
Iw は1.25倍、Ib は3倍と2.5倍の小さいほう。幹線の太さと遮断器
この記事でわかること
- Iw は負荷の定格電流の合計以上。電動機等が他の負荷より大きいときだけ、50A以下なら1.25倍、50A超なら1.1倍
- 解説の IL は、試験の IH(電熱器)と同じ。電動機があるだけで、いつも1.25倍にはしない
- Ib は原則 Iw 以下。電動機等があるときは 3ΣIM+ΣIL と 2.5Iw の小さいほう。この記事の例は Iw 60A、Ib 130A
こんな人におすすめ
- 第二種の筆記で、幹線の Iw と Ib の組合せを確認したい
- 電技解釈第148条を開く前に、1.25倍と 3倍・2.5倍だけ見たい
- 低圧幹線の太さと遮断器を、負荷の内訳から確認したい
はじめに
低圧の幹線では、電線の太さを許容電流 Iw で決め、その電線を守る過電流遮断器の定格 Ib を決めます。根拠は電技解釈第148条です。
第1項第二号は、電線の許容電流を、その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計以上とします。
ただし、電動機等の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きいときは、他の負荷の合計に、電動機等の合計の 1.25倍(50A以下)または 1.1倍(50A超)を加えた値以上です。解説の記号は IL、筆記試験では電熱器を IH と書くことが多く、指しているものは同じです。
幹線を保護する過電流遮断器の定格電流は、原則としてその幹線の許容電流以下です。電動機等が接続されるときは、第1項第五号で 3ΣIM+ΣIL と 2.5Iw の小さいほう以下とできます。
第二種電気工事士の筆記では、同じ負荷で Iw と Ib の組合せが出ます。この記事の例は、電動機等 40A・他の負荷 10A で Iw 60A、Ib 130A です。
この記事では、電技解釈第148条のうち、第1項第二号の許容電流 Iw と、第1項第五号の過電流遮断器の定格 Ib を扱います。第148条を開く前でも、配線の施工で幹線の太さと遮断器を確認するときでも、条件だけ先に見られます。
幹線の許容電流 Iw
想定シーン: 低圧幹線の電線の太さを、接続する負荷の定格電流から決める
起点は幹線に接続する負荷の内訳です。電技解釈第148条第1項第二号は、電線の許容電流を、低圧幹線の各部分ごとに、その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計値以上とします。
電技解釈の解説では、原則として需要率を 1 とした場合において、負荷電流が電線の許容電流を超えないようにする、としています。
ただし、当該低圧幹線に接続する負荷のうち、電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具(この条では「電動機等」)の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きい場合は、他の電気使用機械器具の定格電流の合計に次の値を加えた値以上です。
| 条件 | Iw の下限 |
|---|---|
| 電動機等の合計 ≦ 他の負荷の合計 | ΣIM + ΣIL |
| 電動機等の合計のほうが大きく、その合計が 50A 以下 | 1.25 × ΣIM + ΣIL |
| 電動機等の合計のほうが大きく、その合計が 50A 超 | 1.1 × ΣIM + ΣIL |
| 求めるもの | 値 |
|---|---|
| 電線の許容電流 Iw | 60A 以上 |
| 過電流遮断器の定格 Ib | 130A 以下 |
※解説の数式では、IW が電線の許容電流、IM がその幹線に接続される電動機等の定格電流、IL が電動機等以外の電気使用機械器具の定格電流です。筆記試験では電熱器を IH と書くことが多く、指しているものは同じです。1.25 と 1.1 は、ΣIM が ΣIL より大きいときだけ使います。
計算してみよう
想定シーン: 三相誘導電動機(定格電流 20A)が 2台と、他の電気使用機械器具(定格電流の合計 10A)を供給する低圧幹線がある。電線の許容電流 Iw の最小値と、過電流遮断器の定格を決める根拠となる電流 Ib はいくらでしょうか?
この計算で使う記号
- ΣIM
- 電動機等の定格電流の合計。この問題では 20A が 2台なので 40A です。
- ΣIL
- 電動機等以外の電気使用機械器具の定格電流の合計。この問題では 10A です。試験では IH(電熱器)と書くことが多いです。
まず、電動機等と他の負荷の合計を分ける
電動機等の定格電流の合計 ΣIM は、20A が 2台なので 40A です。他の電気使用機械器具の定格電流の合計 ΣIL は 10A です。
第1項第二号の本文は、電気使用機械器具の定格電流の合計以上です。ただし書は、電動機等の合計が他の負荷の合計より大きいときに使います。
どちらが大きいかで式を選ぶ
この問題の ΣIM は 40A、ΣIL は 10A なので、電動機等のほうが大きいです。ただし書を使います。電動機等の合計 40A は 50A 以下なので、掛ける値は 1.25 です。50A を超えるときの 1.1 ではありません。
必要な許容電流の最小値を計算する
他の負荷の合計に、電動機等の合計の 1.25 倍を加えます。
必要な許容電流の最小 = 1.25 × ΣIM + ΣIL
1.25 × 40 + 10 = 60A
この幹線の電線の許容電流は 60A 以上必要です。
電動機等があるとき、Ib は小さいほうを取る
第1項第五号ただし書は、低圧幹線に電動機等が接続されるときの定格電流です。3 × ΣIM + ΣIL と、2.5 × Iw を比べ、小さいほう以下とします。
3 × ΣIM + ΣIL = 3 × 40 + 10 = 130A
2.5 × Iw = 2.5 × 60 = 150A
小さいほうは 130A
この幹線を保護する過電流遮断器の定格は 130A 以下です。150A は 2.5倍だけ見たときの値です。
| 負荷の内訳 | Iw の最小 | Ib の根拠 |
|---|---|---|
| 電動機等 20A、他の負荷 30A | 50A(本文) | 90A(3倍。2.5倍は 125A) |
| 電動機等 40A、他の負荷 10A | 60A(1.25倍) | 130A(3倍。2.5倍は 150A) |
| 電動機等 60A、他の負荷 10A | 76A(1.1倍) | 190A(3倍も 2.5倍も 190A) |
※色の列が Ib の根拠です。この問題は 40A と 10A なので、Iw は 1.25倍の 60A、Ib は 130A です。電動機等 20A で他の負荷 30A なら、Iw は本文の 50A でも、電動機等があるので Ib は 3倍の 90A です。
よくある勘違い
次の4つは筆記試験でも現場施工でもよく間違えてしまう注意ポイントです。
電動機があるだけで、1.25倍しない
1.25倍または 1.1倍を使うのは、電動機等の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きいときです。
電動機 20A、他の負荷 30A なら、電動機等のほうが小さいので、Iw は 50A 以上です。1.25 × 20 + 30 = 55A ではありません。
50A の境を、他の負荷と混ぜない
1.25 と 1.1 の境は、電動機等の定格電流の合計です。他の負荷を足した値ではありません。
電動機等 40A、他の負荷 20A なら、合計は 60A でも、掛ける値は 1.25 のままです。50A を超える 1.1 は、電動機等の合計が 50A を超えるときです。
2.5倍のほうを、すぐ選ばない
電動機等が接続されるときの Ib は、3 × ΣIM + ΣIL と 2.5 × Iw の小さいほう以下です。
電動機等 40A、他の負荷 10A なら 130A と 150A なので、根拠となる電流は 130A です。150A は 2.5倍だけ見たときの値です。
149条の 55%・35% を、幹線の太さに使わない
第148条第1項第四号の 55% と 35% は、分岐した幹線に過電流遮断器を省略できるかの条件です。電線の許容電流 Iw を負荷から求める第二号とは別です。
分岐回路で、分岐点から過電流遮断器までの距離を決める 55%・35% は、電技解釈第149条第1項第一号です。幹線の太さの問いに、3m や 8m を選ばないでください。
過電流遮断器の定格 Ib は第1項第五号
想定シーン: 同じ低圧幹線を、過電流遮断器の定格電流で守る
幹線を保護する過電流遮断器の定格電流は、電技解釈第148条第1項第五号です。原則は、その定格電流が当該低圧幹線の許容電流以下であることです。
解説では、絶縁電線を管等に収めている場合は第146条第2項の電流減少係数を乗じた値、としています。
低圧幹線に電動機等が接続される場合は、電動機等の定格電流の合計の 3倍に他の電気使用機械器具の定格電流の合計を加えた値以下とできます。その値が当該低圧幹線の許容電流を 2.5倍した値を超える場合は、その許容電流を 2.5倍した値以下です。
| 条件 | Ib の上限 |
|---|---|
| 電動機等が接続されない | Iw 以下 |
| 電動機等が接続され、3ΣIM+ΣIL ≦ 2.5Iw | 3ΣIM + ΣIL 以下 |
| 電動機等が接続され、3ΣIM+ΣIL が 2.5Iw を超える | 2.5Iw 以下 |
※さきほどの例は 130A と 150A なので、3倍のほうが小さい 130A です。解説では、この 2.5倍の許容電流は、管内に収めていても第146条第2項の電流減少係数を乗じなくてもよい、としています。
| 内容 | 該当条 | 筆記試験内容 |
|---|---|---|
| 幹線の電線の許容電流 Iw | 第148条第1項第二号 | 1.25倍・1.1倍 |
| 幹線を保護する過電流遮断器の定格 Ib | 第148条第1項第五号 | 3倍と 2.5倍の小さいほう |
| 分岐点から過電流遮断器までの距離 | 第149条第1項第一号 | 3m 以下・8m 以下・制限なし |
よくある質問
Q幹線の許容電流は、負荷の合計そのものでよいか?
電技解釈第148条第1項第二号では、原則は電気使用機械器具の定格電流の合計以上です。電動機等の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きいときは、他の負荷の合計に、電動機等の合計の1.25倍(50A以下)または1.1倍(50A超)を加えた値以上です。
Q電動機があるときは、いつも1.25倍するか?
しません。1.25倍または1.1倍を使うのは、電動機等の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きいときです。電動機等のほうが小さければ、合計そのものです。1.25倍は、電動機等の合計が50A以下のときです。50Aを超えると1.1倍です。
Q解説の IL と試験の IH は同じか?
同じです。電技解釈の解説は、電動機等以外の電気使用機械器具の定格電流を IL と書きます。筆記試験では電熱器を IH と書くことが多く、指しているものは電動機等以外の負荷です。
Q電動機 20A が2台、他の負荷 10A のとき、Iw と Ib は?
電動機等の合計は 40A、他の負荷は 10A なので、電動機等のほうが大きいです。40A は 50A 以下なので、Iw の最小は 1.25 × 40 + 10 = 60A です。電動機等が接続されるので、Ib は 3 × 40 + 10 = 130A と 2.5 × 60 = 150A の小さいほう、130A 以下です。
Q過電流遮断器の定格 Ib は、Iw 以下か?
原則は、当該低圧幹線の許容電流以下です。電動機等が接続されるときは、電動機等の定格電流の合計の3倍に他の負荷の合計を加えた値以下、かつ許容電流の2.5倍以下、とできます。管内に収めたときの2.5倍は、146-4表を乗じる前の許容電流で見ます。
Q2.5倍の 150A を選んではいけないのはなぜか?
電動機等が接続されるときの Ib は、3ΣIM+ΣIL と 2.5Iw のうち小さいほう以下です。電動機等 40A・他の負荷 10A なら 130A と 150A なので、根拠となる電流は 130A です。150A は 2.5倍だけ見たときの値です。
おわりに
幹線の許容電流 Iw と、過電流遮断器の定格 Ib の求め方、いかがでしたか。
原則は、電気使用機械器具の定格電流の合計以上です。電動機等の定格電流の合計が他の負荷より大きいときは、50A 以下なら 1.25倍、50A を超えるなら 1.1倍を加えて求めます。電動機があるだけで、いつも 1.25倍にはしません。
電動機等が接続されるときの Ib は、3ΣIM+ΣIL と 2.5Iw の小さいほう以下です。この記事の例は、Iw 60A、Ib 130A です。
まずは、問題文の電動機等と他の負荷を分けて、どちらが大きいかから計算すると理解が深まります。
NeuroQuest では、第二種電気工事士の記事と過去問を、電技解釈を根拠にしてお届けします。

