電気設備の技術基準の解釈の解説
第4条(裸電線等)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.10–12
〔解 説〕 抗張力を考慮すべき金属線、すなわち、架空電線路に使用する電線、支線、架空地線、保護線、保護網、電力保安通信用弱電流電線等の金属線には、それ相当の強度を有するものを使用する必要がある。本条では、これらに使用する金属線の規格を示している。
「その他の金属線」というのは、接地工事の接地線、架空共同地線、架空ケーブル、電力保安通信用ケーブルなどのちょう架用線(メッセンジャーワイヤ)、第100条第5項の規定により特別高圧架空電線と架空弱電流電線又は低高圧架空電線とが交差する場合等に、特別高圧架空電線の両外線の直下部に施設するD種接地工事を施した金属線等を指す。
裸電線でも、バスダクトに使用される銅帯、アルミ帯、剛体トロリーのようなたわみ難い電線や、電気さくの電線のように比較的弱い張力で施設され、かつ、仮に断線しても保安上問題のないものについては、抗張力を考慮する必要がないので除外している。バスダクトに使用される銅帯等と同様なたわみ難い銅帯を接地線として使用する場合も、同様に除外される。また、ライティングダクトの導体については第165条第3項、絶縁トロリー線については第173条第6項でそれぞれ示しているので、本条では除外している。
電力保安通信用弱電流電線以外の弱電流電線については、他の法令(有線電気通信法等)で定められるものであるが、必要な場合には、例えば、第100条第5項第二号イや第207条第一号ハのように、電気工作物の省令への適合の判断基準として、間接的に規定していることがある。
第一号は、電線の熱的性能を示している。ここで言う「通常の使用状態における温度」とは、所定の通電電流及び周囲温度等の使用条件を考慮した電線温度を意味している。
第二号は単線の、第三号及び第四号はより線の規格をそれぞれ示している。
この解釈で電線の引張強さというのは、電線の引張りに対する最大の応力を言い、電線自身が持つ性能の一つを表すものである(一般に単位は、[N]とし、単位断面積当たりの引張強さの場合は、[N/mm2]とする。)。また、電線の引張荷重というのは、電線にかかる引張り方向の荷重をいう(一般に[N]を単位とする。)。なお、日本産業規格JIS等で一般に電線の規格を示す場合には、「引張強さ」は単位面積当たりの引張強さ(N/mm2)を示す場合に使用し、「引張荷重」は電線の破壊荷重(N)を示す場合に使用しているので、留意する必要がある。
また、この解釈では、抗張力を考慮すべき架空電線用等の金属線の強度を指定する場合には、「引張強さ5.26kN以上のもの又は直径4mm以上の硬銅線」というように示している。この場合、硬銅線であれば直径が4mm以上(より線の場合は、直径4mmのものと同等以上の断面積、すなわち12.57mm2以上の計算断面積を有するもの)、他の材料の線であれば引張強さ5.26kNのものを使用すればよく、いずれも引張強さが5.26kN以上必要であることを要求している。
4-1表に示す金属線を単線として使用する場合の引張強さは、同表の単位断面積当たりの引張強さの欄に示される値又は指定された表の値に示される値に、断面積を乗じた値をとればよい。
より線の引張強さは、第三号ロに計算式を示しているように、素線の引張強さの合計に、4-3表に示される引張強さ減少係数を乗じて求める。アルミ系のより線には、素線が圧縮されたものがあり、これらはその素線の断面形状が扇形や矩形であるので、この場合の素線の引張強さは、その素線と等しい円形の断面積になる直径の素線の引張強さと等しい値とみなす。第三号イ(ロ)、(ハ)で規定しているのは複合より線で、大きく分けて銅を導体として使用するものと、アルミを導体として使用するものとの2種類があるが、両者とも、鋼線によって抗張力を得ることに変わりはない。このうちアルミを導体として使用するものは、一般に鋼心アルミより線(ACSR)、鋼心イ号アルミより線(IACSR)と呼ばれているもので、アルミ覆鋼線を外側の導電性のある部分に使用するものは、特別の高抗張力を要する場所以外には使用されない。これらの複合より線は、それぞれの素線の特徴を生かして使用される。
なお、被覆が施された電線の導体については、別表第1から別表第3までに引張強さを示しており、本条の対象となるのはこれらの電線以外の電線である。被覆線の導体の引張強さは、裸電線のそれより若干小さくなるのが普通であるが、この解釈では同等とみなしている。
以下、金属線について述べる。
①硬銅線 一般に、単に硬銅線といえば、単線及びより線の両者を指す。より線は、同じ断面積の単線に比べて耐腐食性、引張強さ等では劣るが、可とう性が大きいので小さい傷に対して強く、かつ、取扱い上の利便が大きいので、危険度の高い特別高圧架空電線を施設する場所や、屋内配線を金属管工事によって施設する場合等には、より線を使用することとしている(他の金属線についても同様)。
硬銅単線の引張強さは、日本産業規格 JIS C 3101(1965)「電気用硬銅線」から採ったものである。別表第1の硬銅線では、より線の素線に使用されるものを考慮して直径0.4mm以上のものから示している。なお、通常単線として使用されるのは直径5mmまでで、特殊なものを除き、これより太いものを使用するときは可とう性のあるより線が使用される。硬銅より線には、日本産業規格 JIS C 3105(1994)「硬銅より線」があるので、一般には、これに適合するものが使用される。
②軟銅線 軟銅線は、一般に張力のあまりかからない接地線等に使用される。引張強さに上限があるのは、硬銅線と区別するためである。軟銅線については、日本産業規格 JIS C 3102(1984)「電気用軟銅線」が定められているので、これに適合するものが使用されている。
③けい銅線 けい銅線は、銅に1.5%以下(普通0.8%位)のすず(ときには更に亜鉛)及び脱酸剤として徴量のけい素を加えて引張強さを増大させた銅合金線である。単線は高抗張力を要する通信線に、より線は山越え、谷越え、川越えなどの長径間のため高抗張力を要する送配電線、通信線に使用されてきたが、最近ではあまり使用されていない。
④C合金線 C合金線は、銅にニッケルをまぜて引張強さを増加させたもので、導電率が35%級、40%級、45%級の3種類のものがある。C合金線の用途は、けい銅線とほぼ同じである。
⑤カドミウム銅合金線 カドミウム銅合金線は、純良な電気銅に適量のカドミウムを加えたもので、硬銅線に比べて導電率はやや低くなるが、引張強さが大きい金属線である。トロリーワイヤ、長径間工事の送電線、通信線、電鉄用フィーダー、メッセンジャーワイヤなどに多く用いられてきた。
⑥耐熱銅合金線 耐熱銅合金線は、純良な電気銅に適量(0.12~0.18%)の銀を加えたもので、硬銅線に比べて導電率は1%程度低くなるが、引張強さは硬銅線と同等である。しかも硬銅線は温度が90℃を過ぎると引張強さが低下するが、耐熱銅合金線は温度が200℃を過ぎても引張強さの低下は極めて少ない。したがって、既設鉄塔をそのまま利用して送電容量を増加しようとする場合、又はこう長が短く、抵抗損による経済的損失よりも鉄塔に要する費用の節減が大きい場合などに、これが使用される。
⑦硬アルミ線 硬アルミ線は、電気用アルミニウム地金(日本産業規格 JIS H 2110)から製造されるもので十分な機械的強度と導電性があり、また純度が高いため耐食性も良好である。硬アルミ単線については、日本産業規格JIS C 3108(1994)「電気用硬アルミニウム線」が定められているので、これに適合するものが使用されている。これらは主としてき電線、配電線用導体として用いられる。その性質を、硬アルミ線と同じ電気抵抗を有する硬銅線と比較すると、解説4.1表のようになる。
〔解説4.1表〕
⑧イ号アルミ合金線 イ号アルミ合金は、電気用アルミニウム地金に対しほとんど腐食に影響のないけい素及びマグネシウムを適当量加え、アルミニウム、マグネシウム及びけい素の合金としたもので、熱処理を行うことによって機械的特性を著しく向上させている。イ号アルミ合金線は、これを線引加工したもので、導電率は52%以上で硬アルミ線より約9%低下するが良導体であり、引張強さは309N/mm2で硬アルミ線の約2倍である。電気的にも機械的にも優れた特性を示し、硬銅線に代わって架空送配電線、電力保安通信線又は大きな引張強さを必要としない電線などに使用される。イ号アルミ合金線の規格は、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-3405-1995「イ号アルミ合金電線」によるものである。イ号アルミ合金線と同じ電気抵抗を持つ硬銅線とを比較すると、解説4.1表のようになる。
⑨高力アルミ合金線 高力アルミ合金線は、引張強さが別表第2の高力アルミ合金線の値で、イ号アルミ合金線と普通アルミ合金線との中間の値であり、導電率は53%以上で、イ号アルミ合金線に比べて、製造工程において1工程減るため安価となる。用途は、アルミ線やイ号アルミ合金線とほとんど同様である。
⑩耐熱アルミ合金線 耐熱アルミ合金線は、イ号アルミ合金線がアルミニウムにマグネシウム等を配合するのに対し2、の元素を配合したもので、導電率は57%以上で硬アルミに比べわずかに劣るが、軟化温度を上昇させた焼鈍し難いアルミ合金線である。硬アルミ線では150℃で引張強さが7~8%低下するが、耐熱アルミ合金線ではほとんど変わらないので、同じ太さの硬アルミ線に比べ高温まで使用することができ、電流容量を大きくとることができる。しかし、導電率が硬アルミ線に比べ少し低下するので、電力損が大きくなることが考えられる。以上の点から既設鉄塔をそのまま利用して送電容量を増加しようという場合又はこう長が短く、抵抗損による経済的損失よりも、鉄塔に要する費用の節減が大きい場合等に、耐熱アルミ合金線を使用することが有効である。
⑪高力耐熱アルミ合金線 高力耐熱アルミ合金線は、高力アルミ合金線に耐熱性をもたせたもので、機械的には同等の特性を有するものである。引張強さ、導電率は、いずれも高力アルミ合金線と同じである。高力耐熱アルミ合金線は、大容量送電線路の谷越え等の長径間箇所など大電流、高抗張力を要求される場合に使用される。
⑫銅覆鋼線 銅覆鋼線にはカッパーウェルド線と銅めっき鋼線(カッパープライ線と呼ばれ、略して、CP線ともいう。)
がある。カッパーウェルド線は、鋼心の外側に同心円状に銅を被覆溶着したもので、この金属の溶着部は結晶的に結合しており、鋼は抗張力を得るためのもので、導電率は銅の被覆の厚さによって定まる。これは、高抗張力を要する送配電線、通信線、架空地線などに使用される。カッパーウェルドのみのより線は、特に、長径間の場合に用いられる。CP線は、特殊な電気めっき法(例えばケンモア方式など)によって鋼心の周囲に電気銅を完全、かつ、一様の厚さに被覆した鋼心銅線で、鋼線の有する強じん性と銅の有する導電性、耐食性とを兼備した電線である。導電率の差異は、銅被覆の厚さにより定まる。CP線は、電力用としては長径間送電線、積雪地帯の送電線、架空地線、埋設地線、メッセンジャーワイヤや支線として好適である。
⑬アルミ覆鋼線(アルモウェルド線を含む。) アルミ覆鋼線は、鋼線にアルミを圧着させたもの又は特殊配合の熱処理ずみ鋼線材の表面を清浄にし、その外周に特殊製法による電気用アルミの粉末を一定の厚さに被覆した後、強い圧力と適当な加熱により強固に圧接して荒引線を製作する。この荒引線を特殊ダイスにより冷間伸線させたもので、アルミを鋼にめっきしたものは含まない。
アルミ覆鋼線には、超強力アルミ覆鋼線、特別強力アルミ覆鋼線、強力アルミ覆鋼線、普通アルミ覆鋼線がある。特別強力アルミ覆鋼線は、鋼線として導電率が9%、引張強さが1,670~1,770N/mm2のものを用いたものである。したがって、この線の導電率及び引張強さは、この鋼線と硬アルミ線のそれぞれの値から次の計算によって求められる。
〔数式:導電率〕
〔数式:引張強さ〕
S1:アルミ部分の断面積、S2:鋼部分の断面積。
強力アルミ覆鋼線は、鋼線として引張強さが1,570N/mm2のものを用いたものであり、また普通アルミ覆鋼線は、鋼線として引張強さが1,370N/mm2のものを用いたものである。
⑭アルミめっき鋼線 アルミめっき鋼線は、熱式めっき法によって鋼にアルミをめっきしたもので、アルミの融点が亜鉛に比べて高いため、アルミめっき鋼線の引張強さは亜鉛めっき鋼線より劣る。しかし、アルミめっき鋼線は、アルミめっきの表面に酸化被膜ができるため、亜鉛めっき鋼線よりも腐食に対しては優れている。アルミめっき鋼線は、主として鋼心アルミより線の鋼心として使用される。
⑮アルミ覆インバー線及び亜鉛めっきインバー線 アルミ覆インバー線は、インバー線にアルミを圧着させたもの、亜鉛めっきインバー線は、インバー線に亜鉛めっきのさび止めを施したものである。インバー線は、ニッケルを多く含む鉄合金で、熱膨張係数が鋼線と比べ1/5程度と小さく、耐熱アルミより線と組み合せて使用することにより、電線地上高をACSRに比べ低くできる特徴を持っている。
⑯亜鉛めっき鋼線 亜鉛めっき鋼線は、その引張強さにより、超強力亜鉛めっき鋼線、特別強力亜鉛めっき鋼線第1種、第2種と普通亜鉛めっき鋼線第1種から第3種まで示している。亜鉛めっき鋼線は導電性が劣るので、特別強力亜鉛めっき鋼線は鋼心アルミより線の鋼心又は架空地線に使用され、普通亜鉛めっき鋼線は架空地線、ちょう架用線、支線又は保護線等に使用される。なお、普通亜鉛めっき鋼線の規格は、日本産業規格 JIS G 3537(1962)「亜鉛めっき鋼より線」
を基に定めたものである。
⑰鉄線 鉄線は、その引張強さが294N/mm2以上のものである必要がある。鉄線の外面は腐食され易いので、必ず亜鉛めっきその他のさび止めめっきを施す必要がある。導電性が劣るので、電線として使用されることはほとんどなく、支線又は保護線に使用される。