、施工不完全のために断線した例があるので、施工に当たっては十分な注意が必要である。
第三号で支持物の種類をB種鉄筋コンクリート柱、B種鉄柱及び鉄塔に限定しているのは、支持物の基礎の強度にあっては1基ごとに計算して安全率を確認し(→第60条)、かつ、支持物の強度にあっては風圧荷重だけでなく常時想定荷重を考慮し設計する(→第59条)ことが支持物の信頼度につながるからである。
第四号は、径間の制限に関する規定である。一般の特別高圧架空電線路の径間については第63条、市街地に施設される特別高圧架空電線路の径間については第88条で示している。この規定は、他の工作物との接近又は交差箇所において径間が長いと、その間での断線の確率も高くなり、不測の事故を発生しやすいから、できるだけ径間は短くする必要があるという趣旨である(→第88条解説)。
引張強さ58.84kN以上のより線又は断面積150mm2以上の硬銅より線を使用した場合は、一般の径間長についての規定(→第63条)の適用を受けることになる。規定上は電線を強くすることによって、径間を一般径間並みに緩和しているが、第1種特別高圧保安工事が適用されるような箇所においては、第59条及び第85条に示す支持物及び電線の安全率を一般工事よりも大きくとることが望ましい。
第五号及び第六号は、がいし装置についての規定である。電線の落下事故の大半は支持点付近で起きており、原因としては、サージによるせん絡のため電線が溶断する、架線金具が溶断する又はがいしが破損するなどが挙げられる。
第五号イは、当該部分においてサージによるせん絡が起こり難いようにする方法を示しており、例えば、がいしの増結又は1ランク上位のがいしを使用し、絶縁強度を上げる方法が考えられ、懸垂がいし、長幹がいしにも適用されている。
この方法は、これまで懸垂がいしの1個増結という形で行われていたものを、S38工規で一般化したものであって、110%の値は、従来の懸垂がいし1個増結の実績、電力中央研究所、技術研究所等の意見、施工面等を考慮して決めたものである。「近接する他の部分」とは、当該支持点から概ね1km以内を指している。なお、接近又は交差する箇所が連続するような所では、がいしの絶縁強度を上げるだけでなく、4基に1基程度は、2連若しくは2個並列のがいし装置を使用する又はアークホーンを取り付けるなどの対策により、他の部位でのせん絡を防止することが望ましい。
ロは、S43基準でアークホーンを取り付けたがいし装置もがいしの強化装置として認めたものである。アークホーンはせん絡時にがいしを保護するために施設されるもので、がいしの節約に効果があるばかりでなく、放電をアークホーン間で行わせるために電線にアークスポットができず、電線の溶断に対しても効果があると認められたものである(電力中央研究所報告63038「送電線溶断に関する研究」参照)。しかし、アークホーンの形状によっては電線溶断防止に有効でないものもあるので、アークホーンの選定には十分注意すべきである。なお、クランプと電線との電気的接続が不完全であったために、クランプ内で溶断事故が発生した事例も多いので、施工に当たっては、注意が必要である。
ハは、解説95.1図のようにがいしを2連又は2個並列に施設する方法を示しており、サージによってせん絡が起こってもヨーク間又は本線若しくは支持線のいずれか一方であるので、電線の溶断を防止できる。同時にがいしの破損に対しても、安全度を考慮したものである。
第五号イにおいて、130kVを超える場合についてせん絡電圧を緩和しているのは、50%衝撃せん絡電圧の値を近接する他の部分のがいし装置の値の110%と規定した場合に、これまでの1個増しに比べてかなり苛酷になること、比率は同じであっても絶対値の差が大きくなること、130kVを超える特別高圧架空電線路では一般的に架空地線、埋設地線を設け、雷の直撃防止、逆せん絡防止等の耐雷設計についてかなり注意して設計していること等から、105%でよいこととしたものである。なお、130kVを超える送電線で105%設計にしてあるものを、一時的に130kV以下の電圧で使用する場合は規定上130kV以下の特別高圧架空電線路となり、110%の値をとることになるが、規定の趣旨からして、そのせん絡電圧の絶対値が130kV以下のがいしの場合の110%に相当するものであれば、105%の値のまま130kV以下で使用することは差し支えない。
例えば、154kV送電線を一時的に77kVで使用する場合であって、50%衝撃せん絡電圧105%値の675kVで設計し、77kV設計における50%衝撃せん絡電圧110%値の395kVを上回るような場合は、更なる対策は要しない。
がいしの絶縁耐力の値は、従来は乾燥せん絡電圧、注水せん絡電圧及び50%衝撃せん絡電圧について所定の値以上としなければならなかったが、S43基準からは、50%衝撃せん絡電圧が所定の値以上であればよいことにした。これは、開閉サージのせん絡特性について不明確であったが、電気学会送電専門委員会の「架空送電線の絶縁設計要綱」(1966年)により絶縁設計の考え方が明確になったためである。これによると送電線路の絶縁は開閉サージによって定まり、商用周波の持続性異常電圧に対しては十分余裕があるため商用周波によるせん絡は考えられないので、注水又は乾燥せん絡電圧を隣接径間のそれより大きくすることは意味がないということになった。
解説95.1図
第七号は、雷によるせん絡防止規定である。架空地線の設置工事については、逆せん絡が起こらぬように十分な注意が必要である。しかし、100kV未満の送電線では絶縁強度が低いため、架空地線を施設しても逆せん絡が起こる確率が高いと考えられ、また、これに代えてアークホーン又はアーマロッドで被害を防止することが保安上有効な手段と考えられたので、S43基準で、ただし書の規定を追加した(→第97条第3項解説))。
第八号は、事故の継続時間を短くし、電線の溶断を防止するため、また、万一断線事故が発生した場合でも災害を最小限にとどめるため、できるだけ早く電路を遮断しようとするものである。3秒という時間は消弧リアクトル接地系統においても可能な最低の時間ということで決めたもので、抵抗接地系統ではもっと速く遮断できるわけであり、できるだけ速く遮断することが望ましい。この意味から100kVの場合は2秒という値にしている。
第九号は、断線事故の多くの原因がスリートジャンプにあるために設けた規定であり、スリートジャンプを起こしやすい地域にあっては十分オフセットをとる等の方法により、径間せん絡を防止するための措置を講ずる必要がある。
また、スリートジャンプ以外にも電線の揺動の原因として、風及び雪の相乗効果によるギャロッピングがある。本解釈では、「今後の雪害対策のあり方について」(平成19年1月 原子力安全・保安部会 電力安全小委員会報告書)に基づき、H18解釈で風と雪の組合せによる電線揺動を追加した。ギャロッピングを起こしやすい地域において径間せん絡を防止する対策としては、次のような方法などがある。
・電線間隔を広めて建設する。
・電線の相間距離を確保する(相間スペーサ)。
・捻回周期をずらす(捻回抑制装置)。
・着氷雪形状を変化させる(ルーズスペーサ、スパイラルロッド)。
送電線路の径間を中心とした設計に当たって考慮すべき事項について概略的な要素を解説95.2図に示す。ここに、第九号の規定は抽象的であるが、図中で電線間隔を規定していることになるわけである。この規定に当たっては、径間との関係において具体的な保安レベルを決定すべきであると考えられる(→第88条解説)。
第2項
第2項は、第2種特別高圧保安工事の内容を示している。
第一号は、木柱の安全率については、R2基準で一律2.0以上とした(→第59条解説)。
第二号は、第1種特別高圧保安工事において禁止している木柱、A種鉄筋コンクリート柱及びA種鉄柱の使用を認め、径間制限を100mとした。また、引張強さ38.05kN以上のより線又は断面積100mm2以上の硬銅より線をB種鉄筋コンクリート柱、B種鉄柱又は鉄塔に使用する場合は、第63条の適用を受けることになる。
第三号、第四号、第五号は、第1項の解説で述べたとおりであるが、第2種特別高圧保安工事では第三号ニでラインポストがいしの使用を認めている。
第3項
第3項は、第3種特別高圧保安工事の内容を示している。規定内容は、径間制限(→第一号)と揺動による短絡防止(→
第二号)のみで、径間制限については第2種特別高圧保安工事よりやや緩くなっている(→解説95.2表)。木柱、A種柱に支線を設けた場合の径間の緩和は、第2種特別高圧保安工事と同様に設けていない。
なお、第二号の風又は雪による揺動による短絡防止については、S47基準において保安工事全般にわたって規制することになったが、これは雪害対策の一環として太線化(→第84条)を推進する一方、抽象的ではあるが揺動による短絡防止の精神を盛り込んだもので、具体的保安レベルについては、電線間隔と径間の関連から規定すべく今後の検討課題であると考えられる。
解説95.2図
〔解説95.2表〕
なお、第1種特別高圧保安工事には木柱及びA種柱は使用できない。