無人航空機の飛行の安全に関する教則
4.3.3(飛行性能の基本的な計算)
〔一等〕
〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行を行うにあたっては、無人航空機の飛行性能に関わる以下のような基本的な計算(機体重量、揚力、推力、空気密度、飛行速度、高度、回転翼の回転角速度の関係等)について理解しておく必要がある。
(1) 飛行機の揚力・回転翼航空機の推力
飛行機の水平定常飛行においては、機体重量𝑊 、揚力𝐿 、空気密度𝜌、飛行速度𝑉 の間に以下の関係がある。
プロペラなどの回転翼の推力𝑇 は、空気密度𝜌、回転角速度𝜔の間に以下の関係がある。
回転翼航空機(ヘリコプター)及び回転翼航空機(マルチローター)のホバリング時には、機体重量𝑊と推力𝑇 の間に以下の関係がある。
また、回転翼の消費パワー(仕事率)𝑃 は、空気密度𝜌、回転角速度𝜔、推力𝑇 の間に以下の関係がある。
大気には標準大気が定められており、空気密度は高度に対して以下の表のように変化する。高度が1000m 増加すると、空気密度は約0.9 倍になる。
例えば、高度3000mでの空気密度は高度0m と比べると、0.74 倍になる。そのため、飛行機が同じ飛行速度で飛行するならば揚力は0.74 倍になる。そこで√1/0.74 ≒1.16 倍の飛行速度が必要である。回転翼航空機の場合も、同じ回転角速度で発生するプロペラの推力は0.74 倍になり、同じ機体重量の回転翼航空機を飛行させるためには√1/0.74 ≒1.16 倍のプロペラの回転角速度が必要であり、そのために必要な消費パワーは0.74×(√(1/0.74))³ ≒1.16 倍になる。
ペイロードが搭載されるなどして飛行機の機体重量が2 倍になると、2 倍の揚力が必要となり、高度などの他の条件が同じであれば、√2 ≒1.4 倍の機体速度が必要である。回転翼航空機の場合、機体重量が2 倍になると、2 倍の推力が必要となり、高度などの条件が同じであれば、√2 ≒1.4 倍のプロペラ回転角速度が必要で、消費パワーは(√2)³ ≒2.8倍になる。
飛行機において、機体重量が2倍になると、揚力が2倍必要になり、同じ迎角で飛行するためには√2 ≒1.4 倍の飛行速度が必要になる。飛行中に速度を落としていくと、揚力を得るためには迎角を大きくしなければならない。しかし、迎角が大きくなりすぎると失速する。すなわち、飛行機には最低飛行速度(失速速度)が存在する。飛行速度の増加が必要ということは最低速度もそれに比例して増加することを意味する。すなわち、飛行機の機体重量が2 倍になると、最低速度は1.4 倍となる。
(2) 飛行機の旋回半径
飛行機がバンク角(ロール角)𝜙の定常旋回飛行を行うためには、力のつり合いから、水平定常飛行と比べて1/cos ϕ 倍の揚力が必要であり、飛行速度𝑉 、旋回半径𝑟 、重力加速度𝑔 の間に以下の関係がある。
例えば、飛行速度10m/s、バンク角20°の場合の旋回半径𝑟 は、重力加速度𝑔≒9.8m/𝑠2、tan 20° ≒0.36であるので、以下のように求められる。
また、cos 20° ≒0.94であるので、1.06 倍の揚力が必要である。
(3) 飛行機の滑空距離
飛行機の滑空時に飛行経路が水平面となす角を滑空角(降下角)とよぶ。無推力の定常滑空飛行状態での滑空角𝛾は、揚力𝐿 、抗力𝐷 によって以下のように求められる。
よって、ある高度ℎ からの滑空距離𝑑 は以下のように求められる。
ここで、𝐿/𝐷 は揚抗比である。
例えば、揚抗比15 の無推力の定常滑空飛行状態であれば、滑空角𝛾 は
となり、高度ℎ= 100mからの滑空距離𝑑 は、
となる。
(4) 水平到達距離(水平投射の場合)
高度ℎを飛行する飛行速度𝑣の無人航空機が、揚力を失い落下を始める場合を考える。無人航空機を質点とみなせるものとし、空気抵抗は無視できると仮定すると、落下開始地点から地上に墜落するまでの水平距離𝑥は、
で求めることができる。但し、𝑔は重力加速度である。