電気設備の技術基準の解釈の解説
第143条(電路の対地電圧の制限)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.195–197
〔解 説〕 電気設備のうち屋内に施設するものは人と最も密接な関係にあり、感電、火災等の危険が多いので、その施設については特に厳重に規制する必要がある。第1項及び第2項では、屋内に施設する電路の対地電圧の制限について規定している。
ここで、屋内とは、一般家庭の屋内をはじめ工場、事務所等の区別なく電気使用場所の屋内の場所という意味である。
発電所、蓄電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所(→第1条)や工場等における電気室のような場所は、この解釈でいう屋内ではないので、本条の規制の対象から除かれる。また、工場等において取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所であって上記以外の場所、例えば高電圧試験装置を施設した場所などは、この解釈でいう屋内である。
第1項
第1項では、住宅の屋内電路の対地電圧を、原則として150V以下に制限している。本項でいう電路は、かっこ内で示されているように電気機械器具内の電路を除いている。なお、電気機械器具が低圧の電気を受けてその内部で電圧を変成し、高電圧を発生する部分があっても、それが外部に導き出されない場合には、本条の制限は受けない。また、住宅の空調機器のように室内機と室外機とが別個の場所に施設されるような場合には、電気機械器具として機能的に一つの機器として解釈してもよいが、相互を接続する配線等は、電気機械器具内の電路とは解釈しない。
本項でいう住宅とは、一般家庭において日常生活する場所をいうのであって、アパート、寮等の私室も含まれる。高層アパートのボイラー室やコンプレッサ室等の附帯設備や、ホテルのロビーに相当するような場所は住宅と考えなくてよい。また、店舗付住宅のような場合は、店舗に相当する部分は住宅と考えなくてよい。このように、住宅とは乳児から老人に至るまで安心して生活できるべき場所に限定しており、このような所では危険度の高いものは極力施設することを避けるべきである。100V用電気設備における感電事故と200V用電気設備における感電事故とを比較した場合、後者がはるかに死傷事故の確率が高いことは周知の事実である。したがって、住宅の屋内電路は対地電圧150V以下とすべき旨が規定されているわけである。
しかし、次のような場合には、ただし書により例外を認めている。
①住宅に施設する定格消費電力が2kW以上の電気機械器具及び当該電気機械器具のみに電気を供給するための屋内配線
②当該住宅以外の場所に電気を供給するための屋内配線
③住宅の屋根などに施設した太陽電池モジュールの負荷側の屋内電路(屋内の直流電路)
④住宅に施設した燃料電池発電設備や蓄電池の負荷側の屋内電路(屋内の直流電路)
⑤屋内を通過する電線路
①は第一号に示すものであり、家庭電化が進み、冷暖房機器、温水器など容量の大きい電気機械器具が家庭においても使われるようになり、特に電動機応用機器では始動電流が大きく一時的な電圧低下を生じることがあり、また、機器の効率及び配線の経済性からも三相200Vの動力線に接続しなければならないという場合もあるので、定格消費電力2kW以上の固定して施設する電気機械器具について、以下の規定により施設する場合には、その対地電圧を300Vまで認めている。定格消費電力2kW未満のものについては、単相3線式であっても機器の効率及び配線の経済性がそれほど問題となることはなく、単相3線式による対地電圧100V、使用電圧200Vで対応できること、また、対地電圧150Vを超える可搬形又は移動形の機器が一般家庭で頻繁に使用されると、上述の危険の確率が増加することから、これらの機器については、対地電圧150V以下を原則としたわけである。
ロでは、電気機械器具の使用電圧を300V以下(→省令第2条)とすべきことを規定している。我が国では、交流の低圧としては100V、200V、100/200V、400V、230/400Vの電圧が採用され、400V級のものは主として大規模のビル又は工場等で採用される。使用電圧が300V以下の回路には普通B種接地工事(→第24条)が施されており、通常、接地側電線に触れても感電等のおそれはないが、非接地側電線に触れると電撃を受ける。その程度は、屋内の乾燥状況、接地抵抗等によって著しく異なるが、電圧が低いので高圧に比べて危険度は少ない。直流の回路には通常、接地工事を施さないが、正負両極の電路の絶縁が良ければ、単にその中性点が移動するだけで直接的障害とはならない。
ハでは、事故防止のため屋内配線は人が容易に触れるおそれがないように高所又は人が近寄れない場所に施設することとした。また、電線はケーブル又はキャブタイヤケーブルであっても、合成樹脂管等に収めるなどの接触防護措置を施すこととしている。
ニでは、取扱い上、簡易接触防護措置を施すことができない配線器具及び家庭用電気機械器具についての例外が認められている。
(イ)は、簡易接触防護措置を施さない部分が硬質ビニルその他の合成樹脂、木等の絶縁物で堅ろうに作られており、内部の電路の絶縁が劣化していても、ごく特殊な場合を除けば感電の危険がない場合である。この場合、絶縁物の表面の一部に装飾としてつけた金属製のものは、内部の金属製のものと電気的に絶縁されていれば差し支えない。
(ロ)は、乾燥した木製の床その他これらに類する絶縁性のもの(→第29条解説)の上から取り扱うように施設され、万一、外箱に漏電していても、致命的な事故となる可能性は極めて少ない場合である。
ホでは、電気機械器具を屋内配線と直接接続することを規定しており、コンセントによる接続を禁止している。これは、電気機械器具を移動させることが、事故の間接的な原因になっている場合が多いこと、また、移動電線をコンセントで接続し、頻繁にこれを入り切りすることは感電の機会を増すことになるとともに、誤って100Vの電気機械器具を接続するおそれもあるためでもある。したがって、住宅で使用される対地電圧200Vの電気機械器具は造営材に固定して、又は据え置いて設置されるものに限定されることになる。
ヘでは、住宅で使用される200Vの電気機械器具は、不使用の際には、できるだけ事故の機会を少なくするため、電気機械器具に電気を供給する電路を電源から切り離しておく必要があることから、専用の開閉器及び過電流遮断器を施設することとしている。
トでは、感電防止のため電気機械器具に電気を供給する電路に漏電遮断器等の地絡遮断装置を設けることを規定している。ここで設置する漏電遮断器等の感度については、特に規定されていないが、感電防止という趣旨を考えると、電流動作形の漏電遮断器であれば、一般的に定格感度電流が15~50mA程度のものが用いられている。ただし書では、絶縁変圧器を施設し、2次側電路を非接地にすれば漏電遮断器と同等以上の効果が期待できるが、変圧器の容量が大きくなると必ずしも安全であるとはいえないので、定格容量を3kVA以下としている(→第29条解説)。
②は第二号に示すものであり、住宅と店舗、事務所又は工場その他営業所などが同一建造物内にある場合又は隣接する場合であって、住宅用の使用電圧100Vの引込線とは別に営業用の使用電圧200Vの引込線を設ける場合に、主として空間的に余裕がなく技術上の困難を伴うこと又は経済的に過大な負担を招くことがあるので、住宅を通過して営業用の負荷設備に電気を供給する対地電圧が150Vを超え300V以下の低圧屋内配線を施設することを認めている。ただし、この配線の工事方法は安全度の高い合成樹脂管工事、金属管工事又はケーブル工事に限定され、住宅の居住者がこの配線に触れるおそれがないように隠ぺい場所に施設することとしている。
③は第三号に規定するものであり、屋根などに施設した太陽電池モジュールの負荷側の電路のうち、太陽電池モジュールからインバータに至る電路であって、住宅の屋内に施設される配線の対地電圧{一般的に当該電路は非接地であるため、線間の電圧を指す。(→省令第58条)}を直流の場合は150Vを超え直流450V以下とすることができるとしている。
これは、クリーンで、地球環境にやさしいエネルギー源として期待されている太陽電池発電設備が、我が国において住宅用途を中心に急速に普及しつつある状況などを考慮し、H13解釈において新たに規定したものである。
住宅に施設される太陽電池発電設備は、太陽電池アレイ(複数の太陽電池モジュールの集合体をいう。)からの直流出力が、パワーコンディショナ(インバータの他、保護装置などで構成される電力変換装置をいう。)を介して交流出力に変換され、屋内の負荷に供給されるものである。太陽電池アレイは、一般的に非接地方式を採用することにより感電の危険を防止し、設備全体では地絡事故時にも地絡経路を遮断する等の保護機能を具備している。
従来、太陽電池アレイの開放時の電圧を300V以下とし、最大出力動作電圧を200V程度に抑制して屋内のインバータへ入力していた。しかし、インバータへの直流入力電圧を高く設定することができると、インバータの昇圧比が下がり、高効率化や製品の小型化が図れることとなる。そこで、広く普及が見込まれる直流開放電圧が450V以下の太陽電池アレイを用いた太陽電池発電設備を住宅に施設できるよう、屋内の対地電圧制限を緩和するための施設条件等を整備した。
ロは、電路に地絡遮断装置を施設することを示している。この場合の地絡遮断装置は、当該電路が直流であるため、専用の地絡検出装置(磁性体の磁気回路の途中に設けたホール素子により磁電変換して地絡を検出する装置等)を用いることとなる。この地絡遮断装置は、一般の交流電路用の地絡遮断装置とは異なるものが必要となるので注意を要する。
ただし、一般的にパワーコンディショナには、このような直流用の地絡遮断装置が内蔵されているため、地絡遮断装置を内蔵したパワーコンディショナを施設している場合にあっては、別途地絡遮断装置を施設する必要はない。ここでは、地絡遮断装置の動作特性については、特に示していないが、太陽電池モジュールの施設形態による特性を十分考慮し、感電保護が行え、かつ、不要動作が起きない範囲で、整定値を設定することが必要である(→省令第15条解説)。ただし書では、(イ)のとおり太陽電池モジュールに接続する直流電路が非接地であり、かつ、(ロ)のとおりインバータの交流側に絶縁変圧器が施設されている場合は、地絡を生じても地絡電流の帰路が構成されず、検出が困難であるとともに危険性も低いことから、地絡遮断装置の施設を省略可能としている。ただし、住宅屋内電路はケーブル工事等のしかるべき手法により工事が施されているとはいえ、取扱い不良等により人が充電部分に触れる可能性が否めず、また、非接地の電路であっても、対地静電容量が大きい場合は、充電部分に触れると瞬間的に電撃を受け、危害を被るおそれがあるため、対地静電容量を安全な範囲に抑える観点から(ハ)の条件についても定めている。
なお、パワーコンディショナの金属製外箱や太陽電池モジュールの金属製架台には接地工事を施すことが必要であり(→第29条)、電圧が300Vを超過している場合はC種接地工事を施すこととなる。ただし、当該電路には地絡遮断装置を施設することとしているため、接地抵抗値は500Ω以下(D種接地工事の場合であっても500Ω以下)とすることができる。
ハは、屋内配線の工事方法について示している。この配線の工事方法は、第二号と同様に安全度の高い工事方法である合成樹脂管工事、金属管工事又はケーブル工事に限定され、住宅の居住者がこの配線に触れるおそれがないようにこれを隠ぺい場所に施設することとした。しかし、太陽電池発電設備の配線は、既設住宅に後から施設されることが多く、配線を隠ぺい場所に施設することが困難なケースがあることから、ケーブル工事により施設する場合にあっては、接触防護措置を施す場合に限り、露出場所に施設できることとした。具体的な防護装置としては、ケーブルを金属管等に収めて施設する方法などがある(→第164条解説)。
④は第四号に示すものであり、第三号と同様に、住宅に施設した燃料電池発電設備又は蓄電池の負荷側の電路のうち、燃料電池発電設備又は蓄電池からインバータに至る電路であって、住宅の屋内に施設される配線については、その対地電圧を、直流の場合は450V以下とすることができるとしている。
これは、燃料電池発電設備や蓄電池の一般家庭への普及に伴い、第三号の太陽電池モジュールに対する規定を燃料電池発電設備や蓄電池にも当てはめて安全性を検証した結果を踏まえ、H29解釈で定めたものである。
第三号では、電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を省略できる条件として、太陽電池モジュールの合計出力に制限を設けている。これは、太陽電池モジュールの場合、その面積が大きくなると対地静電容量が増加し、充電部に接触すると瞬間的な電撃が発生するおそれがあることから、出力制限を設けることで対地静電容量を安全な範囲に抑える必要があるからである。一方、燃料電池発電設備や蓄電池の場合、感電保護のため金属製外箱が接地されるため、器具本体において電荷が蓄えられる要素がなく、対地静電容量は出力に依存しない(→第29条解説)が、ここでは個々の燃料電池発電設備の出力制限値を、一般用電気工作物となる小規模発電設備の出力制限値と一致させて10kW未満とし、蓄電池の出力制限値についても同じ値を採用している。
⑤は第五号に示すものであり、②の屋内配線と異なって屋内を通過する電線路の場合で、この屋内に施設する電線路は、第132条第3項の規定により施設することとしている。
第2項
第2項では、住宅以外の場所(旅館、ホテル、喫茶店、事務所、工場等)の屋内に施設する家庭用電気機械器具(→第142条第十号)に電気を供給する屋内電路の対地電圧を原則として150V以下に制限している。しかし、このような場所では機器の台数が多く、全体の容量が大きくなるため、三相200Vによることが必要な場合もあること、また、利用者が特定の者に限られること等を考慮し、取扱者以外の者が容易に触れるおそれがない場所に施設する場合又は安全性を高めた工事方法による場合は、例外として対地電圧が150Vを超えることを認めている。すなわち、やむを得ない場合の保安のため工事方法を規定し、電気設備の維持管理の責任体制を明確にすることによって、対地電圧を300V以下でよいこととしている。
ここで取扱者とは、旅館、ホテル、事務所、工場等の従業員でその取扱いを許されているものと広義に解釈してよく、外来者の出入りのない場所の多くは、この規定により除外される。したがって、安全度を高めた工事方法は、旅館、ホテル、喫茶店等外来の人が多く出入りする場所に適用されることになり、この場合の工事方法が前項第一号ロからホまでに示されている。
第3項
第3項では、白熱電灯(→第142条第十二号)は人が手を触れて取り扱う機会が非常に多く、特に感電の危険があるので、これに電気を供給する屋内電路の対地電圧を150V以下(単相2線式100V配線又は単相3線式200V配線)とするよう規定している。
第3項ただし書では、白熱電灯に電気を供給する電路の電圧が高いほど屋内配線などが経済的になるので、保安上、工事方法を規制することによって対地電圧を300V以下でよいこととし、電路の対地電圧を150Vを超え300V以下とする場合の工事方法について第一号から第三号までに規定している。
第一号では、感電による危険を防止するため接触防護措置を施すことを示しており、例えば、床上2.3m以上の箇所に施設する方法又はガラス若しくは合成樹脂等で電灯器具を覆う方法がある。
第二号では、白熱電灯は、低圧屋内配線と直接接続することを示している。したがって、移動電線によるコンセントの使用は禁じられている。しかし、コンセントによって屋内配線に接続される機械装置に附属する電圧の有無を示す標示灯などではやむを得ないので、かっこ内でこれを除外している。
第三号は、白熱電灯に触れることがないようにする意味で示している。