電気設備の技術基準の解釈の解説
第16条(機械器具等の電路の絶縁性能)
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〔解 説〕 本条は、変圧器、回転機、整流器、燃料電池、太陽電池モジュールその他これらの機器以外の諸器具並びに接続線及び母線等の電路の絶縁性能を定めた規定である。
これらの変圧器、器具等の中には、接地線に接続する抵抗器、リアクトル等の常時は電圧が加わらないものもある。
これら電路でないものに絶縁耐力による絶縁性能の基準を適用することは適当とはいえず、別途、第19条第2項において接地工事の方法としての規定を設けていること、試験電圧は充電部分を念頭とした最大使用電圧によって規定してきたことから、H4基準で本条の対象は「電路」に対するものである旨を明らかにした。
第1項
第1項は、一般の変圧器の電路の絶縁性能に関する規定であり、巻線ごとに絶縁性能を示し、全体としての絶縁性能を規定している。放電灯用変圧器、エックス線管用変圧器、試験用変圧器、計器用変成器等の特殊な用途に供される変圧器については、その構造及び使用条件が一般の変圧器と異なっているので、本項から除外した(以下この章では単に変圧器という場合には、これらの特殊変圧器を除くことにした。)。これらのうち、エックス線管用変圧器については第194条が、放電灯用変圧器については第185条第4項及び電気用品安全法がそれぞれ適用される。計器用変成器は、変圧器とは考えず、その絶縁耐力は第6項に規定している。
第一号は、絶縁性能として、耐電圧試験電圧を加えたときこれに耐える性能を有することを規定している。「電圧を加える」方法としては、外部電源により試験電圧を発生してこれを印加することばかりでなく、自ら誘導により被試験端子間に試験電圧を発生させるいわゆる誘導電圧試験も考えられる。16-1表に変圧器の巻線の種類に応じた試験電圧及び試験方法を示しているが、その内容を解説16.1表に示すように分類して解説する。
〔解説16.1表〕
Bは、いわゆる三相4線式の11.4kV特別高圧架空電線路のうち、中性線多重接地方式の電路に接続される変圧器の巻線の絶縁性能で、配電用変電所に設置される変圧器の2次側巻線と柱上変圧器の1次側巻線がこれに該当する。試験電圧値については、第15条の解説(解説15.1表のC)を参照されたい。
DからIまでの最大使用電圧が60kVを超える電路の試験電圧については、基本的に第15条(解説15.1表のE、F、G、H)と同じ考え方である。
Eは、H23解釈で追加したものであり、それまで明確でなかった最大使用電圧が170kV以下の中性点直接接地系統に使用される変圧器の試験電圧を明確にしたものである。最大使用電圧が170kVを超えるものについてはFで最大使用電圧の0.64倍としているが、その根拠となっている検討結果を最大使用電圧が170kV以下のものへ単純に反映することはできないため、過去の実績に基づき、最大使用電圧の0.72倍とした。
Fは、いわゆる超高圧変圧器を対象としたものである。Fの試験電圧値は、第15条の解説(解説15.1表のF)で示すとおり、Gの試験電圧0.72倍のもととなった各数値の見直し検討結果に基づくものである。
Gの試験電圧の値は、電気学会電気規格調査会試験電圧標準特別委員会が電気技術基準調査委員会の依頼に対し、検討した結果である。0.72倍という値は、1線地絡時の健全相の対地電圧上昇係数(k1=1.4/√3)、故障継続時間を0.2秒として試験時間10分に換算する係数(k2=0.55、v-t曲線にはBellaschi Teagueの1/4" 油中間隙によるものを採っている。)、負荷遮断による電圧上昇係数(k3=1.35)及び安全係数(k4=1.2)の積により得られたものである。
Gで、中性点を直接接地せずに避雷器を施設するのは、系統規模の拡大に伴って、事故時の故障電流が増大する傾向にあり、送電線に接近する通信線の電磁誘導電圧が大きくなるため、従来の誘導軽減対策のみでは処理できない場合も予想されるので、地絡電流を抑制するために行うものである。ただし、中性点を直接接地せずに避雷器を施設した変圧器を無負荷状態で欠相投入や欠相遮断を行うと、回路条件によっては直列共振を生じ、危険な異常電圧を発生するおそれもあるので、実際の施設や運用にあたっては十分に注意する必要がある。
F又はGの試験方法(※2又は※3)を例として試験方法の2例を図解すると、解説16.1図のとおりである。
解説16.1図(a) 解説16.1図(b)
解説16.1図(c)
解説16.1図 (b) の例でもわかるように、被試験巻線の中性点は直接接地する必要はなく、線路端と大地との間に規定の試験電圧が加わればよいのであり、Fについては中性点の絶縁性能を決めていない。ただし、解説16.1図 (b) の方法による場合、中性点が大地より浮くので、中性点の絶縁レベルとの関係において試験方法を選定しなければならない。
また、解説16.1図 (b) の方法による場合は、相を変えて1つの変圧器につき3回試験を行う必要がある。
Gの場合は、1線地絡事故時の中性点端子の対地電位の上昇を考慮する必要があるが、このことに関して、電気技術基準調査委員会発変電専門委員会で検討した結果、中性点端子の絶縁性能は、次の理由により最高使用電圧の0.3倍の試験電圧で試験すればよいということになった。すなわち、超高圧変圧器が接続される直接接地系統では、1線地絡時の健全相の対地電圧値は、地絡前の健全相の0.8倍以下である。よって、解説16.1図 (c) のような円線図を考えると、中性点の対地電位の上昇は、0.34Eを超えることはないので、中性点端子の試験電圧は、電圧端子の試験電圧にこの対地電位上昇の比を乗じて求める。つまり、
0.72E×0.34/0.8=0.306E
となる。計算の基礎となった0.72Eは、安全率が見込まれているので、0.3Eとしても実質的に問題ない。
Hは、S30工規で追加されたものである。高電圧大容量変圧器は資材の節減、全重量の軽減を図るため、中性点の絶縁を線路側端子の絶縁の1/√3程度に低減し、雷インパルス電圧による高電圧に対しては、その中性点は許容端子電圧が線路側に設ける避電器の許容端子電圧の1/√3程度の避雷器を接続することによって保護するものが広く採用されている。
このような変圧器は、Iに規定する方法により試験を行えないので、その方法を「※4」として別掲しているわけである。
※4は、好ましいことではないが、立法技術上、試験の方法(解説16.2図はその一例である。)をそのまま規定している。
解説16.2図(a) 解説16.2図(b)
解説16.2図(c)
解説16.2図(d)
解説16.2図(e)
S43基準でただし書が加えられ、三相交流の試験電圧で行うことが困難な場合は、単相交流で試験できることを明確にしている。これは一般に行われている試験方法であるが、運用面で問題となることも考えられたので明確化したものである。解説16.2図 (a) 及び (b)は段絶縁となっている高電圧側巻線の三相交流による誘導試験方法であるが、「任意の1端子」という規定の表現は「どの端子でも」ということになるので、実際の試験に際しては、更に接地側の端子を取り換えて合計2回試験する必要がある。なお、この場合、低電圧側の巻線の1端子を接地するのは、高電圧側の巻線と低電圧側の巻線との間の絶縁性能をも試験するためである。解説16.2図 (c)及び (d) は、単相交流による試験方法である。試験電圧は試験用変圧器により発生させる場合もあれば、発電機の単相運転による場合もある。解説16.2図 (c) のように
a相、b相、c相の各端子それぞれに行い、最後に解説16.2図 (d) のように中性点端子に行う。解説16.2図(b) では、中性点端子には1.1/2・Eの電圧しか印加されないので、再度、中性点端子に1.1/√3・Eの電圧の試験を加える必要がある。
表中の0.64及び0.96は、1.1/√3=0.64、√3/2×1.1=0.96の意味である。S43基準では、星型結線の三相変圧器だけでなく、単相変圧器についても、また、S51基準では、スコット結線変圧器のT座巻線と主座巻線の接続点の絶縁を低減した場合(→解説16.2図 (e) )も、Hの試験電圧及び試験方法を適用できることとした。
Jは、整流器に接続する巻線に対する耐電圧試験値で、この数値については、第15条の解説を参照されたい。
なお、本号に規定されている試験方法は、絶縁性能を確認する1つの方法であり、この試験方法により絶縁耐力試験を行うことを必ずしも要求しているものではない。
第二号は、JIS、JECに基づいて製作された変圧器に対する常規対地電圧による絶縁性能の確認について述べたもので、詳細については、第15条の解説を参照されたい。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。
第2項
第2項は、回転機の絶縁性能を定めたものである。電路に加わる電圧及び最大使用電圧に対する考え方については、第15条の解説を参照されたい。回転機の電路についても、特別高圧のものでは絶縁の裕度が少ないこと及び回路の保護も一般に完備していること等を考慮して、高圧以下のものよりも試験電圧の倍数を小さくしている。最低の試験電圧を500Vとしたのは、強電流電気工作物として電路を絶縁する以上は、絶縁の劣化等を考えて当然この程度の絶縁耐力を必要とするからである。なお、第1項の変圧器等の規定には、60,000Vを超える中性点接地式電路の試験電圧低減の規定があるが、回転機においてこのような高い電圧を使用することは一般的でないので、本項には規定していない。
回転変流機の場合に、直流側の電圧に等しい交流電圧を加えることは、(直流側電圧)=√2×(交流側電圧)の関係から、交流側の電圧の√2=1.414倍を加えることになり、発電機や電動機などの1.5倍とほぼ同じ絶縁強度を要求することとなる(直流側から見れば、波高値√2倍の交流電圧で試験することになる。)。
第二号は、H4基準で、大容量の交流回転機の場合は静電容量が大きくなり、交流で絶縁耐力試験を行うには大容量の電源設備が必要となって、その実施が困難な場合が多いことから、比較的簡単に実施できる直流試験によることができるようにした。この場合の試験電圧は交流試験電圧の1.6倍とし、これに耐えればよいこととした。交流試験電圧の1.6倍は、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-114-1979「同期機」(2000年にJEC-2130として改訂)に準じている。
第三号は、JIS、JECに基づいて制作された最大使用電圧が7,000V以下の誘導電動機に対する常規対地電圧による絶縁性能の確認について述べたもので、考え方は第15条の解説と同様である。
第3項
第3項は、整流器の絶縁性能を定めたもので、考え方は第2項と同様である。また、交直変換装置の絶縁性能については、第15条の解説を参照されたい。
第4項
第4項は、燃料電池の絶縁性能を定めたものである。試験電圧は、最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は実際に試験する際の便宜のため1倍の交流電圧とした。最大使用電圧(直流)の1倍の交流電圧としたのは、波高値=√2×交流電圧実効値≒1.5×直流電圧となり、同等の絶縁強度を要求することになるためである。
第5項
第5項は、太陽電池モジュールの絶縁性能を定めたもので、第一号の試験電圧の考え方は第4項と同じである。第二号は、使用電圧が低圧の場合、日本産業規格JIS C 8918(2013)又はJIS C 8939(2013)に適合した場合、省令第58条の規定に準ずることにより確認できることを示している。H18解釈では小規模発電設備の場合に適用できる規定であったが、
H25解釈で、使用電圧が低圧の場合にも適用できると規定した。
これらの日本産業規格では、太陽電池モジュールは
(試験電圧)=2×(最大システム電圧)+1,000V
の直流電圧で1分間の試験に耐えることとなっており、これに合格した太陽電池モジュールであれば、第一号の試験にも十分耐えるものと考えられる。
第6項
第6項は、第1項から第5項までで絶縁性能を定めている主要機器以外の諸器具や接続線、母線等の電路の絶縁性能を定めたもので、その範囲は、例示の器具に類する器具であり、電気を供給する電路の附属設備的器具である。S40基準では、「計器用変成器等の器具」としていたものをS43基準で「…計器用変成器その他の器具」とした。ここでいう「その他の器具」は、法令上、例示の器具よりも意味の広い用語であるが、使用電圧が低圧の電気使用機械器具については省令第58条が適用されることから、H23解釈で「(…使用電圧が低圧の電気使用機械器具を除く。)」とした。
第一号から第三号までの考え方は、第15条及び本条第1項から第5項までと同じである。第1項は、変圧器の場合なので、試験電圧は交流であるが、本項は、直流の器具等についても適用されるものであり、直流用の遮断器、母線等については、本項で計算した直流試験電圧に耐えるものであることとしている。
第一号で、最大使用電圧7,000V以下の器具等については、燃料電池発電設備及び太陽電池発電設備の設置により開閉器、逆流防止ダイオード(太陽電池設備の保護のために設置されるもの)等、直流充電部分を有する器具等が増加することから、実際に試験する際の便宜のため直流充電部分についても交流の試験電圧を規定した。イのかっこ書きは、多心ケーブルによっては、1線と大地との間の絶縁よりも、心線相互の絶縁の方が弱い場合もあり得るので、心線相互間の絶縁耐力をも定めたものであるが、SLケーブルのように各心線を大地電位の鉛被で覆ったものでは、心線と大地との間の絶縁耐力が規定以上であれば、心線相互間も規定以上であることは当然である。
第四号は、第三号までと別に、器具等の絶縁性能を示している。
イに示す接地型計器用変圧器(コンデンサ形計器用変圧器を含む。)及びロに示す電力線搬送用結合コンデンサは、一般に、接地側の絶縁を低減していること、コンデンサ容量の影響を受け現地での耐電圧試験が困難であること等の理由により、それぞれ個別の絶縁性能を示している。ハに示す電力線搬送用結合リアクトルは、高圧配電線と大地間に設置して、配電線の機器等の遠隔制御に用いられるものである。ニに示す雷サージ吸収用コンデンサ、地絡検出用コンデンサ及び再起電圧抑制用コンデンサは、接地型計器用変成器と同様な理由で、H7基準において追加された。
避雷器についても、その性格上高電圧が印加される時間は数10μsのごく短時間であり、10分間課電は特性要素、並列抵抗等に悪影響を与え、動作特性の変化、性能の低下などのおそれがあるので、ホでその絶縁性能を規定している。また、S61基準で酸化亜鉛形避雷器、H23解釈で高性能避雷器についての規定を追加した。
なお、この解釈では、基本的に現地で確認できる方法で電路の絶縁性能を規定しているが、上記の接地型計器用変圧器等については、現場試験の実施に当たって各種の難点があるため、やむを得ず工場試験による方法で規格としての絶縁性能を示したものである。
第五号は、H25解釈で追加されたものである。1500V以下の電路に施設される電力変換装置の絶縁性能については、JEC-2470(2017)(JEC-2470(2018)にて追補)による絶縁耐力試験及び常規対地電圧の印加試験により確認できることを示している。