電気設備の技術基準の解釈の解説
第66条(低高圧架空電線の引張強さに対する安全率)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.115–116
〔解 説〕 本条は、低高圧架空電線の弛度を示したものであって、300Vを超える低圧及び高圧の場合は一般に適用しているが、300V以下の低圧の場合は、従来危険度の高い市街地の架空電線路で裸電線のみに適用していた。しかしS51基準で裸電線を使用しないこととしたため、300V以下の低圧については、多心型電線の場合のみに適用することとした。
なお、多心型電線の場合は、裸電線1本に全張力がかかることになるので、全ての場合に高圧の場合と同様の安全率としている(→第2項)。
電線は、弛度を大きくするほど張力が低下し、電線の引張荷重に対する安全率が増加する。しかし、不必要に弛度を大きくすることは、電線の地表上の高さ制限(→第68条)により支持物を高くしなければならないため不経済であり、さらに風による横振れに起因する事故や氷雪による垂れ下り、跳ね上り等による事故の確率を増すおそれがある。
本条における弛度設計については、①電線の弛度は、原則として最悪気象条件下で電線に設計最大使用張力を生じるように定める、②夏季の台風時と冬季の季節風時を最悪条件として考える、③電線にかかる荷重として、自重、氷雪重量、風圧の三つを考える、④温度の変化による電線実長の変化が、弛度、張力に与える影響を考慮する、⑤電線の機械的性質を十分に考慮する必要がある。
架渉線の弛度、張力等の計算に用いる温度は、特殊な地方を除き、平均温度、最高温度(平均温度より30℃高い温度)及び最低温度(平均温度より30℃低い温度)の三つの温度を標準とする。平均温度は、電線路が施設される地方を代表する気象観測所の記録による年間平均気温をいう。平均温度及び最低温度は、架渉線がその想定最大張力に達する状態に相当する温度としており、本条の計算にも適用されている。一方、最高温度は、架渉線の最大弛度を算定するのに使用している。なお、温度については「架空送電線の弛度」(電力社)を参考にしている。
第1項第二号ロ(ロ)の高温季の風圧荷重は、夏季台風時を目安に設計条件を示している。一方、低温季の風圧荷重は、冬期の季節風時を目安として設計条件を示しているが、氷雪の多い地方でも海岸地等では、最低温度で高温季節風圧を設計条件とする場合もある。これらの電線に加わる想定荷重についてまとめると、解説66.1表のようになる。電線の安全率は、硬銅線又は耐熱銅合金線では2.2以上としているが、その他の電線では、これらに比べて耐久性や信頼性が劣るので2.5以上としている。また、昭和24年以前の工規では硬銅線の安全率を2.0以上としていたのに対し、現行解釈ではこれを2.2以上としているが、往時は全て最低温度を基準としていたためであり、それは平均温度を基準とした場合の2.2以上と実質的にはほとんど変わらない。しかし、電線の最大使用張力、径間、電線に加わる荷重との間には、下式に示す関係があって、径間の大きさによっては、最低温度において1/2の風圧が加わる場合の方が高温季荷重よりも過酷な条件となることがあるので、S30工規において、低温季荷重が追加されて、いずれに対しても安全であるように改められた。
硬銅線及び鋼心アルミ線の数例について、その臨界径間を下式により計算すれば、解説66.2表のようになる。
本条に電線の安全率を示しているが、これは最大使用張力で引張荷重(電線接続点の強さをも考慮、→第12条第一号イ)を割ったものであるが、電線の最大張力は支持点で生じるから、支持点で規定の安全率を確保することとしている。
〔数式:式1〕
S :臨界径間(m)
T :電線の最大使用張力(N)
W :(平均温度-30℃)、すなわち最低温度のときの電線単位長当たりの電線重量と電線に対する風圧荷重との合成荷重(N/m)
W ′:平均温度のときの同上の合成荷重(N/m)
α:電線の線膨張係数解説
〔解説66.1表〕
(備考)電線にかかる想定荷重のうち、水平方向の風圧は第58条で規定している支持物の強度を算出する場合に適用する風圧荷重と同じである。なお、架渉線が多導体である場合は、58-1表のとおり電線相互の干渉による低減が考慮される点に注意されたい。
〔解説66.2表〕
(備考)( )はJISにおいて今後できる限り使用しないこと。{ }はJISに規格がないもの。
ACSR:鋼心アルミより線、HDCC:硬銅より線、WC:単位長当たりの質量、WC′:単位長当たりの重量
WW′:980Paの水平風圧、WW:490Paの水平風圧