電気設備の技術基準の解釈の解説
第198条(電気浴器等の施設)
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第1項
〔解 説〕 第1項は、一般の公衆浴場で浴槽の両極に極板を設け、これに微弱な交流電圧を加えて入浴者に電気的刺激を与える設備について規定している。この設備は、人体が湯の中にある状態なので感電事故発生の条件としては最も危険なため、本来ならば禁止すべき施設(→第151条第2項解説)であるが、本項各号の規定により保安上十分な安全度の高い施設方法による場合に限って認めている。
第一号は、電気浴器に電気を供給する電源装置は、電気用品安全法の適用を受けるものとすることを規定している。
電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈では、電気浴器用電源装置は混触防止板を設けた絶縁変圧器を有することとしている。一般の低圧配電線路は、柱上変圧器により高圧から低圧に変成しており、低圧配電線路の1線にはB種接地工事が施されている。高低圧混触事故の際には低圧側電路の電位が上昇するが、絶縁変圧器を介すことにより、浴槽内の電極にこの電圧が加わることを防止でき、通常の使用状態においてもB種接地工事の接地極と浴槽内の電極間に横流が生じることを防止できる。また、混触防止板を設けることにより雷インパルス、開閉サージ等の異常電圧の侵入を抑制することができる。なお、電気浴器用電源装置は、銀イオン殺菌装置の電源としても使用されることから、電気浴器用と銀イオン殺菌装置用とを区別するため、電気浴器用としては内蔵されている電源変圧器の2次側電路の定格電圧が10V(実効値)以下の表示のものを使用することを規定している。
第二号は、電気浴器用電源装置の金属製外箱及び電線を収める金属管にはD種接地工事を施すように規定しているが、前述のように安全を図るため接地抵抗値はできるだけ低いほうがよいので、条文上では規制されていないが、C種接地工事を施すことが望ましい。
第三号は、電気浴器用電源装置は浴室以外の乾燥した場所で、一般の公衆が触れないような場所に設置することを規定している。これは取扱者以外の者の安全を図るとともに、これらの電気使用機械器具が湿気等によって事故を生じると公衆の安全に対して影響が大きいためである。
第四号及び第五号は、浴槽内の電極に人が触れることのないように規定している。このため電極相互の距離を1m以上とし、電極には、例えば堅固なわくを設けるなど、人が容易に触れるおそれがないように施設する必要がある。
第六号は、電気浴器用電源装置から直接浴槽内の電極に微弱な電圧を供給するための工事方法を規定している。工事方法は原則として、安全度の高い合成樹脂管工事、金属管工事若しくはケーブル工事又は電線の断面積が1.25mm2以上のキャブタイヤコードを合成樹脂管(厚さが2mm未満の合成樹脂製電線管及びCD管を除く。)若しくは金属管の内部に収めて、管を造営材に堅ろうに取り付ける場合のいずれかによるべきである。しかし、乾燥した場所であって、展開した場所では、その施設条件によっては他の工事方法も認められている。なお、浴場では化学的に多様な成分の温泉水が使用されることがあるので、これらの工事に使用される電線には、ゴム絶縁電線よりもビニル絶縁電線その他化学的に耐性のある絶縁電線を使用することが望ましい。
第七号は、浴槽の電極までの配線(浴槽内の電極を除く。)相互間及び配線と大地との間の絶縁抵抗は、常に0.1MΩ以上に保つことを規定している。
第2項
第2項は、銀イオン殺菌装置の施設について規定している。銀イオン殺菌装置は多人数が入浴する各種の事業所、独身寮、社会福祉施設(高齢者福祉施設、身体障害者養護施設)内の浴場、リハビリテーション病院のハーバートタンク、訓練用プールなどの用水を殺菌する目的で施設されるもので、電極に高電圧が侵入すると水中にいる人が非常に危険であることからその施設方法について規定している。したがって、人が入る浴槽、プール等に銀イオンにより用水を殺菌する装置を施設する場合は、この条文が適用されることとなる。
なお、これは人体が湯(水)の中にある状態なので感電事故発生の条件としては最も危険なので、本来ならば禁止すべき施設(→第151条第2項解説)であるが、本項各号の規定により保安上十分に安全度の高い施設方法による場合に限って認めている(→解説198.1図)。
解説198.1図
第一号は、銀イオン殺菌装置に電気を供給する電源装置は、電気用品安全法の適用を受ける電気浴器用電源装置とすることを規定している。
第二号は、電気浴器用電源装置の金属製外箱及び電線を収める金属管には、D種接地工事を施すことを規定している。
しかし、安全を図るため接地抵抗値はできるだけ低いほうが望ましい(→前項第二号解説)。
第三号は、電気浴器用電源装置は、浴室以外の乾燥した場所で、取扱者以外の者が触れないような場所に設置することを規定している。これは、取扱者以外の者の安全を図るとともに、これらの電気使用機械器具が湿気等によって事故を生じると公衆の安全に対して影響が大きいためである。
第五号は、電気浴器用電源装置から直接浴槽内の電極に微弱な電圧を供給するための工事方法を規定している。工事方法については、前項第六号と同様な方法を認めているが、電圧がわずかながら高くなっていることから、合成樹脂管又は金属管に収めることとした。
第六号は、浴槽の電極までの配線(浴槽内の電極を除く。)相互間及び配線と大地との間の絶縁抵抗は、常に0.1MΩ以上に保つことを規定している。
第3項
第3項は、温泉地等において温泉水の温度を上げるための電極式の温水器、いわゆる電極式温泉昇温器を対象としたもので、工場等において使用する温水器、電気ボイラー等に適用されるものではない。
第一号では、昇温器の使用電圧を制限しているが、これは水管を通して高電圧が浴そうに現れてはならないので、300V以下に限ったものである。
第二号で、昇温器に電気を供給するためには絶縁変圧器を使用することとしているのは、一般の低圧配電線路は、柱上変圧器により高圧から低圧に変成されているので、高低圧混触事故の際の低圧側電路の電位上昇の影響を昇温器に与えないためと、一般に低圧配電線路の1線にはB種接地工事が施されているので、その接地極と昇温器の遮へい装置とを通じて常時大地に横流を生じ、地表面に危険な電位傾度が現れるおそれがあるためである。
ここで、昇温器に附属する給水ポンプとは、昇温器に近接した箇所に施設するものを指しており、昇温器と関連して動作するものであるから同一電源から供給するのがよく、これも昇温器と同様、比較的浴槽に近接した箇所に施設されるので事故の際の危険を防止するため、昇温器と同様の取扱いをしている。
ロでは、絶縁変圧器は、いかなる箇所に設置する場合でも、接地工事を施す必要があることを示している(→第29条)。
ハでは、絶縁変圧器の絶縁耐力について規定しているが、これは柱上変圧器の低圧側における試験電圧、日本産業規格JIS C 4304に準じたものである。
第三号は、昇温器と附属給水ポンプとの関連及び絶縁変圧器の保護を考慮して、絶縁変圧器の入力側に開閉器と過電流遮断器を施設することとしている。
第四号では、絶縁変圧器に接続できる負荷を限定しているが、これは他の電気機械器具に地絡事故を生じた場合に横流を防止するためである。
第五号では、昇温器の電極の電位が外部に現れるのを防止するために、温泉水の流入口及び流出口には、遮へい装置を設けることを規定している。ここで、遮へい装置と昇温器又は浴槽との間の離隔距離を規定しているのは、遮へい装置から大地又は浴槽に流出する漏れ電流を危険でない程度に制限するためで、この数値は、温泉水の固有抵抗値を1,000Ω/cm程度、給水管の直径を4cm程度であるとして定めたものである。
第六号では、昇温器に附属する給水ポンプは、事故の際には、昇温器の電極と同電位になることが考えられるので、原則として遮へい装置より昇温器側に設置し、簡易接触防護措置を施すこととしているが、その接地抵抗値を10Ω以下とするときは、危険度も軽減されるので、これを緩和している。
第七号では、遮へい装置と昇温器との間及び遮へい装置の外側1.5mまでの水管には絶縁性の管(一般に硬質ビニル管が使用される。)を使用することとしている。これは第五号の規定と関連するもので、導電性のある金属管を用いたのでは意味がないからである。また、この間に水せん等(一般に金属製と考えられる。)を施設しないこととしているのは、その水せん等に危険な電位が現れることが考えられるからである。
第八号では、遮へい装置の電極に施す接地工事について規定しているが、この電極には危険な電位が現れている場合が多いのでA種接地工事によることとし、接地線に現れる電位により他に障害を及ぼすことのないように接地極の共用を禁じている。ただし、水道管路を接地極として使用する場合には、十分に低い接地抵抗値(3Ω以下)を得ることができるので、その共用を認めている(→第18条)。
第九号では、昇温器及び遮へい装置の外箱について規定しているが、一般には硬質ビニル又は硬質ポリエチレンが使用される。これらの外箱には、金属製のものは外箱に高電位が現れて危険であるため使用できない。また、絶縁性のものでも、その中を通る温泉水の温度により軟化又は破損するものであってはならない。