電気設備の技術基準の解釈の解説
第116条(低圧架空引込線等の施設)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.163–166
〔解 説〕 本条は、低圧引込線の要件及び施設方法について示している。
架空引込線(→第1条第九号)は、一般需要家と関係の多い電線であるから、その工事は、特に入念に行う必要があるとともに、保守点検についても注意を怠らないことが必要である。特に、市街地においては比較的狭い空間に弱電流電線その他の突出物が多いところに施設されている場合が多いので、がいしの脱落、バインド切れ、電線の弛み、植物との接触等が多く、電話線との混触事故、断線による不点事故が起こりがちである。したがって、架空引込線の良否は、保守の適否によって決まるといっても過言ではない。
架空引込線は、架空電線路に対する規定のうち、第71条から第79条まで(建造物、道路等、索道、架空弱電流電線、アンテナ、電車線等、他の低圧架空電線若しくは他の工作物との接近・交差又は植物との接近)が準用され、その性質上、経済上及び工事施工の点から、道路の横断、地表上の高さ及び造営物等との離隔距離について緩和している。
第1項
第1項第一号は、特に人及び家畜、造営物に対する感電、火災の危険を防止するため、電線には絶縁電線(→第65条解説)又はケーブルを使用することとしている。
第二号において、径間が15m以下の場合に引張強さ1.38kN以上のもの又は直径2mm以上の硬銅線の使用できることとしているのは、負荷電流も少なく、径間15m以下の引込線が施設されるような場所は風当りも弱く、受ける荷重も小さい等、保安上問題がないと判断されるためである(→第65条)。
第三号及び第四号は、引込線の施設される場所は人の接近する機会が多いので、引込線の高さ及び他物との離隔距離だけでなく、施設される周辺の状況によって人が触れることのないように施設すべきことを示している。
第五号は、電線にケーブルを使用する場合は架空ケーブル工事(→第67条)に準じて施設することを示しているが、この場合、ケーブルの長さが1m未満のものではその張力及び弛度も小さいので工事を簡略化し、ちょう架しなくてもよいこととしている。
第六号では、架空引込線の地表上の高さは、主として経済上の理由から、交通に支障がない限り一般の電線路の場合より緩和している。なお、建造物の構造上、取付け点を4mもの高さにすることがどうしても困難な場合があるので2.5mに緩和している(→解説116.1図)。解説116.1図において、Dの長さについては示していないが、交通に支障のない範囲であまり大きくならないように注意する必要がある。
第七号では、第71条第1項第二号及び第78条第1項に規定される造営材と架空電線との離隔距離を架空引込線の引込点付近に適用することは不可能であるため、離隔距離を緩和している。この場合において、「危険のおそれがない場合」とは解説116.2図のような場所を指しており、破線の円内では、第七号の規定による離隔距離の緩和ができる。
第八号は、第71条(第3項を除く。)、第72条から第77条まで及び第78条(第4項を除く。)に規定される造営材と架空電線の離隔距離を、架空引込線を引き込む造営物以外の工作物との接近又は交差に適用すると、引込工事が非常に困難となり又は多くの資材を要する場合が多いので、離隔距離を緩和している(→解説116.3図)。
第八号イは、H10解釈で追加されたものであり、低圧架空引込線と他の工作物との離隔距離のうち、需要場所の取付け点付近における離隔距離については日本電気技術規格委員会規格 JESC E2005によることができることを示している。このJESC規格では、近年の施設実態を考慮し、低圧架空引込線は取付け点付近では風の影響による揺動等もなく安定した状態であること及び取付け点付近のように引込線が弱電流電線等と接近する電線長が短い場合は通信障害等のおそれもないことを考慮して、低圧架空引込線と他の工作物との離隔距離を決めている。また、弱電流電線等との離隔距離においては、電線相互が直接接触しなければ混触又は通信障害などの影響はないため「接触しない」こととし、さらに、弱電流電線等の作業者の安全を確保するために必要な空間として、弱電流電線の引留具類に弱電流電線を取り付け又は撤去するための離隔距離(→解説116.4)を示している。
解説116.1図
解説116.2図
解説116.3図
解説116.4図
第2項
第2項は、低圧引込線の屋側部分又は屋上部分の工事方法で、いわゆる引込線の需要場所の取付け点から引込口に至る部分(→第1条解説、解説1.2図)の屋側部分又は屋上部分は第110条第2項(第一号チを除く。)及び第3項の屋側電線路の規定に準じて施設することを示している。屋側部分だけでなく、屋上部分についても屋側電線路の規定に準じたのは、屋上電線路はその造営物と関係がないのに対し、引込線の屋上部分は、その造営材に引き込むためのものであるから、工事上の利便を図ったものである。また、住居の過密化、建物の高級化、美観、権利意識の向上を反映して引込線の施設場所に制約が生じており、H4基準で引込用ビニル絶縁電線、H28解釈で引込用ポリエチレン絶縁電線について、第110条第2項第一号の支持点間距離を15mまでとれるよう改めた。解説116.5図は、屋上部分に準じ、離隔を確保する間柱や屋側工事を要することなく施設する例である。なお、4カ月以内の臨時的な工事については、第133条第7項で、がいし引き工事の電線相互及び電線と造営材との離隔をとらなくてもよいこととしている。
解説116.5図
第3項
第3項は、構内電線の一般工事が緩和されている部分については、引込線についても緩和することを示している。
第4項
第4項は、低圧連接引込線の要件と施設方法について示している。引込線は一つの電柱から一つの需要家に引き込むことが望ましいが、市街地においては、一つの電柱から多数の引込線をとる方式(傘型引込という。)によると混触して不点事故の原因となりやすいので、連接引込方式が認められており、多くの引込線に用いられている。
連接引込線(→省令第1条第十六号)は、引込線の家屋外面に沿う電線を経て他の需要場所に引き込まれるもので、この場合の工事上の制限は、一般の引込線の場合と同様である。
第二号は、連接引込線の長さの制限について示している。これはあまり広範囲に連接引込を行うと、電圧降下、不点事故範囲の拡大又は需要家と柱上変圧器との関係の不明確さによる保守上の不便等、需要家に対する電力供給の確保を図る上からも好ましくないので、その長さについて規定したものである。
第三号は、幅5m以内の狭い小路の横断を認め、連接引込線の建設を容易にしている。これより広い道路では、交通に支障があると考えられるので、幅5mを超える道路は横断しないこととしている。
第四号は、一つの需要家に供給する引込線が他の需要家の屋内を貫通すると、供給責任の境界が不明確になり(特に長屋式建造物の場合、紛争を生じた例もある。)、点検も困難となるので、これをしないこととしている。なお、同一需要家に属する二つの需要場所、例えば母家と離屋がある場合、母家を貫通して離屋に至る場合で、母家の引込口開閉器から後で分岐するものは省令第1条第十六号の定義からは連接引込線とならないが、やむを得ない場合を除き、本条どおり配線することが望ましい(→第132条、第147条第1項第一号)。