電気設備の技術基準の解釈の解説
第71条(低高圧架空電線と建造物との接近)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.120–122
〔解 説〕 本条は、低高圧架空電線と建造物とが接近又は交差する場合の施設方法を示している。
第1項
第1項は、低高圧架空電線と建造物とが接近状態(→第49条第十一号)にある場合の施設について示している。建造物との接近の仕方については、建造物の上方、側方及び下方があり、上方及び側方における接近には第1次接近状態(→第49条第九号)と第2次接近状態(→第49条第十号)に分けて示している。
第一号では、高圧架空電線路は高圧保安工事(→第70条第2項)によることとしている。
第二号は、低圧架空電線又は高圧架空電線と建造物の造営材との離隔距離を示している。「離隔距離」とは、最短距離のことであって、他の離隔距離との関係を示すと、解説71.1図のようになる。また、「離隔距離」というのは離さなければならない距離という意味であって、単に「距離」というときは接近限界を示す場合に用いられ、「離さなければならない」という意味ではない。したがって、離隔距離という場合は、通常の気象条件による電線の変化を考えておくべきであり、径間が長く、弛度の大きい場所における建造物との離隔距離については、風などによる横揺れを考慮する必要がある。さらに、接近対象物が動揺するものであれば、その動揺等も考慮したうえで、適当な離隔距離をとる必要がある。
解説71.1図
絶縁電線が建造物(窓等がない場合)と接近状態に施設される場合に必要な離隔距離を解説71.2図に示す。なお、上部造営材とその他の造営材との区分については、第49条第十二号の解説を参照されたい。
解説71.2図
従来、離隔距離は、裸線、絶縁電線(高圧の場合は高圧絶縁電線)、ケーブルの3区分で示しており、基本的な考え方としては、低圧の場合は電線に低圧絶縁電線又は多心型電線を用いたときは裸電線の場合の2/3、高圧絶縁電線又はケーブルを用いたときは裸電線の場合の1/3まで離隔距離を短縮できることとし、高圧の場合は電線に高圧絶縁電線を用いたときは裸電線の場合の2/3、ケーブルを用いたときは裸電線の場合の1/3に緩和していた。なお、建造物の上部造営材においては、電線が接近しすぎると人が触れる危険性もあるので、ケーブル(低圧の場合は、高圧絶縁電線又はケーブル)を用いた場合にのみ裸電線の1/2に短縮できることとしていた。しかし、S51基準で低高圧架空電線に裸電線の使用が禁止された(→第65条第1項)ため、裸線に関する規定が削除された。更に、S57基準で特別高圧絶縁電線の規格(→第5条)が新たに規定されたことに伴い、低高圧架空電線に特別高圧絶縁電線を使用する場合の離隔距離を示した。
なお、屋外用ビニル絶縁電線は、600Vビニル絶縁電線及び引込用ビニル絶縁電線に比べて絶縁体の厚さが約2/3であって、かつ、絶縁耐力試験におけるサンプルの合格が3本のうち2本であればよいなど規格上においても違いがあることから、低圧架空電線としての絶縁上の安全性の観点から離隔距離を示すに当たって、従来一部では屋外用ビニル絶縁電線(OW電線)を600Vビニル絶縁電線又は引込用ビニル絶縁電線と区別して裸電線並みの扱いをすることもあった。しかし、S47基準では、既設のOW電線の絶縁性能などを全国的に調査した結果、塩害、じん害地域で20数年を経過したものでも、全て十分な耐電圧性能を有しており、漏れ電流についても10mAを超えることはなく、感電防止や電力供給の信頼度にも特に不安のないことが確認されたので、600Vポリエチレン絶縁電線、600Vふっ素樹脂絶縁電線、600Vゴム絶縁電線を含めて、低圧架空電線の建造物等との離隔距離に関しては同等の扱いとした。
71-1表の「人が建造物の外へ手を伸ばす又は身を乗り出すことなどができない部分」とは、例えば、建造物の側方であって、窓がないところを指しており、人が手を出して容易に電線に触れることがないため、離隔距離の緩和を認めている。
第2項
第2項は、低高圧架空電線が建造物の下方に施設される場合について示している。下方接近の例を解説71.3図に示す。
解説71.3図
第3項
第3項は、低高圧架空電線が建造物に施設される簡易な突き出し看板等と接近する場合の離隔距離に関する緩和規定であり、架空電線を防護具に収めて施設する場合、特に離隔距離を緩和している。最近、ビルの高層化に伴い配電線が建造物の側方で近接することが多くなっているが、建造物に施設される突き出し看板などと架空電線との離隔が不足するたびに支持物の移設や電線の高さを上げることには限度がある。そこで、配電線全体の絶縁強化ではなく、特に接触の危険又は感電等のおそれがある箇所に限って重点的に絶縁強化を行い、合理的に保安を確保しようとする見地から、絶縁性の防護具に収めた電線と、危険度の低いと考えられる建造物の簡易な突き出し看板や上部造営材以外の造営材との離隔距離は、電線が接触しなければよいこととした(→解説71.4図、解説71.5図)。
解説71.4図 解説71.5図