電気設備の技術基準の解釈の解説
第165条(特殊な低圧屋内配線工事)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.227–232
〔解 説〕 本条は、特殊な低圧屋内配線工事の施設方法について規定している。
第1項
第1項は、フロアダクト工事について規定している。フロアダクト工事は、事務室等で、電話線、信号線等の弱電流電線、電気スタンド及びOA機器用電源の強電流電線とを併設する場合にしばしば利用されるもので、シンダーコンクリート床等の内に埋め込まれて施設される(→解説165.1図)。強電流電線と弱電流電線とを併設するといっても、実際にはフロアダクト2本を使用し、一方には強電流電線、他方には弱電流電線を収め、その交差点には隔離板を設けたジャンクションボックスを使用して双方の電線が直接接触しないように施設している(しかし、双方のダクトはジャンクションボックスにより電気的に接続されることとなる。)。また、電話線、信号線、強電流電線の3回路を併設するときは、3本のダクトを使用して施設する方法のものもある。この場合の弱電流電線との関係は、第167条第2項及び第3項に規定されている。
解説165.1図
第一号から第三号は、配線の施設方法について規定しているが、それぞれ第159条第1項第一号及び第二号並びに第158条第1項第三号と同様なので、解説は省略する。なお、第三号ただし書で、電線を分岐する場合において、その電線の接続点が容易に点検できる場合に限り、フロアダクト内での電線の接続を認めることとした。例えば、次項の規定により施設するセルラダクトに組み合わせてフロアダクトを施設する低圧屋内配線システムにおけるセルラダクトとフロアダクトの交差部に設けるボックスの部分がこれに該当する。
第四号は、フロアダクト及びボックス(ジャンクションボックス)その他の附属品の仕様を規定している。
イは、幅が10cm以下のフロアダクト及びその附属品は電気用品安全法の規格に適合したものを使用することを示している。ロは、幅が10cmを超えるものは、厚さが2mm以上の鋼板で腐食しないようなものを使用することとしている。
なお、厚さを2mm以上としているのは、床面への電線の引出しをするフロアダクトは、スタットをフロアダクトにねじで取り付ける必要があること、また、施工中コンクリート床面からスタットが出ていると荷物等を置いたときスタットが押され、フロアダクトがつぶれるおそれがあるためである。(ハ)は、フロアダクトには、一般に引抜鋼管又は溶接鋼管を四角に仕上げたものが使用されるが、内面に電線の被覆を損傷するような有害な突起等がないように、かつ、端口も面取りして電線の被覆を損傷するおそれがないようにすることを規定している。
第五号は、フロアダクト、ボックス(ジャンクションボックス)その他の附属品の施設方法を定めている。
イは、フロアダクト工事は、電線を保護する目的で管路を構成するものであるから、フロアダクト相互、フロアダクトとボックス及び引出口の接続が緩むことによって電線を損傷しないように、機械的接続の堅ろうさを求め、また、これらの金属部分が電気的に接続されないと接地の効果に支障があるため、電気的接続の完全さを求めるものである。電気的接続については、フロアダクト相互は、カップリングの止めねじがダクトに食込むように完全に締め付けることによりこの目的は達せられる。フロアダクトとジャンクションボックスとの接続の場合も、ジャンクションボックスの止めねじの締付けによって、また、フロアコンセント等の引出口を取り付ける場合は、これらをフロアダクトの引出口にねじ込むことにより、この目的は達せられる。
ロは、フロアダクトを埋め込む場合には、フロアダクトサポート等を使用して、水平になるように固定してからシンダーコンクリート中に埋め込み、工事施工中に水等が入った場合でも、途中に水が溜まるようなことがないように施設すべきことを規定している。
ハは、ボックス及び引出口は、床面から突出しないようにシンダーコンクリート中に埋め込み、工事中においても、フロアダクト内に水が浸入しないようにボックスの引出口は密封しておくこと、また、フロアコンセント等を取り付ける場合にも、その接続部等はねじ接続等により、床にまくなどした水が浸入し難いように施設することを規定している。
ニは、フロアダクトの終端部はダクトエンド等でふたをしておくことを意味している。
ホは、漏電による危険を防止するための保護方法であることは金属管工事等の場合と同じであるが、初めに述べたようにフロアダクトではその構造上強電流電線を収めるフロアダクトと弱電流電線を収めるフロアダクトを併設するときは相互に電気的に接続されているので、電話線との混触による危険を考慮してC種接地工事を施す必要があり(→第167条第3項)、電線と弱電流電線とを同一のダクト内に収めない場合はD種接地工事でよいこととしている。
第2項
第2項は、セルラダクト工事について規定している。セルラダクト工事は、一般的には、大形の鉄骨造建造物の床コンクリートの仮枠又は床構造材として使用される波形デッキプレートの溝を閉鎖してこれをセルラダクトとして使用する方式で、フロアダクトよりもダクト部分の断面積を大きくとれるので、負荷容量の増加に伴う配線の容量及び回路の増加に対処でき、また、負荷の位置変更にも容易に対応できる工事方法である。なお、セルラダクト工事による配線システムは、一般的には、フロアダクト(ヘッダダクト)、金属ダクト(ピット状のもの)又は金属管等と組み合わせて使用される例が多い(→解説165.2図)。
解説165.2図
第一号から第四号は、セルラダクト工事による電線の施設方法について規定している。
第一号から第三号までの規定は、それぞれ前項第一号から第三号と同様のため解説は省略する。第四号は、セルラダクトから電線を引き出す場合にセルラダクト貫通部分で電線の損傷を防止するための規定である。
第五号は、セルラダクトの仕様に関する規定である。
第六号は、セルラダクト工事に使用するヘッダダクト及びその付属品についての規定である。
第七号は、セルラダクト及びヘッダダクトの施設方法について規定している。
イは、セルラダクト相互及びセルラダクトと附属品の接続が緩むことによって電線を損傷しないように、機械的接続の堅ろうさを求め、また、これらの金属部分が電気的に接続されないと接地の効果に支障があるため、電気的接続の完全さを求めるもので、前項第五号イと同様の趣旨である。ロからホまでの規定は、前項第五号ロからホまでと同様であるため解説を省略する。
第3項
第3項は、ライティングダクトの施設方法を規定したものである。第二号は、第163条第1項第一号と同様である。バスダクトの接続は、接続ボルトの締付け圧力で導体の電気的接続及びダクト本体の機械的接続を確実にしているのに対し、ライティングダクトは、接続部品をダクト端部に差し込むことにより、導体同士の接触面に十分な圧力を加え、電気的接続を確保している。また、ライティングダクト本体は、接続部品の取付けビスの締付けにより機械的に接続される。
第三号及び第四号は、ライティングダクトは造営材の支持点間を2m以下として堅ろうに取り付けることを規定しており、ライティングダクト工事は、ライティングダクトを造営材に固定せずに施設しないこととしている。
第五号は、ライティングダクトの末端は充電部分が露出するため、エンドキャップ等で閉そくするよう規定している。
第六号は、ダクト内部にじんあいが侵入すると、漏電の可能性があるため、ライティングダクトを上向きに施設しないこととしている。ただし、ロに規定した固定Ⅱ形のライティングダクトを使用する場合又は人が容易に触れるおそれのない場所において、ライティングダクト内部にじんあいが侵入し難いように施設すれば横向きに施設することができる。
第七号は、ライティングダクトは開口部を有するため造営材を貫通して施設しないこととしている。
第八号は、ライティングダクトには、合成樹脂その他の絶縁物で金属製部分を被覆したライティングダクトを使用する場合を除き、原則としてD種接地工事を施すこととし、対地電圧150V以下でライティングダクトの長さが4m以下の場合省略することができる。
第九号は、ライティングダクトを人が容易に触れるおそれがある場所に施設するときは、ライティングダクトの内部にじんあいが入ると、ライティングダクト内を清掃する時に感電の可能性があるため、漏電遮断器等を施設することとしている。
第4項
第4項は、平形保護層工事について規定している。平形保護層工事は、平形保護層(上部保護層、上部接地用保護層及び下部保護層によりなるもの)内に平形導体合成樹脂絶縁電線を入れ、床面に粘着テープにより固定し、タイルカーペット等の下に施設する低圧屋内配線工事である。保護層の厚さが2mm程度と非常に薄いことから、タイルカーペットの上からは配線ルートが分かりづらく、床面の任意の位置からコンセントを取り出すことができ、電線相互や電線と配線器具との接続が特殊なコネクタ及び工具により行われ、保護層を粘着テープで固定する方式であるため(→解説165.3図)、事務所内において机、端末機器等のレイアウトが変わっても、簡単に変更工事ができる特長を持っている。しかし、各メーカーの電線及び保護層の厚さや幅が異なるため、同一メーカー以外のものの組合せにより構成された配線では、安全が保証されない可能性がある。なお、平形保護層工事に使用される配線は、第5条で規定する電気用品安全法の適用品を使用することとなる。電気用品安全法の対象となる平形導体合成樹脂絶縁電線は、定格電圧が100V以上300V以下、定格電流30A以下のものに限られる。また、導体は3本以上、5本以下であり、このうちいずれか一つが接地線(緑又は黄緑の線)となっている。
解説165.3図
この配線工法は、保護層と電線とが一体となって保安を確保するという考え方に基づくものであるため、電線の絶縁厚さを厚くして保護層を薄くするメーカーもあれば、電線の絶縁厚さを薄くし、電線相互の接続を安定化させ、その代わりに保護層を厚くして保安を確保する方式のメーカーもある。したがって、電線と保護層とは常に一体化していなければ保安が確保できないものである。日本産業規格JIS C 3652(1993)「電力用フラットケーブルの施工方法」において平形保護層配線を「電力用フラットケーブル」と呼ぶのはそのためであり、本解釈においても、第4項第一号チ(ハ)において、「平形保護層、ジョイントボックス、差込み接続器及びその他の附属品は、当該平形導体合成樹脂絶縁電線に適したもの」と規定し、平形保護層工事を一つのシステム化した配線工事として位置付けている。
第一号は、住宅以外の場所に施設できる平形保護層工事の施設制限、保護層の構造及び電路に関する施設方法について規定しており、イは、この配線工事が他の配線工事より弱いため、施設場所を限定したものであり、ロは、壁際の床には重量のある書類ロッカーなどが置かれることが多く、また、タイルカーペットの隙間が出やすい部分のため、重量による圧力が平形保護層に直接かかり、平形導体合成樹脂絶縁電線を損傷するおそれがあるため、造営材を貫通して施設できないことを規定したものである。ハは、保護層が帯状であるため、偏平な平形導体合成樹脂絶縁電線に限定したものである。また、電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈別表第十二が引用する日本産業規格JIS C 3010(2019)
「電線及び電気温床線の安全に関する要求事項」の附属書AG(平形導体合成樹脂絶縁電線)には、導体の電気抵抗が8.92Ω/km以下のもの(直径1.6mmの銅導体と同等以上の導体)、5.65Ω/km以下のもの(直径2.0mmの銅導体と同等以上の導体)又は3.35Ω/km以下のもの(直径2.6mmの銅導体と同等以上の導体)の3種類のものが規定されているが、20℃における電気抵抗が8.92Ω/km以下のもの(15A用)は住宅のコンクリート直天井面に施設するために規定されたものであるため、造営材の床及び壁に施設する場合は、使用できない。
ホは、平形導体合成樹脂絶縁電線相互を接続する場合について規定している。これは、第12条において平形導体合成樹脂絶縁電線を絶縁電線から除外しているため、第12条とは別に接続方法を規定しているものである。平形導体合成樹脂絶縁電線相互のみを定めているのは第一号ニで「平形保護層内の電線を外部に引き出す部分は、ジョイントボックスを使用すること。」と規定していることから、他の電線との接続ができないことによる。
なお、平形導体合成樹脂絶縁電線は、メーカーによって導体幅、導体厚さ及び導体相互間隔が少しずつ異なり、また、接続用コネクタ(接続用はとめ)も電線メーカーによって異なる場合もあるので、適正な接続材を使用することが必要である(→第一号チ(ハ))。
ヘは、平形保護層内に異物(砂、小物金属等)が入ると、電線に傷がつき危険な状態となるため、施工時は注意を要する。特に、コンクリートに直接平形保護層を取り付ける場合は、使用中に上部保護層によって床面がこすられ、砂が保護層に入るので、必ずコンクリートの上に上部保護層より広く塗料を塗り(粘着テープが付く部分も塗料を塗ること。)、又は上部保護層より広い下部保護層を使用しなければならない。また、施工時、差込み接続器等を床面に取り付ける時に、床に穴を開けるので、これらのごみが保護層内に入らないように、あらかじめ掃除機等で十分ごみを取り除く必要がある。なお、保護層内に光ファイバケーブル等を入れることは、電線に傷を付けることになるので、保護層内には電線以外のものは入れられない。
ト(イ)は、地絡が発生した場合においても人体に危険がないように対地電圧を150V以下に制限している。(ロ)で定格電流を30A以下の分岐回路に限定したのは、電気用品安全法において平形導体合成樹脂絶縁電線の定格電流を30A以下に限定しているためである。(ハ)は、電線の絶縁物の厚さが薄く、絶縁破壊を起こしやすいため、地絡遮断装置の施設を義務付けることにより保安を確保するものである。
チは、平形保護層工事に使用する平形保護層、ジョイントボックス及び差込み接続器の仕様について規定している。
(イ)は、平形保護層の規格であり、日本産業規格JIS C 3652(1993)の附属書を引用している。
(ロ)は、ジョイントボックス及び差込み接続器については、電気用品安全法の適用を受けるものであることとしている。したがって、平形保護層工事の専用のジョイントボックスは、埋込みトランジションボックス内に施設するものであっても、充電部分が露出しない構造を要求しているので、ジョイントボックスのキャップを外すことはできない。
(ハ)は、平形保護層と電線とは同一のメーカーのものを使用することを義務付けたものである。なお、異なったメーカーとの電線相互の接続にあっては、ジョイントボックスを使用し、又は異メーカー接続用専用電線及び専用接続コネクタを使用する必要がある。
リは、保護層の施設方法について規定したものである。なお、施設方法の詳細については、日本産業規格JIS C 3652(1993)「電力用フラットケーブルの施工方法」又は日本電気技術規格委員会規格 JESC E0005(2016)「内線規程」((一社)日本電気協会電気技術規程 JEAC8001-2016)を参照されたい(→解説165.4図)。
解説165.4図
第二号に規定する平形保護層工事は、H14解釈で日本電気技術規格委員会規格 JESC E6004(2001)「コンクリート直天井面における平形保護層工事」を引用し、H16解釈で日本電気技術規格委員会規格 JESC E6005(2003)「石膏ボード等の天井面・壁面における平形保護層工事」を引用し、R4解釈より民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。なお、平形保護層工事による低圧屋内配線を住宅におけるコンクリート直天井面に施設する施設方法の詳細については、日本電気技術規格委員会規格 JESC E0011(2001)「コンクリート直天井面におけるテープケーブル工事の設計・施工指針」((社)電気設備学会指針
IEIE-G-0002(2001))を参照されたい。