電気設備の技術基準の解釈の解説
第88条(特別高圧架空電線路の市街地等における施設制限)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.133–136
〔解 説〕 特別高圧架空電線路は、電圧が高く危険であるから、原則として、市街地のような人家の密集する土地に施設することを禁止している。
しかし、特別高圧架空電線路の建設当初に野原であったものが、都市の急激な膨張に伴い、周辺が市街地化してきている例が多く、このような場合、これを直ちに地中化し、又はルートを変更することは、経済的又は立地事情からも困難である実情と、架空送電線の保安上の信頼度も向上してきていることから、この解釈では、周辺が市街地化した場合に必要な改修基準を示し、第1項各号により施設する場合には例外としている。なお、従来、170kV以上の送電線路に関しては、超高圧送電線路として、電力系統上も重要なものであるため、市街地の火災等の際に電力供給支障が生じることも考えられ、また誘導障害の面からも通信障害の及ぶ範囲が大きいと考えられることから、市街地への施設を禁止してきた。しかし、170kV以上の送電線路は、既に市街地等への施設が認められている下位電圧の送電線路に比べて格段に保安及び供給上の信頼度が向上してきていること、誘導による通信障害については第52条において施設場所にかかわらずその防止が規定されていること、また電波障害についても、電線の太線化や多導体化等による抑制対策を図っており、送電線から発生する雑音レベルの大きさは170kV未満の送電線路と同程度となってきていることから、170kV以上の送電線路の周辺にまで市街地化が進展してきている状況を踏まえ、H13解釈において日本電気技術規格委員会規格 JESCE2010(2000)「特別高圧架空電線路を市街地等に施設する場合の施設要件」を反映し、170kV以上の送電線路の施設を認めた。
市街地に施設される特別高圧架空電線路は、S38工規において使用電圧が80kV未満のものまで認め、S40基準で100kV(80kVを100kVにしたことは数字の変更のみで実質的な変更ではなく、グリーンベルト内のみ170kV)未満まで、S43基準では170kV未満まで認め、H13解釈で電圧による施設制限が廃止された。
ここで、人家の密集した地域に特別高圧架空電線路を施設することは、本来好ましいことではないから、新たに特別高圧架空電線路を建設する場合は、あらかじめ十分な調査を行い、その対策を講じる必要がある。
なお、S47基準で、ケーブルを使用する場合(→第86条)は本条の適用を受けないこととした。また、22(33)kV配電を中心とする特別高圧架空配電が市街地を中心に現行6kV配電に代わる供給方式として新たに採用されてきたことに伴い、S57基準では特別高圧絶縁電線(→第5条)を使用する場合の市街地施設についての規定を追加した。
第1項第一号及び第二号は、170kV未満の送電線路を市街地に施設する場合の施設条件を示している。
第二号の電線の強さについては、従来、一応切れない太さとして5mmの硬銅線がとられていたが、S38工規で、特に安全度を必要とする場合(→第95条、第1種特別高圧保安工事)には、アークによる溶断等の特殊な場合を除けば、まず断線するおそれがないものとして、過去の実績から硬銅線で55mm2という値をとることにし、電圧が高くなるに従ってより高い安全性を確保するために強い電線を使用することとしている。
第二号の電線の地表上の高さとしては、市街地では、他の工作物と接近又は交差する機会が多く、更にクレーン作業の増加、火災時の消火活動における危険防止等を考慮して、最低地上高さを10mとした。なお、35kV以下の特別高圧電線に特別高圧絶縁電線を使用する場合は、ケーブルと裸線との中間値として位置付け、8mとした。
ハで支持物に木柱及び鋼板組立柱の使用を認めていないのは、他の支持物に比べて信頼度が低いこと及び火に対して弱いためである。
ニの「危険である旨の表示」については、35kV以下の特別高圧絶縁電線を使用する場合は、高圧配電線に準じ、S57基準で危険表示は行わなくてもよいこととした。なお、同一道路に高圧架空電線路と22(33)kV架空電線路とが施設される場合には、作業者の錯覚による危険を防止するため、22(33)kV配電線路の支持物には使用電圧等を表示することが望ましい。
ホは、径間が長いと弛度が大きくなり不確定要素が多く、不測の気象条件等(→第58条解説)により事故の確率が高くなることから径間を制限している。A種鉄筋コンクリート柱、A種鉄柱(→第49条)については、同じように施設するものであるので、まとめて示している。これらの径間は、従来から定められている経験に基づくものである。しかし、径間についても、送電線の水平間隔の決定と関連して研究が進み、S43基準では、これらの考え方を考慮して従来250mに制限されていた鉄塔の径間制限を400mとした。電線相互の水平間隔が4m以上であって、硬銅より線を使用する場合においては電線の断面積が55mm2以上であるときには、径間を400mとすることが可能となる。これは、電気学会の送電専門委員会でまとめた「架空送電線路の絶縁設計要綱」(昭和61年5月)において、風の息を考慮した水平線間距離の経験式より算定した値である。
〔数式:式1〕
C h :水平線間距離(m) Um:最高許容電圧(kV)
P :風の息に相当する風圧荷重(Pa) r:電線半径(m)
T :最高温度における送電線の水平張力(N) S:径間長(m)
上記の式は、電線の水平張力が一定であって、がいし連長がないものと仮定して算定された値である。等価風速8m/sとして、66kVの場合の水平線間距離を計算すると解説88.1図のようになり、電線の太さが55mm2以上で水平線間距離が4m以上の場合は400m以上にすることができることがわかる。
なお、88-3表では、日本電気技術規格委員会規格 JESC E2010(2000)「特別高圧架空電線路を市街地等に施設する場合の施設要件」を反映し、鉄塔に限り径間長を600mまで認めている。これは、170kV未満の送電線路についても、周辺が市街地化した場合に支持物の増設が困難な場合があることに配慮したものである。
解説88.1図
ヘは、電線を支持するがいし装置についての規定で、がいし装置の50%衝撃せん絡電圧の値が、近接する他の部分を支持するがいし装置の値の110%以上にすればよい点及びアークホーンを取り付けることをがいし装置の強化として認めている点については、第95条第1項第五号解説を参照されたい。
第三号は、170kV以上の送電線路を市街地に施設する場合の施設条件を示している。170kV以上の送電線路はその設備規模が大きく、万一支持物損壊等が発生した場合に危険を及ぼす範囲が大きいと考えられることから、170kV未満の送電線路に比べ厳しい施設条件としている。また、著しい供給支障の発生を避ける観点から、送電線路の回線数が2以上のもの又は当該線路が損壊しても系統切り替えが可能なもの等、直ちに電力供給を再開できる場合についてのみ施設を認めている。
がいし装置については、アークホーンを取り付けて沿面せん絡によるがいしの損壊を防止するとともに、電線の支持部は、耐張がいし装置では電線との接触面積の大きい圧縮型又はクサビ型クランプを使用し、懸垂がいし装置では電線にアーマロッドを取り付けることにより、アーク電流による電線支持部での電線溶断を防止することとしている。なお、この場合のアーク電流は、地絡あるいは短絡時に電線に流れる事故電流のことを指している。
支持物は最も信頼度の高い鉄塔に限定するとともに、径間長を600m以下に制限し、電線に鋼心アルミより線240mm2以上の引張強さ及び耐アーク性能を有するものを使用することにより、過去に経験した風圧荷重や最大級の着雪荷重にも耐え、かつ、短絡の可能性が低く、万一短絡が発生しても溶断するおそれがないよう施設することを求めている。さらに、架空地線を施設し雷撃による電線の損傷を防止し、径間内における接続を制限することにより、断線の危険性に対してより高い安全性を確保することとしている。
ここで、 短絡発生時の電線溶断の有無は電線の耐アーク特性と電流継続時間で決定されるが、電線の交流溶断限界特性(抗張力の20%程度の張力を加えた状態での断線限界)については、下記の式が提案されている。この計算式により算定した各種電線の溶断特性を解説88.2図に示すが、これにより電線溶断の有無を判定する場合には、直流成分(事故発生直前まで系統のインダクタンスに蓄えられていた電磁蓄積エネルギーの放出分)の影響を考慮する必要がある。
解説88.2図
系統で発生する短絡電流に対して、使用する電線の耐アーク性能が高く、保護装置の遮断時間が速い場合には溶断のおそれはないが、耐アーク性能が不足する場合や遮断時間が遅い場合には、電線により高い耐アーク性能を有するものを使用する又は保護装置の遮断時間を速くする等の対策が必要となる。
○裸硬銅より線(電力中央研究所第一研究所報告:送電用硬銅より線のアーク溶断特性)
〔数式:式2〕
t:溶断時間(秒)
A:導体断面積(mm2)
I:アーク電流(kA)
○鋼心アルミより線(電気協同研究第26巻第4号:送電用特殊電線)
〔数式:式3〕
t:溶断時間(秒)
A:導体断面積(mm2)
I:アーク電流(kA)
第2項の「市街地その他人家の密集する地域」とは、造営物が一様に存在する場合を想定しており、電線路の片側に造営物が集中し、電線路の経過地と他の側がほとんど田畑であるような、客観的に市街地その他人家の密集する地域ではないと考えられる箇所においては、この建ぺい率によらず、市街地その他人家の密集する地域に該当しないものとしている。一方、建ぺい率が解釈に示す値以下であっても、電線路の周囲に商店街、興行街、事務所街等が集中しており、客観的に市街地その他人家の密集する地域であると考えられる箇所については、市街地その他人家の密集する地域に該当するものとしている。また、建ぺい率の定義にある「造営物で覆われている面積」は、造営物の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はねだし縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては、その縁から水平距離1m後退した線)で囲まれた水平投影面積とすればよい。
なお、算定範囲は線路の両側に50m、線路方向に500mとった50,000m2の長方形の区域としているが、これは線路が直線の場合であって、線路に水平角度がある場合には、線路中心線上で500mとり、中心線の両側50mの線で囲まれる範囲と考えればよい(→解説88.3図)。
解説88.3図