電気設備の技術基準の解釈の解説
第58条(架空電線路の強度検討に用いる荷重)
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第1項
〔解 説〕 本条は、架空電線路の強度検討に用いる荷重について示している。風速については、気象官署において長年のデータ蓄積がなされていること、瞬間風速に比べてデータの変動幅が小さく風速分布を評価しやすいこと、強風時での風向・風速の変動が大きくなく、鉄塔自身や電線の揺れの影響を評価しやすいことなどから気象庁の地上気象観測統計にもとづく年最大10分間平均風速を用いることが妥当である。IEC60826(2017)、EN50341-1(2012)、建築基準法告示(平成12年建設省告示第1454号)においても鉄塔あるいは構造物に対する基準風速として10分間平均風速が用いられている。
第1項各号は、荷重の算定方法又は各種荷重の定義である。
風圧荷重は、架空電線路の強度検討において最も重要な要素であり、イにおいて風圧荷重の種類及びそれらの風圧荷重の算定基礎となる受風対象物ごとの風圧を示し、ロ及びハにおいて甲種、乙種及び丙種の風圧荷重の地域ごとの選び方、ニにおいてそれらの風圧の加わり方を示している。
概念的にいえば、甲種風圧荷重は高温季(夏から秋にかけての季節)において風速40m/sの風があるものと仮定した場合に生じる荷重、乙種風圧荷重は氷雪の多い地方における低温季(冬から春にかけての一般的に強風はない季節)において架渉線に氷雪が付着した状態で甲種風圧荷重の1/2の風圧を受けるものと仮定した場合に生じる荷重、丙種風圧荷重は氷雪の多くない地方における低温季や人家が多く連なっている場所(一般的に風速は減少する場所)等において、甲種風圧荷重の1/2の風圧を受けるものと仮定した場合に生じる荷重、着雪時風圧荷重は大型河川横断部とその周辺等地形的に異常な着雪が発達しやすい箇所において架渉線に雪が付着した状態で甲種風圧荷重の0.3倍の風圧を受けるものと仮定した場合に生じる荷重である。
58-1表の「腕金類」とは、アームタイ、ブレーシング(腹材)、腕金、吊材、腕金支材等を指しており、鉄塔及び鉄柱では支持物の構成材となる。
鉄塔と鉄柱の区別については、鉄塔では各主柱ごとに、鉄柱では各主柱共通に1個の基礎を持つことを標準としている。
なお、鉄柱は鉄塔に比べて一般に根開きが狭少で、かつ、根開きと高さの比率が著しく小さく、鉄塔は原則として支線で補強できないが、鉄柱は支線で補強しても差し支えない等の差もある。しかし、型などによって明確には分けることができないので、本解釈における他の条文では、鉄塔の設計条件を満たすものが鉄塔であり、鉄柱の設計条件に適合するものが鉄柱と考えて支障ない。
「構成材の垂直投影面積」とは、垂直面に対する構成材の投影面積であるが、風圧の計算における受風面積は、支持物では結構面の傾斜を無視して結構一面のみの垂直投影面積をとり、架渉線、がいし及び腕金類も垂直投影面積をとっている。また架渉線に限って、被氷の厚みにより線条の直径が増大したものと考えて計算することとしている。なお、支線の風圧は考えない。木柱及び架渉線の垂直投影面積を解説58.1図及び解説58.2図に示す。
解説58.1図 解説58.2図
腹材が前後面で重なる場合と重ならない場合については、主な鉄塔及び鉄柱の結構としてダブルワーレン、シングルワーレン、プラット、K(逆K)、ブライヒ(ツヅミ)の5種類があり、その使用場所は解説58.1表に示すとおりである。
このうちシングルワーレンは、四角及び矩形の支持物では、前面と後面で互いに相重ならないが、鉄塔ではこの結構は鉄塔の上部に使用されるので、風圧倍数(鉄塔に加わる風圧力と風上結構一面のみの風圧力との比)及び受風面積が共に小さいから特に風圧に関しては考慮しない。鉄柱では、風圧倍数及び受風面積が鉄塔の場合とは違うので、後記のように風圧に関して考慮することとしている。
〔解説58.1表〕
58-1表に甲種風圧荷重における構成材の種類ごとの単位面積当たりの風圧を示しているが、この風圧決定の考え方は次のとおりである。なお、今後これら以外の構成材の出現も考えられることから、H9解釈で58-1表によらず、実際の状態と相似となるような条件下で実施した風洞実験等に基づき適切に風圧値を算定した場合はこれを認めることとした。
a.支持物:風圧及び風圧力は、一般に次の理論式によって求められる。
〔数式:式1〕
p:風圧(Pa) P:風圧力(N)
ρ:空気密度(kg・sec2/m4)… 高温季において上陸主要台風時の記録による平均大気状態(気圧960×102Pa、温度23℃)の時の値0.115kg・sec2/m4をとり、低温季において標準大気状態(気圧1,013×102Pa、温度15℃)の0.125kg・sec2/m4をとる。
V:設計風速(m/sec)
C:空気抵抗係数 … 受風体の形状、大きさ、傾斜、面の粗滑度によって異なるばかりでなく、その形状によっては風速V の大小によっても変化する係数で、風洞実験の結果によって定まる。
A:受風面積(m2)
本来、実際に鉄塔に加わる風圧についても、本式に基づいて、その都度適切に算定することが望ましいが、風速が高さごとに異なることや空気抵抗係数が高さ方向の部分ごとに異なることなどから、非常に煩雑なものとなる。そこで、58-1表に実在する鉄塔における鉄塔主体の受風面積及び鉄塔の充実率(節間を占有する部材の面積と節間面積との比)の実態調査から、これに対する空気抵抗係数を求め、かつ、基準風速40m/secに上空における風速の逓増を考慮して算定した風圧により、地表面を支点に生じるモーメントと同じモーメントを生じるような鉄塔主体全体に対して一様な等価風圧を求めた風圧値を与えている。
本条では、一般に使用される塔高約40mの送電用鉄塔に対する風圧を、高温季における形鋼鉄塔では2,840Pa、鋼管鉄塔(単柱を除く。)では1,670Paと定めており、また、S61基準で環境調和鉄塔として採用されるようになった単柱鉄塔のうち丸形のものは780Pa、六角形又は八角形のものは1,470Paと定めている。なお、腕金類は管状ではなく風圧抵抗が大きいので、その他のものと同様に2,840Paとしている。高い鉄塔の場合、例えば超高圧鉄塔のような規模の鉄塔に対しては、定められた風圧よりも高い値をとることが望ましく、JEC-127-1965では、塔高によって解説58.2表の値をとってもよいとしている。なお、ここでいう超高圧鉄塔とは、220kV以上の鉄塔を意味している。
ボルト締めの結構の鉄柱に対しては、鉄塔に比較して柱体が細く、充実率が大きいため、空気抵抗係数は鉄塔の場合よりかなり減少することが明らかなので、腹材が前後面で重なる場合は2,160Pa、腹材が前後面で重ならない場合は腹材の風圧増加を考慮して2,350Paとした。鋼管で構成された鉄柱の場合も、前記と同様の理由で1,470Paとしたが、鋼管の場合は前面の影響を受けることが少ないので、前後面の腹材が重なる場合も重ならない場合も一律の風圧としている。
三角形又はヒシ形の鉄柱は前後面で重なることはないので、これも一律の風圧としている。丸型の鉄柱、鉄筋コンクリート柱及び木柱についても、それぞれ風洞実験値から算出したものである。
〔解説58.2表〕
b.架渉線:風洞実験の結果から架渉線の空気抵抗係数C を1とし、高温季の空気密度ρ=0.115kg・sec2/m4とすると、風速40m/secでは902Paの値が得られる。
架渉線の風圧は、鉄塔と同じく平均地上高の増大とともに増加することになるが、一方で、架渉線の規模効果により相当大幅な風圧逓減も認められている。したがって、架渉線の標準的な風圧としてはこの効果の一部も期待して広範囲に適用できるものとして、一律に980Paをとっている。なお、鉄塔の高さが著しく高くなる場合(おおむね80mを超えるような場合)については、必要に応じて定められた風圧よりも大きい値をとることが望ましい。
多導体で電線の風の方向に並列(3導体の場合には、2条だけが並列になる場合の状態)に架線される場合の風圧は、風洞実験の結果から電線相互の干渉による低減を考慮して、その全線について単導体の90%としている。
多心型電線が受ける風圧は、その構造上電線の垂直投影面の形状が一様でないため、一般の円形電線が受ける風圧とは異なり、また電線の受風面積の求め方も円形電線の場合より複雑であるが、電気協同研究会アルミ専門委員会では、実用的な風圧荷重の求め方として次の方法を示している。
①高温季においては、電線外径として多心型電線の長径をとり、これに円形電線と同じ風圧を適用する。
②低温季においては、多心型電線の長径にして円形電線と同じ厚さの着氷及び同じ風圧を適用する。
③このときの多心型電線の長径のとり方は、解説58.3図によればよい。
解説58.3図
c.がいし、腕金類:がいしに加わる風圧は、がいし連の傾斜による風圧の増加を考慮したもので、風洞実験の結果から定めているが、形状及び取付け方法により差異があり一律ではない。しかし、形状及び取付け方法が風圧に与える影響は、全体からみれば小さいので大略の値を示している。250mm懸垂がいしの風圧は30N/個である。がいし取付け金具の風圧は、それが重要視されるような線路でとることもある。なお、同一がいしを風の方向に沿って互いに接近して2連並列に使用する場合(前後に重なる場合)は、1連のみの風圧をとり、これと直角の方向の風を考慮するときは、2連分の風圧をとる。
腕金類は、結構の場合は鉄柱のシングルワーレン結構以外の場合と同じ値をとり、単一材の場合は鉄塔の風上結構一面の風圧値の約5%減の値をとる。
なお、鉄柱、鉄筋コンクリート柱又は鉄塔の設計基準では、甲種風圧荷重を高温季標準風圧、乙種風圧荷重を低温季標準風圧と規定しており、丙種風圧荷重については特に規定していない。高温季に甲種風圧荷重をとるのは、一般に我が国では、高温季に最大風速を生じるからである。
ロは、各種風圧荷重の計算を実際に適用する場合の規定である。58-2表で「氷雪の多い地方」というのは、その地方の地方気象台の記録により判断すべきであるが、大体の目安としては、従来から北海道、青森県、秋田県、山形県、岩手県、宮城県、福島県、新潟県、長野県、富山県、石川県、福井県、岐阜県北部、滋賀県北部、京都府北部、兵庫県北部、鳥取県、島根県及びその他土地が高く寒気が厳しい地方並びに栃木県、群馬県、茨城県、東京都、神奈川県、山梨県等電線に氷雪の付きやすい地方を対象に考えている。また、「海岸地その他の低温季に最大風圧を生じる地方」についても、地方気象台の記録により判断すべきであるが、大体の目安として従来から北海道、青森県、秋田県、山形県、新潟県などの地方を対象に考えている。
実際の設計では、氷雪の影響は一様に定められず、この解釈で指定する地域外でも電線路のルートによっては、氷雪が付着するものとして計算する必要のある場合もある。
甲種又は乙種風圧荷重は、国内一般の基準であるが、九州の南端、四国の南端、潮岬、房総突端、銚子付近のように海岸に突出した所では台風性暴風に襲われる回数が多く、最大風速も著しく大きく、また上空部の風圧の様相が十分明らかでない。そこで、海岸に近い地点に高い鉄塔を施設する場合は、その地方の気象観測所の記録を参照し、実際には甲種風圧荷重を適当に増加している。
ハは、人家の多く連なる場所では風速が一般に減衰することから低高圧架空電線路の支持物及び架渉線、35kV以下の電線に特別高圧絶縁電線又は特別高圧架空ケーブルを使用する特別高圧架空電線路の支持物、架渉線並びに特別高圧架空電線を支持するがいし装置及び腕金類に丙種風圧荷重、つまり甲種風圧荷重の1/2を適用すればよいとしている。22(33) kV特別高圧架空電線路は、一般的に支持物には鉄筋コンクリート柱を使用し、高圧配電線路と同様の装柱形態であることから、6kV配電に代わる新しい供給形態として22 (33) kV配電が採用されてきており、S47基準で35kV以下の特別高圧架空電線路に併架する低高圧架空電線及び35kV以下の特別高圧架空ケーブル(→第86条解説)とそのちょう架用線に、S57基準で35kV以下の特別高圧架空電線として使用する特別高圧絶縁電線(→第5条解説)に、更にH9解釈で35kV以下の特別高圧架空電線路の支持物、架渉線、がいし装置及び腕金類にも丙種風圧荷重を適用できることとした。
ニは、このような風圧が支持物の種類によってどのように加わるかを規定したもので、支持物の強度を計算するに当たっては、支持物の各部分についてこのように仮定した風圧が同時に加わるものと考えた場合に、その部分に生じる応力を求める。例えば、鉄塔のある部材の風圧に対する強度は、その部材はもとより他の部材、がいし、架渉線等に風圧が同時に加わった場合(ニの各場合、すなわち電線路方向及び直角方向の各場合)に、その部材に生じる応力と部材の強さの比較によって決まるものである。この場合、電線路方向及び直角方向の各場合における風圧荷重を計算し、いずれの風圧荷重にも耐える部材である必要がある。
なお、風圧荷重についての詳細は、電気協同研究会第20巻第四号「送電用大型鉄塔」を参照されたい。
第二号から第十四号は、荷重についての説明である。荷重は、大別して垂直荷重、水平横荷重(線路方向と直角の方向に働く荷重)及び水平縦荷重(線路方向に働く荷重)の3種類であり、以下これらについて説明する。
(a)垂直荷重:支持物の自重、架渉線及びがいし装置の重量、架渉線の被氷重量、また電線路に甚だしく垂直角度がある場合にはそれによる垂直荷重等であって、各垂直荷重の計算要領を示せば、次のようになる。
①支持物の自重:支持物自体の重量であり、既設の支持物に対し電線の張替え、位置変更等のために支持物の強度を検討する場合には、その支持物の自重は容易に算定できるが、新設の場合は支持物重量の推定が必要になる。支持物重量の推定には、既設電線路のこれと類似の設計条件で設計された支持物の質量を十分検討して推定する。
②架渉線の重量
Wc=Wc′×S×g(N)
③がいし及び附属金具の重量
W1=(aN+I)×g(N)
④架渉線の被氷重量(Wi)又は着雪重量(Wj)
Wi=9πt (d+t)×S×10-4×g(N)
Wj=6πt (d+t)×S×10-4×g(N)
⑤電線路に垂直角度がある場合の影響(垂直角度荷重)
Vt=T(tanδ1+tanδ2)(N)
この場合、架渉線の支持点に生じる垂直荷重の総和Vは、次式により求められる(→解説58.4図)。
V=Wc+W1+Wi+Vt
ただし、Wc’:架空線単位質量(㎏/m)、S:荷重径間1/2(S1+S2)(m)、g:重力加速度(9.80665m/s2)、N:がいし個数、a:がいし1個の質量(㎏)、I:がいし金具の質量(㎏)、d:架渉線の外径(mm)、t:被氷厚さ(mm)、T:
架渉線の想定最大使用張力(N)、δ1、δ2:支持物前後の径間の垂直角度とする。
解説58.4図
(b)水平横荷重:支持物自体の風圧、架渉線及びがいし装置の風圧、電線路に水平角度がある場合には架渉線の張力により生じる水平横分力、架渉線の断線により生じるねじり力等であって、各水平荷重の計算要領を示せば、次のようになる。
①支持物の風圧荷重:支持物の自重と同様に設計当初推定するものであるが、支持物の装柱を前もって定め、装柱によって定まる結構について、各節間ごとに受風面積を計算し(鉄筋コンクリート柱では若干異なる。)、これに標準風圧値(→58-1表)を掛け、支持物主体部節点における集中荷重とみなして応力の計算を行うものである。
②水平角度荷重:電線路に水平角度があることにより生じる荷重である。
③架渉線の不平均張力により生じるねじり力:架渉線の断線、その他により腕金の先端において不平均張力を生じるときは、これにより支持物の四面にねじり力が作用する。
(c)水平縦荷重:水平縦荷重は、支持物の風圧荷重と架渉線の不平均張力及びこれにより生じるねじり力である。支持物自体の風圧及びねじり力については前記の水平横荷重の場合と同様である。
(d)常時想定荷重、異常時想定荷重及び異常着雪時想定荷重:B種鉄柱、B種鉄筋コンクリート柱及び鉄塔に用いる強度検討の荷重の組合せを示したものである。
(e)垂直角度荷重:電線路に著しい垂直角度がある場合に生じる架渉線張力の垂直分力であり、架渉線の張力により決まるものであるが、便宜上想定最大使用張力を用いて次式により算出する。
Vt=T(tanδ1+tanδ2)(N)
ただし、T:架渉線の想定最大使用張力(N)、δ1、δ2:支持物前後の径間の垂直角度(°)とする。
(f)水平角度荷重:電線路に水平角度があることにより生じる荷重であり、架渉線の張力に基づき次式により算出する(→解説58.5図)。
H=T1sinα+T2sinβ
特にT1=T2、α=β=θ/2のときに、H=2T1sinθ/2となる。
ただし、H:水平角度荷重(N)、T1、T2:架渉線の張力(N)、α、β、θ:水平角度(°)とする。
解説58.5図
(g)支線荷重:鉄柱又は鉄筋コンクリート柱で支線を用いる場合に支線の張力の垂直分力により生じる荷重であり、次式により算出する。
Vs=Scosδ
ただし、Vs:支線荷重(N)、S:支線の張力(N)、δ:支持物と支線のなす角(°)とする。
解説58.6図
(h)被氷荷重:氷雪の多い地方において、架渉線に付着した氷雪の重量をいい、架渉線各条について、比重0.9、厚さ6mmの氷雪が付着するものとしているが、これは氷雪が多い地方の標準的なものである。
多雪地では、無風状態で、架渉線に外径100~250mm程度の雪(比重0.1~0.4)が付着する等のこともあるので、重要線路等では個々の設計に当たって検討している。着雪は、降雪地域一般に起こる現象で、風速約5m/s以下で気温0℃前後の降雪時に発生することが多い。着氷は冬季に季節風を直接受ける山岳地帯の尾根などにおいて発生し、強風下でも容易に脱落しない。
なお、氷雪に対する対策としては日本電気技術規格委員会規格 JESC E0004(2007)「配電規程(低圧及び高圧)」(H社)日本電気協会技術規程 JEAC 7001-2007)の付録「XIV 配電線路雪害対策」を参照されたい。
(i)着雪荷重:大型河川横断部とその周辺等地形的に異常な着雪が発達しやすい箇所に特別高圧架空電線路を施設する場合に考慮する荷重で、架渉線に付着した着雪重量をいう。着雪による設備被害事故は、ごくまれな異常気象条件において発生するものであることから、従来、通達により運用していたものをH9解釈で追加したものである。
(j)不平均張力荷重:想定荷重に応じた不平均荷重を示しており、異常時想定荷重における架渉線の断線条件は
JEC-127-1965「送電用鉄塔設計標準」に基づいて定めたものである。相という表現を用いたのは多導体のものを含めたためである。架空地線については、電線とは別に考え、架空地線は1条が切断するものとして、電線との組合せは考慮していない。多導体の切断については、引留め型の鉄塔は全条が切断するものと考えているが、引留め型以外の鉄塔では多導体のうち2条が断線するものと考えている。
断線の組合せを図示すると、解説58.7図のようになる。断線条件は、従来に比べて緩和されているが、これは架空電線路の用地取得が困難なため4回線以上は多回線鉄塔にならざるを得なくなり、この場合に従来の断線条件では非常に厳しすぎること、また100mm2以上の太さの電線は実績からしてもほとんど断線をしないという理由からである。第1項第十三号ハにおける「架渉線の想定最大張力」とは、気温0℃の状態で架渉線に着雪重量及び着雪時風圧荷重との合成荷重が加わった場合の張力のことである。
解説58.7図
(k)ねじり力荷重:架渉線の断線その他により腕金の先端に生じる不平均張力によるねじり力であり、四角鉄塔及び矩形鉄塔では、次式により計算する(→解説58.8図)。
〔数式:式2〕
ただし、P:不平均張力(N)、q、q1、q2:ねじり力荷重(N)とする。
なお、矩形鉄塔の場合には、q1、q2による応力の差が主柱材に残留することとなる。
解説58.8図
第2項
第2項は、架渉線の配置が対称でない場合は、常時においても垂直偏心荷重が加わることから、この荷重を加算することとしている。
第3項
第3項は、異常着雪時の想定着雪厚さについて示しており、着雪量を軽減することができる「有効な難着雪対策」としては、次のようなものがある。なお、「着雪マップ」については、第59条第5項第四号の解説を参照。
(1)難着雪装置の装着
① 難着雪リング
② スパイラルロッド
③ 電線表面の雪付着力低減対策(テフロンテープの巻付けなど)
④ 架渉線のねじれ剛性の強化(カウンタウェイト、スペーサの取付けなど)
⑤ 上記 ① ~ ④ の組合せによる対策
(2)融雪電流対策
① 系統の切替、短絡による融雪電流の通電
② 発熱体(低キュリー材を電線に巻き付けるなど)
(3)難着雪型電線
・ ヒレ付電線
第4項
第4項は、鉄塔に対する風圧荷重の算出及び鉄塔に対して台風等による強風が局地的に強められるおそれがある特殊地形箇所の定義について示している。鉄塔にあっては甲種風圧荷重と、地域別基本風速における風圧荷重を比べて、大きい方の荷重を用いて強度検討を行うこととしている。また、令和元年台風15号による鉄塔倒壊事故の検証により地域の実状を踏まえた基準風速を導入することとし、「地域別基本風速」を適用することとした。地域別基本風速は、風向別基本風速を用いることとするが、風速の考え方の詳細については電気学会電気規格調査会テクニカルレポートJEC-TR-00007-2015「送電用鉄塔設計標準」を参照されたい。
鉄塔に対して台風等による強風が局地的に強められるおそれがある特殊地形箇所の定義については、過去発生した鉄塔倒壊事故を踏まえ、台風通過等に伴って強い局地風の吹く地域又は半島部等地形条件から台風等による強風が著しく収束する特殊な地形を整理したものである。第一号は山岳部、第二号及び第三号は海岸部、第四号は岬・島しょ部、第五号は山岳部と急斜面を指している。
〔図:p101-1〕
第一号から第四号は平成3年台風19号による鉄塔倒壊事故の検証により特殊地形箇所としてまとめられたものであり、該当箇所については対策がとられ、以後事故の発生がなかったもの(万一、事故が発生した場合は見直しを図る)。また、令和元年台風15号による鉄塔倒壊事故の検証を受け第五号が追加された。
設計手法の詳細については、日本電気協会技術規程 JEAC 6001-2018「架空送電規程」、電気学会電気規格調査会テクニカルレポート JEC-TR-00007-2015「送電用鉄塔設計標準」、令和2年1月21日付鉄塔総点検指示書を参照されたい。
第5項
第5項は、鉄柱に対しても設計風速を算定する際に、第4項で示している鉄塔の場合と同様に、甲種風圧荷重と、地域別基本風速に相当する風圧荷重を比べて、大きい方の荷重を用いて強度検討を行うことしているが、(一社)日本電気協会電気技術規程(JEAC 7001-2017)「配電規程」で示されている強度計算により設計された鉄柱である場合は、地域別基本風速に相当する風圧荷重と比較した場合でも十分な強度を有することからこれを認めるものである。
本条に示す荷重の他に省令第32条では、地震による振動、衝撃荷重を考慮すべきことを規定しているが、従来より、一般の送電用支持物は地震荷重よりも風圧荷重の方が大きいと評価されており、平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震においても、送電用支持物については地震動による直接的な被害は見られなかった。しかし、本地震は過去我が国で発生した地震の中でも最大級であったことから、改めて送電用支持物の耐震性を確認すべく、一般的電圧階級における代表型を対象に、動的な地震応答解析を実施した。その結果、これらの送電用支持物は、兵庫県南部地震で観測された地震動に対しても耐え得ることが確認された(解析内容については、日本電気協会技術規程 JEAC 6001-2008「架空送電規程」を参照されたい。)。
以上のことから、本解釈では送電用支持物における地震荷重については、特に定めておらず、したがって、地震荷重に対する強度計算も通常の場合省略してもよい。
以上、支持物に加わる荷重について説明したが、この他の事項について補足すれば、次のとおりである。
(a)異常時想定荷重の適用除外 鉄柱及び鉄筋コンクリート柱では異常時想定荷重を考慮せず、したがって架渉線の断線を考えていない。これは、架渉線が断線したときの被害の影響範囲が大きい箇所その他電線路の重要な箇所には、鉄塔を使用することが一般的なためである。
(b)部材の安全率 本解釈では支持物を通じての安全率を規定していない。しかし、第57条に規定する部材の許容応力にこの考え方を含めており、部材を結構した場合も安全率の低下はないものとしている。すなわち、鉄柱又は鉄塔の構成材としての一般構造用圧延鋼材のうちSS400を例にとると、JISではその引張強さσBを400(N/mm2)と規定しているのに対し、第57条、57-1表では 許容引張応力を引張強さの0.7/1.5倍としている。いわゆるこの逆数1.5/0.7≒2.1が部材の安全率で、異常時想定荷重の場合には、1.5/0.7×2/3=1/0.7≒1.4となる。
(c)支持点の移動等 第1項第十三号ロ(ハ)の支持点の移動とは懸垂がいしのがいし連が流れることが可能な場合をいい、支持点でのしゅう動とは懸垂クランプのように線路方向での移動が可能な場合をいう。
(d)腕金類に対する緩和の除外 本条に規定する鉄塔の異常時想定荷重においては、腕金類以外の部材では部材応力の2/3を考えているが、腕金類の部材では架線工事の際等に応力が大きくなることが考えられるので、特に100%の異常時想定荷重をとることとした。