電気設備の技術基準の解釈の解説
第97条(35,000Vを超える特別高圧架空電線と建造物との接近)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.145–147
〔解 説〕 本条は、特別高圧架空電線と建造物が接近する場合の規定である。なお、建造物と接近する場合は、本条のほかに、第96条に支線の施設を規定している。H23解釈で、使用電圧が35kV以下のものについては、第106条で規定することとした。建造物との離隔距離などについては第71条の解説、第1次接近状態及び第2次接近状態については第49条
第九号及び第十号の解説、特別高圧保安工事については第95条の解説を参照されたい。
第1項
第1項は、建造物に接近して施設される場合の離隔距離の規定である。
第二号は、R1解釈で新たに定めた規定であり、170kVを超える特別高圧架空電線との離隔距離を規定している。詳細は、日本電気技術規格委員会規格JESC E2012(2013)「170kVを超える特別高圧架空電線に関する離隔距離」を参照されたい。
第3項
第3項は、35kVを超え170kV未満の特別高圧架空電線が建造物と第2次接近状態に施設される場合の規定である。これは、過去の特認の基準を基にして電気技術基準調査委員会送電専門委員会で検討した結果によるものである。なお、第2次接近状態のなかには、特別高圧架空電線が建造物の上に施設される場合も含まれることは、第71条の解説で述べたとおりである。
元来、特別高圧架空電線が建造物のすぐ傍に施設されるということや建造物の上に施設されるということは好ましいことではない。つまり、建造物の火災による電線の溶断だけでなく、増築又はテレビアンテナの設置等の特別高圧架空電線路の保安を困難にするような事態が容易に予想される点からも、このような施設を避けることが望ましい。しかし、土地の取得難などの理由により、建造物に接近することがやむを得ないこともあるので、これを緩和している。したがって、用地の取得が困難な都市近郊に施設されることの多い170kV未満の特別高圧架空電線についてはこれを認めるが、重要な送電線が大半を占める170kV以上のものについてはこれを認めていない。
なお、第3項に関する基本的な考え方としては、電気技術基準調査委員会において、自衛上の措置は自主的判断に委ねるべきであるとの強い要望もあったので、下方建造物の火災による断線については、施設者が自衛上当然考慮すべきこととし、断線による供給支障等の影響についての判断は施設者に委ねている。また、同様の観点から保守上の難易についても施設者の自主的判断に委ねることとした。
したがって、本条は、特別高圧架空電線が建造物に与える危害防止についてのみ規定している。このような理由から本条では明文化していないが、建造物と第2次接近状態に施設されるのは、そこに施設しなければ、経済的、技術的に著しい負担がかかる場合に限ることが望ましく、特に建造物が密集しているような場所に施設することは避けることが望ましい。
第一号は、万一、火災が発生した場合に、爆発を生じ又は災害が拡大しやすい建造物(爆発のおそれがあるもの又は燃えやすい物質を多量に取り扱い若しくは貯蔵しているようなもの)(→第175条から第178条)については、接近しないこととしている。
第二号は、万一、断線地絡が発生した場合の危害防止のための規定であり、建造物の上面にある造営材のうち、屋根等の上部から見た投影面積の大半を占める主要な部分が、特別高圧架空電線と第2次接近状態にある場合について規定している。イは、断線地絡時の火災防止のための規定であり、当該部分に火災になりやすいかや葺屋根その他可燃性のもので葺かれた屋根を持つ建造物については、接近しないこととしている。瓦、スレート若しくは鉄板等の不燃性のもの又は自消性がある難燃性の硬質塩化ビニル波板等で葺かれた建造物は、接近を認めている。ロは、断線地絡時の危害防止のための規定であり、当該部分にD種接地工事を施せばよい。例えば、屋根が金属板張りの場合は、これを接地すればよく、瓦葺き等の場合では、雨とい、その他比較的面積の大きい金属製の部分に接地を施せばよい。
第四号は、第三号の第1種特別高圧保安工事のほか、電線にはアーマロッドを取り付け、さらに、がいしにはアークホーンを取り付けることとしているが、これは万一せん絡が起こってもアークにより電線が致命的な損傷を受けないようにするためである。架空地線を施設する場合は、アークホーン又はアーマロッドのいずれか一つを省略することができる。100kV以上の送電線の第1種特別高圧保安工事には、架空地線が必ず必要となるので、アークホーン又はアーマロッドのいずれか一つでよいこととなる。すなわち、雷による断線対策としてこれら三つのうちいずれか二つの対策を講じておくこととなる。なお、S57基準で圧縮型クランプ又はクサビ型クランプを使用して電線を引き留める場合には、アークホーンを取り付けるだけでもよいこととなったので、この場合は、圧縮型クランプ又はクサビ型クランプの使用が二つのうち一つの対策と解してよい。
電気技術基準調査委員会が44~77kV架空送電線路の雷害による断線事故について、昭和36~40年の5ヵ年にわたり、架空地線とアークホーンの有無による事故率を調査した結果は解説97.1表のようになり、架空地線とアークホーンがあるものの事故率が一番低い。
〔解説97.1表〕
本来、アークホーンはせん絡が発生した際にアークががいしに絡みつくことを防止するためのものであり、アーマロッドは振動による電線の疲労を防止するためのものであるが、電線の溶断防止にも効果があるのでこれを規定したものである。
なお、アークホーンを使用する場合、クランプと電線との接触部がせん絡電流により過熱し溶断した例も少なくないので、電線とクランプとの間の電気抵抗を極力小さくするために、電線保持の方法を考慮することが望ましい。アーマロッドを使用する場合は、電線の溶断試験の結果からみて支持点の両側に少なくとも1m程度の電線を保護できるようにすることが望ましい。
S57基準では、電線の大サイズ化などから、形状的にアーマロッドの取り付けが困難である圧縮型又はクサビ型のクランプを使用して電線を引き留める場合が多くなっていたが、これらのクランプは電線との接触面積が大きくとれ、雷によるクランプ内断線が皆無であったため、アーマロッドの省略を認めた。
第4項
第4項は、170kV以上の特別高圧架空電線における建造物との水平距離の計測基準点について規定したものである。ここで、火災により架空電線路の損壊等のおそれがないと考えられる外壁面から張り出した簡易な構造の物件の具体例としては、照明器具、屋外固定式カメラ、メーター設備、門扉・塀、看板、雨とい、クレーン設備、空調・換気設備、電気・ガス等の給排水設備、アンテナ設備、水道設備、窓に付帯した手すり・格子、物干し金具、出窓、雨よけ・オーニング、テラス、自転車置場、カーポート、玄関ポーチ、ウッドデッキ、ベランダ・バルコニー、軒・ひさし、スロープ、シャッター、配管・資材用の棚、屋外階段・はしご等の昇降設備、ダスト設備その他これらに類するものがある。(→解説97.1図、97.2図)
第5項
第5項は、一般にはほとんど考えられないが、第71条第2項の解説にあるような場合に関して、特別高圧架空電線と建造物との離隔距離を定めたものである。100kV未満の特別高圧架空電線にケーブルを使用する場合は、相互の離隔距離のみの規定とした(→第104条解説)。
解説97.1図
〔図:97.2〕