第4条(支持物の構造等)
発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令及びその解釈に関する逐条解説
掲載版 令和8年4月2日このページ
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① 解釈第3条の解説(設計荷重)
日本産業規格JIS C 8955(2017)に規定された風圧荷重、積雪荷重及び地震荷重はそれぞれ、建築基準法施行令第87 条、第86 条、第88 条を参考に設定されている。これらの荷重の再現期間は50 年を想定しており、「当該支持物の設置環境下において想定される各種荷重」についてもこれと同等の荷重を設定することが望ましい。なお、地上に施設される発電用太陽電池設備において、アレイ面の下端部に作用する積雪による沈降荷重等については、「地上設置型発電システムの設計ガイドライン2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)の技術資料が、傾斜地に施設される場合の風圧荷重については、「傾斜地設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)、フレキシブル太陽電池に作用する各種荷重及び耐力設計の考え方については「フレキシブル太陽電池を利用した太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2026)が参考となる。また、水面等に施設される発電用太陽電池設備の支持物(フロート、架台、係留索、アンカー:解説1図参照)については、地上や建築物上に施設される発電用太陽電池設備とは異なる荷重を想定する必要があることから、解説1表や「水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)を参考として考慮すべき荷重を検討する。
解説1図 水面等に施設される発電用太陽電池設備の支持物
② 解釈第4条の解説(支持物の架構)
支持物の架構は、解釈第3条での荷重に対して倒壊、飛散しないだけでなく、設計上想定している変形量、移動量(水面等に施設される発電用太陽電池設備の場合は水位、水流、風によるフロートの移動量)を超えないこと要求している。
支持物の安定については、下式の不静定次数の計算式を用いることによって、簡易判別するこができる(解説2図)。ただし、この式は一時的な判別に使用されるものであり、3 次元的な架構モデルや特殊な接合部を有するような場合には判別できないことがあるため、構造解析プログラム等で確認することが望ましい。
m=(n+s+r)-2×k
m:不静定次数 n:支点反力数 s:部材数 r:剛接数 k:接点数
m≧0 の場合 : 安定(静定・不静定)
m<0 の場合 : 不安定
解説2図 不静定次数の算定例
③ 解釈第5条の解説(部材強度)
支持物に使用される部材は、解釈第3条の設計荷重に対する許容応力度設計を要求されているため、再現期間50年に相当する荷重に対して各部材は損傷および塑性変形しない強度を確保する必要がある。細長い部材や材厚が小さい部材に圧縮力や曲げモーメントが作用する場合には、曲げ座屈、横座屈、局部座屈等が発生するおそれがあるため、座屈を考慮した許容応力度の設定が求められる。また、部材の曲がりやねじれ等の変形が大きい場合には、支持物の構造安全性を損なうことがあるため、それらを考慮して設計することが必要である。許容応力度の設定については、以下に示す基規準・指針等が参考になる。
・「鋼構造許容応力度設計規準」(日本建築学会)
・「軽鋼構造設計施工指針・同解説」(日本建築学会)
・「アルミニウム建築構造設計規準・同解説」(アルミニウム建築構造協議会)
・鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説(日本建築学会)
また、太陽電池モジュールの構成部材のうち荷重を負担する部材(ガラス面、フレーム)についてもこれに準じた強度を確保する必要がある。
④ 解釈第6条の解説(使用材料)
支持物に使用する材料は、安定した強度特性を有することを要求されており、日本産業規格(JIS)、日本農林規格(JAS)、国際規格(ISO)等に規定された材料を使用することが望ましい。海外規格の材料を使用する場合には、その強度特性を明確にしたうえで設計条件に適合していることを確認する必要がある。
鋼材やアルミ合金材など、熱処理した材料を使用する場合は、熱処理後の材料特性(強度、延び等)を考慮して設計する。また、腐食、腐朽等による経年劣化しにくい材料の使用、又はメッキ等の劣化防止のための処理を施した材料の使用を要求している。水面に施設されるフロート等に使用される樹脂材料等についても劣化しにくい材料の使用又は劣化防止のための措置が必要となる。
⑤ 解釈第7条の解説(接合部)
対象となる接合部は、太陽電池モジュールとその支持物に作用する荷重を地盤や建築物等に伝達するための全ての接合部であり、部材間を接合するボルト類だけでなく、接合プレート、押さえ金具、クランプ等の接合部材、太陽電池モジュールを支持物に固定する際に用いられるクリップ金具も含まれる。これらの接合部材についても許容応力度設計を行ない、安全性を確認する。また、架構の変形に伴う接合部でのずれや外れが生じないことについても確認する必要がある。構造計算による確認が難しい場合は、載荷試験によって部材間の存在応力を確実に伝達できる性能を有していることについて確認する。その際、強度のばらつき(いわゆる2σや3σなどの信頼区間)を考慮して接合部の性能を評価すること。
⑥ 解釈第8条の解説(基礎およびアンカー)
土地に自立して施設される支持物の基礎が沈下、浮上がり、水平移動すると支持物全体の損壊に発展するため、基礎は上部構造から伝達される荷重に対して十分な抵抗力を有していることが望ましい。「地上設置型発電システムの設計ガイドライン2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)の技術資料においては、太陽光発電設備に使用される杭基礎の抵抗力が、建築物の杭基礎の設計に使用される計算式(小規模建築物基礎設計指針、日本建築学会)によって算定される抵抗力を下回る場合があることを指摘している。そのため、杭基礎の抵抗力は載荷試験(杭が打設される地盤における載荷試験)によって確認することを推奨している。また、水面に施設されるフロート群を係留するためのアンカーについても上述の杭基礎と同様、載荷試験によって確認することが望ましい。このときフロート群に接続された多数の係留索には荷重が均等に作用しないことが考えられるため、アンカーは偏りを考慮した荷重に対して十分な抵抗力があることを確認する必要がある。さらに、係留索、フロート及びこれらの各接合部についても、偏りを考慮した荷重に対する配慮が必要である。こうした設計を行う際には、「水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)の10.係留設計が参考となる。
⑦ 解釈第3条~第8条の解説解釈第3条~第8条に示された要求性能に適合する設計を行う際には、「建物設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)、「地上設置型発電システムの設計ガイドライン2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)、及び解説2表に示す規準・指針が参考となる。また、設置形態別に「傾斜地設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)、「水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)、「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2025)、「フレキシブル太陽電池を利用した太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2026)が参考となる。なお、建築物に付帯する太陽電池発電設備については、この解釈での要求事項に加え、建築設備として建築基準法施行令第129 条の2 の3 に規定する構造強度も満たすこと。
⑧ 解釈第9条の解説(支持物の標準仕様)
支持物の標準仕様は、産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会の審議を踏まえ、平成29 年及び令和元年に電気設備の技術基準の解釈第46 条第3 項として追加されたものである。発電用太陽電池設備の支持物については平成18 年から電気設備技術基準の解釈第46 条第2 項で規定していたが、強度計算を行っていないなどその規定を満たさない施工等により、公衆安全に影響を与える重大な損壊被害(平成27年8 月に九州で発生した台風15 号によるパネル飛散や架台倒壊等)が発生した。このような状況に鑑み、基準風速や降雪量など諸条件を満たす場合は、強度計算を実施せずとも必要な強度等を確保できるよう、地上設置型の設備に適用できる標準仕様を規定したものである。なお、当該標準仕様に準拠すれば強度計算を要しない前提であることから、施設する場所の条件に左右されないように安全率を大きく設定するため、風荷重には、最新の知見を生かして裕度を持たせた。また、標準仕様中、コンクリート強度Fcは平成12 年建設省告示第1450 号に定める許容応力度を有するものをいい、N値は、JIS A 1219(2013)に規定される測定方法を用いる。なお、本標準設計で使用している「N値=3」とは、発電用太陽電池設備を施設する場所が柔らかい粘土質であることを表している。
⑨ 解釈第10条の解説(追尾型太陽電池発電設備)
追尾型太陽光発電設備は、アレイ面の方向を変化させるための追尾システムの駆動部(トラッカー)をもつため、一般的な地上設置型太陽電池発電設備より構造設計上の考慮事項が多くなる。また、下図に示す1 軸追尾型より2 軸追尾型のほうがアレイ面を回転させる機構がより複雑になるが、ここでは両者を対象としている。
図 1軸追尾型と2軸追尾型の例
アレイ面の姿勢の変化は、風圧荷重や積雪荷重を大きく変化させるため、アレイの支持物とトラッカーは、あらゆる姿勢において安定であることが要求される。風圧荷重に注目した場合、アレイ面を水平にすることによって設計荷重の低減を図ることができる。一方、積雪荷重に注目した場合には、アレイ面を鉛直に近づけることで積雪荷重を低減することができる。そのため、多くの追尾型太陽電池発電設備では風速や積雪量の計測システムを付加し、アレイ面の姿勢制御を行って支持物やトラッカーの設計荷重の低減を図っている。風圧荷重や積雪荷重を低減させる姿勢をここでは「退避姿勢」と定義した。
解釈第10条第一号では、アレイ面の姿勢によって、風圧荷重や積雪荷重は大きく変化するため、トラッカーでの可動範囲を明確にしたうえで、制御不能時においてもストッパーやリミットスイッチなどによってその範囲を超えることがないようにすることを要求している。
第二号では、支持物及びトラッカーの設計荷重は解釈第3条に規定する荷重を基本としている。ただし、日本産業規格JIS C 8955(2017)に示された風圧荷重及び積雪荷重はアレイ面に対して一様な荷重が与えられるが、アレイ面に作用する実際の荷重には偏りがあり、トラッカーや支持物の設計においては荷重の偏りによるモーメントの考慮が重要であるため、ここではアレイ面の荷重の偏りを考慮した設計を要求している。風圧荷重の偏りについては、風洞実験によって確認することを推奨する。積雪荷重の偏りについては傾斜したアレイ面での下端部付近での荷重増加や軒先荷重を考慮する必要がある。軒先荷重については「地上設置型発電システムの設計ガイドライン2024 年版」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:2024)の技術資料が参考になる。
アレイの固定部や支持物の剛性が低い場合には、強風や地震による変動荷重によって振動が発生し、それに伴う荷重の増加が懸念されるため、振動を考慮した荷重に対しても安定であることが要求される。また、他の工作物と近接する場合、当該他の工作物との距離や密集度合いによっては、風の収束により観測値を超えた風速による風圧荷重が追尾型太陽電池発電設備に加わる場合がある。このため、流体解析によるシミュレーションや風洞実験を行うなど、現地の敷設状態を考慮した風圧荷重に基づいて安定を確認することが望ましい。
さらにトラッカーの可動範囲内で各種荷重(自重、地震荷重、風圧荷重、積雪荷重及び当該支持物の設置環境において想定される各種荷重)が最も大きくなる姿勢をそれぞれ想定し、それらの荷重が作用した場合においてトラッカー及び支持物が安定であることを要求している。通常、風圧荷重はアレイ面が鉛直に近くなるほど大きくなり、積雪荷重はアレイ面が水平に近くなるほど大きくなるが、アレイ面での荷重の偏りによるモーメントも考慮して決定する必要がある。このアレイ面のモーメントは、トラッカーだけでなく支持物にも伝達するので、架台や基礎が転倒することがないようにする必要がある。
ただし書きでは退避姿勢に移行するシステムを導入している場合の風圧荷重や積雪荷重について示している。風圧荷重はアレイ面が水平に近くなるほど小さくなり、積雪荷重はアレイ面が鉛直に近くなるほど小さくなることを踏まえ、退避姿勢において風圧荷重及び積雪荷重に対して安定であることを求めている。
第三号では、強風時及び積雪時に退避姿勢に移行する機能を有する場合には、移行開始風速及び移行開始積雪量の設定は、退避姿勢に移行を開始する前の姿勢において、省令第3条の各種荷重を基礎として、アレイ面に作用する荷重の偏りを考慮して想定される荷重に対し安定であることとし、設計用風圧荷重及び設計用積雪荷重を超える風圧荷重及び積雪荷重がかからないよう考慮して設定することとしている。
この移行開始風速や移行開始積雪量を高い値に設定すると、実際に受ける荷重が退避姿勢の荷重を超える場合があることに注意する必要がある。また、北日本の日本海側の地域などにおいては積雪と強風が同時に発生する場合があるので、風圧荷重か積雪荷重いずれを優先するかを設定したうえで、その風圧荷重又は積雪荷重がかかった状態での退避姿勢における各荷重(太技省令第3条に規定する荷重)に対して支持物及びトラッカーが安定した状態を確保できるようにする必要がある。
第四号では退避姿勢に移行を開始後、退避姿勢に移行が完了するまでの間の状態においては、移行開始風速及び移行開始積雪量を用いた風圧荷重及び積雪荷重に対して安定であることとしている。ただし、退避姿勢に移行開始後、移行が完了するまでの風圧荷重についてはIEC62817(2017)に倣って移行開始風速の1.1 倍の風速で計算した荷重としている。
第五号では、退避姿勢に移行するシステムを導入した場合の風速及び積雪量のセンサーは当該支持物の設置場所での風速及び積雪量を適切に計測できる位置に設置することを要求している。なお、風速や積雪量は周辺の地形や地物(樹木や建築物等)だけでなく当該発電設備自身の影響も受けるため、発電設備の設置環境によっては複数個所に設置することを検討する必要がある。
第六号では、追尾システム並びに風速及び積雪量の計測システムにフェールセーフを考慮することを要求している。これらのシステムの動作不良が発生した場合には、発電設備の安全性が確保できないことも想定されるため、動作不良の検知と復旧、常用電源が停電した場合に備えた予備電源の確保、退避姿勢への予備的な移行手段(自動的移行又は動作不良の通知を受けた技術員による手動制御など)を設計段階で計画し、実装しておく必要がある。また、これらのシステムは適切に維持管理され、確実に動作する状態を維持することが必要である。風速及び積雪量の計測システムについては、気象庁やメーカーなどの検定を受け、正しい計測値が得られることを定期的に確認することが重要である。
⑩ 解釈第11条の解説(高さ9m を超える太陽電池発電設備)
土地に自立して施設される支持物のうち高さが9mを超える場合には、建築基準法第20 条、建築基準法施行令第81 条及び平成19 年国土交通省告示第593 号第一号を参考に、建築基準法施行令での工作物の構造強度等を要求している。なお、発電用太陽電池設備の設計荷重を規定しているJIS C 8955(2017)では設置面からのアレイの最高高さが9mを超えるアレイを適用範囲外としていることから、設計荷重についても別途検討する必要がある。
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