電気設備の技術基準の解釈の解説
第60条(架空電線路の支持物の基礎の強度等)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.108–110
〔解 説〕 支持物の基礎は、塔体、柱体と同様に電線路の設計及び建設上主要な部分であるが、本条はその基礎の強度について規定したものである。
第1項
第1項は、架空電線路の支持物の基礎に必要な安全率を示しているが、ただし書により、配電線路の支持物のように類似した設備を多数施設する場合など、基礎の強度計算を個々に行うことなく、支持物の全長に対する根入れ深さ及び根かせの取付けによって施設するものは除外している。
基礎の構造として、工場打ち以外の鉄筋コンクリート柱又は鉄柱では、根かせ(→第59条)のほか、柱体の延長部をコンクリートや鉄筋コンクリートで包んだもの、又は更に鋼材で強化するか、あるいは安定板を設ける等の方法がある。
鉄塔では、コンクリート基礎(主脚材及びいかり材をコンクリート又は鉄筋コンクリートで包んだもの)及び鋼材基礎(主脚材に根かせ材を取り付け、いかり材は井げた状に組み合わせたもの)等がある。基礎のコンクリート打ちは、鉄筋コンクリート柱では柱体に同質のコンクリートを必要とするのに対し、鉄柱又は鉄塔では、日本産業規格 JIS R 5210(1992)「ポルトランドセメント」を用いるコンクリートにあっては圧縮強度8.83N/mm2のものを、鉄筋コンクリートとする場合にあっては15.69N/mm2のものを標準とすることになっている。
木柱、鉄筋コンクリート柱又は鉄柱の基礎は、柱体に加わる想定荷重により生じる転倒モーメント及び圧縮力に対して安全率が2以上となるように計算したものとしており、計算には、一般に電気協会式といわれている次の基本式が用いられる。根かせのある場合や基礎の補強方法等の詳細については、日本電気技術規格委員会規格 JESC E0004(2007)「配電規程(低圧及び高圧)」((社)日本電気協会技術規程 JEAC 7001-2007)の「205-7支持物の基礎」を参照されたい。
〔数式:式1〕
f :支持物の基礎の安全率
Do :支持物の地際の直径(m)
t :支持物の根入れの深さ(m)
H :集中荷重点の地表上の高さ(m)
P :支持物の頂部集中荷重に換算した荷重(N)
t0 :地表面から支持物の回転中心までの深さ(m)
〔数式:式2〕
K :解説59.3表における土質係数
鉄塔の基礎は、支持物から受ける引揚力、圧縮力及び水平力に耐えるように設計するが、この引揚耐力、圧縮耐力、水平耐力の安全率はそれぞれ常時想定荷重に対しては2{=荷重の不確実性に対する安全率(1.5)×土壌の不確実性に対する安全率(1.33)}以上、異常時想定荷重及び異常着雪時想定荷重に対しては1.33(土壌の不確実性に対する安全率)
以上とすることとしている。この安全率の値は、上部構造物に比べて基礎には不明確な因子が多いことを考慮して、鉄塔の上部構造物の安全率(常時想定荷重に対して1、異常時想定荷重及び異常着雪時想定荷重に対して2/3)の2倍としているが、鉄塔の上部構造物の安全率は部材の許容強度に対するものであり、一方基礎の安全率は降伏支持力に対するものであり許容支持力に対する安全率としては、実質1.33倍である。
安全率が荷重に対して2又は1.33以上ということは、基礎に加わる実質荷重が常時想定荷重の2倍又は異常時想定荷重若しくは異常着雪時想定荷重の1.33倍であっても、基礎の降伏支持力を超えないことを意味しており、また、一般に長期的な荷重に対する許容支持力は、極限支持力の1/3とすれば安全であるとされている。なお、地盤の降伏支持力は地盤に大きな変位を生じる破壊時の支持力(極限支持力)を1.5で除した値としている(→解説60.1図)。
解説60.1図
ここで、引揚耐力とは基礎の引揚力に対する耐力のことであり、基礎の底面を底面とする倒立截頭錐体中に含まれる土壌の質量及びすべり面に作用する抵抗力並びに基礎自身の質量から決まり、圧縮耐力とは基礎の圧縮力に対する土壌の支持力のことであり、土壌中の大小粒子の組織、配合のほか、含水量、粒子の原岩の種類、風化の程度によって変化し、概ね実験値等より求められたものである。また、水平耐力とは基礎体側面における地盤の耐力と底面の摩擦力によるものであり、建設時の埋戻し、土壌のつき固め不十分、その他の事情を考慮して概ね基礎底面における土壌支持力の1/2~3/2としている。
基礎の降伏支持力を正確に算定するための前提条件は、基礎地盤となる土壌の強度特性を正確に把握することである。
しかし、送電用の鉄塔は、通常広範囲にわたって建設されるもので基礎も多く、個々の建設地点について土壌の強度特性を正確に把握することが困難であるので、一般には解説60.1表によって地盤の諸元を推定し、次のような計算式によって基礎の設計を行う。ただし、重要な鉄塔又は地下水位の高い軟弱な地盤などに建設される鉄塔については、地盤調査を実施し、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-127-1979「送電用支持物設計標準」説明62(9)(b)に示されている考え方(ただし、基礎自重の取り扱いについては本条による。)により基礎を設計することが望ましい。
〔解説60.1表〕
引張耐力の計算式(→解説60.2図)
T ≦γe(Ve−Vc′)g /(F1・F2)+Vc・γc・g /F1
圧縮耐力の計算式(→解説60.2図)
Z/(F1・F2)≧〔C +(Wc+We)g〕/B 2
T :想定荷重により計算される鉄塔上部からの引揚力(N)
Vc :コンクリート容積(m3)
Vc′:地表面下のコンクリート容積(m3)
Ve :基礎底面上の倒立截頭錐体の容積(m3)
〔数式:式3〕
〔数式:式4〕
γe :土壌の単位質量(kg/m3)(→解説60.1表)
γc :コンクリートの単位質量(kg/m3)
φ :引揚力に抵抗する土の有効角度(→解説60.1表)
g :重力加速度(m/s2)
F1(=1.5):荷重の不確実性に対する安全率(常時想定荷重に対するもの)
F2(=1.33):土壌の不確実性に対する安全率(常時、異常時想定荷重に対するもの)
ただし、(F1・F2)=2
t :地表面から基礎底面までの深さ(m)
Z :土の耐圧限度(N/m2)
C :想定荷重により計算される上部構造物から受ける圧縮力(N)
Wc:基礎コンクリートの質量(kg)
We:基礎底面上の土壌の質量(kg)
B 2:基礎の底面積(m2)
解説60.2図
この場合の基礎自重の取扱いについては、④解説までは引揚力算定において基礎自重も安全率2で除することとしていたが、土壌の支持力には不明確な因子があるものの基礎自重は引揚力に対する抵抗力として確実に見込めるものであることから、H10解釈において日本電気技術規格委員会規格 JESC E2001(1998)
「支持物の基礎自重の取り扱い」を引用し、基礎自重の取扱いを明確にするとともに、本条解説の引揚力の計算式を見直した。