電気設備の技術基準の解釈の解説
第15条(高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能)
経済産業省の一次資料を確認(新しいタブで開く)該当頁の目安 p.24–27
〔解 説〕 本条は、高圧及び特別高圧の電路の絶縁性能について定めている。電路絶縁の原則から除外した部分(→第13条)、変圧器、回転機、整流器、燃料電池、太陽電池モジュール、器具等の電路(→第16条)及び直流式電気鉄道用電車線(→第205条)の電路は適用除外としており、高圧又は特別高圧の屋内配線、移動電線、電気使用機械器具、架空電線路、地中電線路、交流電車線路などが本条の対象である。
高圧及び特別高圧の電路については、絶縁抵抗試験は一つの目安としては意味があるが、使用電圧が高くなると十分にその効力を発揮することができないので、絶縁耐力試験により絶縁の信頼度を定めている。電路の絶縁が十分であり、実際に使用した場合、絶縁破壊等を起こすことがないことを確認する方法として、一定の電圧による耐圧試験に耐えればよいことを示したものである。
なお、本条をはじめ、この解釈で規定する電気工作物の絶縁耐力というのは、電気工作物の有すべき絶縁性能について規定しているのであって、絶縁耐力試験を行うことを義務づけているものではない。したがって、この解釈では「…絶縁性能を有すること。」、「…耐える性能を有すること。」という表現を用いている。
電路に加わる電圧には、正常の運転中の常規電圧のほかに、1線地絡等の事故時の異常電圧、電路の投入又は遮断時の異常電圧、雷電圧の侵入による異常電圧等があり、絶縁破壊の多くは、これらの異常電圧が原因となって起こるものであるから、電路の絶縁は、常規電圧に耐えるだけでなく、これらの異常電圧を考慮して定めなければならない。しかし、雷電圧に対する絶縁の強度を雷インパルス耐電圧試験によって試験することは、現場試験としては甚だしく困難であるので、雷電圧に対しては避雷器の施設(→第37条)を規定するにとどめ、絶縁の良否を試験する試験電圧値は、事故時や電路の遮断時の振動性の異常電圧を対象として定められている。しかし、これらの異常電圧に対応する短時間の高電圧を現場試験として加えることは困難であるので、15-1表に規定する一定電圧を連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有するものであることを規定している。
第二号は、長距離の高圧用又は特別高圧用ケーブルの場合には、静電容量が大きくなり、交流を用いて絶縁耐力試験を行うには、大容量の電源設備が必要となってその実施が困難な場合が多いため、このような場合にはケノトロン等を使用して、比較的簡単に実施し得る直流試験を行ってもよいこととしている。また、この場合の試験電圧は交流試験電圧の2倍に耐えれば安全であると考えている。
15-1表は、電路の種類に応じた試験電圧を示しているが、その内容を解説15.1表に示すように分類して解説する。
〔解説15.1表〕
A、Bは、高圧電路についてであり、H23解釈でBの直流の場合を明確化した。
Cは、6kV高圧架空電線の結線方法を変更して11.4kV(=√3×6.6kV)三相4線式の特別高圧架空電線路としたもののうち、中性線多重接地式電路については、1線地絡事故時の健全相の持続性対地電圧が、常規線間電圧の80%以下、すなわち常規対地電圧の1.4倍以下に保持し得る配電系統(有効接地系)であることから、最大使用電圧の0.92倍の電圧で電路と大地間を試験したとき10分間これに耐えればよいこととしている。この試験電圧値は、電気協同研究会配電方式専門委員会の高圧配電系統分科会で研究されて結論を得たものであって、上記有効接地系の電線路にあっては、1線地絡事故時の健全相電圧上昇係数(k1=1.4/√3)、故障継続時間を2.0秒として試験時間10分間に換算する係数(k2=0.72)、負荷遮断による電圧上昇係数(k3=1.05)、安全係数(k4=1.5)の積として0.92という値が算出されている。
E、F、G、Hの最大使用電圧が60kVを超える電路については、高電圧であるため絶縁強度の余裕を大きくとることは経済的負担も大きいことから、いくつかの条件により試験電圧を低減している。
中性点が接地されているものは、異常電圧の大きさが非常に小さいことから、最大使用電圧の1.1倍を試験電圧値の基本としている(H)。ただし、電位変成器のみで中性点を接地した回路は、故障の検出及び遮断が迅速に行われても、異常電圧を低下することはできないので、中性点接地式電路には含めないことにしている。実際の60kV以上の電力系統は、多くは抵抗接地式又は消弧リアクトル接地式となっているので、この規定が適用される場合が多い。
F、Gは、超高圧電線路に対する試験電圧についてである。
Gの0.72倍という値は、1線地絡時の健全相の対地電圧上昇係数(k1=1.4/√3)、故障継続時間を0.2秒として試験時間10分に換算する係数(k2=0.55、v-t曲線にはBellaschi Teagueの1/4" 油中間隙によるものを採っている。)、負荷遮断による電圧上昇係数(k3=1.35)及び安全係数(k4=1.2)の積により得られたものである。
Fは、電気技術基準調査委員会絶縁耐力分科会においてGの試験電圧0.72倍の基となった各数値の見直しを行い、その検討結果に基づき、S51基準で新たに設けられたものである。すなわち、分科会で現在及び将来の超高圧直接接地系統全般について解析を行い、1線地絡時の健全相の対地電圧上昇係数k1は、その中性点が直接接地されている発蓄変電所等については、1.25/√3を超えることはなく、k2、k3、k4については、従来の数値で妥当なものとされた。この結果、その中性点が直接接地されている発蓄変電所等については、試験電圧の値をk1・k2・k3・k4=1.25/√3×0.55×1.35×1.2=0.64倍としたものである。
換言すれば、ここにいう中性点直接接地系統は、1線地絡時の健全相の対地電圧上昇を常規線間電圧の1.4/√3倍以下に保持するとともに、特にその中性点が直接接地されている発蓄変電所等については1.25/√3倍以下に保持し得る送電系統で、接地事故継続時間が十分短い(おおむね0.2秒以下)ものということになる。
I、Jは、交直変換装置に対する耐電圧試験値を示している。その内容は、「直流電気設備に関する技術基準の整備について」(電気技術基準調査委員会 昭和54年7月答申)を踏まえるとともに、過去に旧省令第4条【特殊な設計による施設】及び旧省令第5条【認可申請】の規定により特殊設計施設認可(以下「特認」という。)申請し、認可されている内容と同じものである。
Iの1.1倍という値は、直流送電線地絡又は制御系の異常による過電圧倍数の最大値(k1=1.7)、過電圧継続時間を0.1秒として試験時間10分に換算する係数(k2=0.5、V-t曲線にはBellaschi-Teagueの1/4”油中間隙によるものをとっている。)、安全係数(k3=1.2)の積である1.02≒1.1として求めたものである。
ここで最大使用電圧Vmは、以下のとおりとする。
交流の場合、整流器用変圧器直流巻線側の交流定格電圧(線間電圧、実効値)をEとすると、最大使用電圧は、1段積み(6相整流)の場合
Vm=E
2段積み(12相整流)の場合
Vm=1.93E(注)
となる。
(注)2台の整流器用変圧器(Y-Y結線とY-△結線)に30°の位相差があるため、Vm=2Ecos15°=1.93E
解説15.1図
直流の場合、整流器の直流側の定格電圧(対地電圧、平均値)を最大使用電圧とする。
Jの「直流側の中性線又は帰線となる電路」(直流低圧側電路)の試験電圧は、異常電圧が回路全体の特性、制御方式や線路亘長に大きく支配されるだけでなく、接地端からの距離によって線路上で変化する等、変化範囲が広いため、試験電圧を使用電圧に対応させて一律に定めることは困難なので、各施設において発生する異常電圧に見合った電圧値とすることとして、値を決めている。ここで、1/√2は直流電圧を交流実効値に換算する係数、0.5は異常電圧継続時間を0.1秒として、試験電圧10分間に換算する係数、1.2は安全係数である。かっこ書きで示している周波数変換装置(FC)や非同期連系装置(BTB)のような交直変換装置については、直流送電線をもたないものもあり、その場合は、低圧側電路は接地点からごく近くで、異常電圧の発生はほとんどないことから、絶縁耐力試験を省略できる。
なお、電線にケーブルを使用する場合は、第二号の規定により、直流電圧で試験をしてもよい。
第三号は、H9解釈において新たに定めたもので、最大使用電圧が170kVを超える両端が中性点直接接地されている地中電線路については、15-1表の「中性点が直接接地されている発電所、蓄電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所に施設するもの」に準じて試験電圧を最大使用電圧の0.64倍とすることを選択できるようにしたものである。試験電圧0.64倍という値は、電気学会ケーブル系統の過電圧調査専門委員会の「ケーブル系統における過電圧と評価」(平成6年12月)
において、中性点が直接接地されている地中電線路も、電圧上昇係数k1が1.25/√3を超えることがないことが確認されたため、この電路の試験電圧をFと同様に1.25/√3×0.55×1.35×1.2=0.64としている。また、試験時間については、Gの0.72倍10分試験と同じレベルにした。
第四号は、H10解釈で日本電気技術規格委員会規格 JESC E7001(1998)を引用し新たに定めた規定である。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。
電気機械器具、電線路などの絶縁性能については、電気学会電気規格調査会標準規格(JEC)、日本産業規格(JIS)において製品の絶縁耐力が定められており、これに耐えたものは、解釈で規定する絶縁性能を有し技術基準に適合するものと判断できるはずであるが、JEC、JISに定める耐電圧試験は法的強制力をもつものではないこと、輸送や現場組立の良否が絶縁性能に影響することもあるとの理由から、電気工作物の絶縁レベルを判定する要件として、15-1表に基づいた電圧による耐電圧試験に耐える性能を有することを規定してきた。これに対し、送変電設備については、
・法的強制力はないが、JEC、JISに基づき工場において15-1表の試験電圧を上回るレベルでの耐電圧試験を実施していること。
・絶縁に関する設計手法(製品の輸送と現場作業箇所数の低減化、現地作業の容易さに配慮した設計など)の確立、施工管理技術の向上、絶縁材料の品質向上による設備性能低下要因の排除に伴い、送変電設備の事故率は減少の一途をたどっており、中でも現地施工不完全に起因する事故率は確実に減少していること。
により、絶縁性能は確実に確保されるようになってきている(詳細については、電気協同研究会第53巻第4号「送変電設備の現地耐電圧試験合理化」及び電気協同研究会第69巻第2号「電力用変圧器の分解輸送・現地作業品質管理基準」を参照されたい。)。こうしたことから、絶縁性能を確認する1つの方法として、JEC、JISに基づき工場で耐電圧試験を実施したものについて、その性能が確実に確保されるように管理され維持できていることの現地据付状態における最終確認として、常規対地電圧を10分間印加することで、15-1表に基づく現地耐電圧試験と同等であると解釈することにしたものである。常規対地電圧の印加時間は、送変電設備に所要電圧が安定して印加され、絶縁性能に影響がないことを確認できる時間として、従来から実績のある10分間とした。また、「常規対地電圧」とは、通常の運転状態で主回路の電路と大地との間に加わる電圧をいう。
なお、上記最終確認において、自家用電気工作物にあっては、電路の絶縁破壊等により電気事業者の電力系統へ事故が波及することもあるので、電力系統に接続する前に行うことも1つの方法である。
ケーブル及び接続箱の耐電圧試験値については、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-3401-1986「OFケーブルの高電圧試験法」及びJEC-3408-1997「特別高圧(11kV~275kV)架橋ポリエチレンケーブル及び接続部の高電圧試験法」に詳しく説明されているので、参照されたい。
架空電線路の絶縁耐力はがいしによって確保されるが、一般にがいしは連結して使用されることが多く、電路の所要耐電圧をその1つ1つが分担して絶縁を確保していることから、がいし1個の所要耐電圧は15-1表に掲げる試験電圧よりもかなり小さな値となる。しかし、JESC E 7001で参照しているJISにおける注水耐電圧試験値はこの値を十分に上回るものであることから、これに適合するがいしを使用する場合は、常規対地電圧を10分間印加することでもよいこととしている。また、JESC E 7001に示すJIS適合品以外のがいしであっても、これら使用実績のあるがいしに相当する注水耐電圧試験値によって、絶縁耐力を確認したものについてはJIS適合品と同等のものとして扱える。